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「お客様を幸せにする 行動経済学のアプローチ」を読んで

年末年始の休みにこの1冊を読みました。

600ページという「国語辞典か?」ってくらいの分厚さです。

著者の松木一永氏は実務家で、行動経済学をビジネス課題に応用するコンサルタントです。

「行動経済学は死んだ」→再現性問題
「顧客を私利私欲で導こうとする」→スラッジ

行動経済学の注目が集まる中でこれらの批判も広がっています。

本書ではこれらの批判に対して、反論ではなくなぜ起きるのかに向き合った上で、「顧客幸福(カスタマーウェルビーイング)」を達成するために行動経済学が役に立つことを議論し、ビジネスへの応用に対する考えを説いています。

どんな行動経済学的効果や現象も、受け手側にその違いが知覚され、選択することや行動を起こすことが魅力的であるなどの条件が揃わなければ、効果が現れる可能性は低くなります。

「お客様を幸せにする 行動経済学のアプローチ」より

そのために本書では、まず幸福の定義について考え、ビジネスで顧客幸福を追求することの難しさを論じます。それは、幸せの感じ方はまさに十人十色であるからです。

主観的な幸福の定義には大きく分けて「短期」と「長期」の2つに分かれます。

短期の幸福は「ヘドニア、快楽」と呼ばれ、一定の快楽に適応すると満たされるためにはより上の快楽を求めらるようになります(快楽トレッドミルといいます)。長期の幸福は、幸福感情が長く続く過去に起きたこと、思い出を振り返った上での認知的な感情です。

客観的な幸福の定義としては、「ユーダイモニア」という考え方があります。これは、「最も素晴らしい人生とは自身の可能性を最大限に発揮し、内的な美徳に沿って生きること」とされています。

一般的にお金はあったほうが人は幸せだと感じます。でも、一定以上の資産があれば、どれだけお金を増やしても幸せの度合いは上昇しなくなります。また、お金の使い方も快楽的な消費と、ボランティアへの寄付のようなお金の使い方とでは感じる幸福感は異なります。

本書では、他にも行動経済学とウェルビーイングを軸としてマーケティングで論じられる消費活動(NPSなど)、ストーリーテリングや感覚マーケティングなどとの関連付けされた内容となっています。

参考文献も豊富で本の分厚さだけでなく濃い中身となっています。行動経済学をこれから学ぶ人向けではなく、ある程度の知識を持った上で実務への応用を考えたいという人に向いた本だと思います。

かなり広範囲をカバーしていますので、参考文献で掘り下げたり、見返す価値のある本だと思いました。

最後までお読みいただきありがとうございます。








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