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日本の地方文化を守り、活用するために必要なマーケティングマインドについて

日本の地方には、長年受け継がれてきた祭りや年中行事が多数存在します。これらは単なる観光資源にとどまらず、地域の誇りやアイデンティティを象徴する重要な文化財です。しかし、少子高齢化の影響で担い手不足が深刻化し、存続の危機に瀕している現状があります。

潜在的価値の発掘と発信

これらの地方文化には、観光資源としての潜在的価値が非常に大きいです。地域固有の文化や伝統行事は、訪日観光客にとって非常に魅力的なコンテンツです。例えば、長野県では「和合の念仏踊り」や「清内路の手作り花火」など、独自の文化財が観光誘客に寄与しています。

先日、テレビ番組「千鳥の相席食堂」で紹介されていた徳島県牟岐町の奇祭「姫神祭」が印象的でした。非常にユニークで地域外の人には驚きを与えてしまいますが、日本全国には他にも多くの興味深いお祭りが存在するのだと再認識しました。

マーケティングの視点からは、これらの文化資源を効果的に発信するためのストーリーテリングが重要です。訪日観光客が興味を持ち、実際に訪れたくなるような魅力的なストーリーを創り上げることが重要です。地域の歴史や伝統、背後にある人々の思いを織り交ぜたコンテンツを作成し、SNSや観光ポータルサイトを活用して発信することで、地域の魅力を広く伝えることができます。

地元企業との連携と地域コミュニティの強化

長野県の事例に見られるように、地元企業と自治体、住民が連携することは、地域文化の保存と発展に非常に有効です。企業が地域の祭りや行事に従業員を参加させたり、ボランティアを派遣することで、担い手不足を補うことができます。また、企業が地域文化を紹介する動画を制作したり、学ぶ場を提供することで、地域内外への発信力を強化することも可能です。

関東地域での取り組み

千葉県香取市の「佐原の大祭」は、毎年7月と10月に開催される国の重要無形民俗文化財で、地域全体が観光地として賑わいます。市の人口が減少する中で、祭りを「見せる祭り」として外部からの観光客を呼び込み、地域の誇りを醸成する取り組みが進められています。

茨城県日立市の「日立さくらまつり」でも、国の重要無形民俗文化財「日立風流物」が新型コロナウイルス禍を経て5年ぶりに披露され、多くの観光客を魅了しました。茨城県は無形民俗文化財を含む祭りに最大500万円の補助を行い、地域振興に寄与しています。

埼玉県の「埼玉回遊」プロジェクトでは、県内の文化や伝統産業の担い手たちのインタビュー映像を記録し、YouTubeで公開しています。これにより、新たなファンとの接点が生まれ、地元文化への誇りが高まる成果が得られています。

インバウンド需要への対応

インバウンド需要に対応するためには、外国人観光客が参加しやすい環境づくりが必要です。昨年、徳島の阿波踊りに1人20万円のプレミアム桟敷席を設けたことが話題になりました。後々、建築基準法などいろんな物議を醸したようですが、訪日客をターゲットにした試みとしては成功だったようです。阿波踊りほどメジャーな祭りでなくても、しっかりと戦略性を持ってコミュニケーションを図り観光客が直接体験できるプログラムを用意することで、より深い理解と感動を提供することができるでしょう。

ただし、地域の人たちが主役であることは忘れてはいけません。日本人がその伝統を理解し、愛していなければ、外部の人々も価値を認めてくれないでしょう。地域の人たちを軽視すると、伝統の美徳を失うことになりかねません。

まとめ

日本の地方の芸能や祭りには、まだまだ潜在的価値が眠っています。これらを守り、活用するためには、地域のストーリーを積極的に発信し、インバウンド需要に対応するための戦略を構築することが重要です。地域の誇りを次世代に引き継ぎながら、観光資源としての魅力を最大限に引き出す取り組みを進めていくことが求められます。

参考記事:


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