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METALLICAとは何なのか:全アルバムをレビューして思ったこと

23タイトル、23日間にわたってレビューしてきたメタリカ全アルバムレビューが終わりました。総括として思ったことは「Metallicaって、メタルのショーケースみたいなバンドだな」ということ。実のところ、大物とされるバンドは時代時代でトレンドを取り入れていて、不変の代名詞のようなAC/DCMotörheadだってアルバムごとにその時代に合わせた音像を持っています。ただ、Metallicaはかなりその変化の度合いが大きい。バンドタイプで言えばThe BeatlesQueenのような「アルバムごとにガラッと音像が変わる」タイプのバンドです。

あと、メンバーに多様性がある。そもそも、ラーズはデンマーク人で高校までデンマークに住んでいたから欧州、北欧メタルの影響を受けているし、ジェイムスはカントリーも愛するバリバリのアメリカンだし、カークはフィリピン人とのハーフだからアジア的なセンスも持っているし、ベースは3人変わっているが、クリフはクラシックにも造詣が深く、ジェイソンはパワーメタル好きで、トゥルージロはメタルからファンクまで弾けるメキシコ系だし。音楽的趣味嗜好だけでなく、人種的なルーツ、つまりそれぞれが所属するコミュニティや文化背景も多様性があります。だから、そもそも引き出しが多く、いろいろなものが混ざり合っているから器が大きい。さまざまな音楽性をミックスさせながら付け焼刃感がなく、それぞれのルーツに根差したしっかりした背景を感じさせるのはメンバー構成の特長もあるでしょう。

多様性を感じさせる現メンバー

ただ、Metallicaってメタル好きの中では「演奏力はいまいち(特にラーズのドラムとカークのギター)」と揶揄されることがあります。これは、今のメタルのトレンドってある時期から「ブラックメタル」と「プログレッシブメタル」なんですよね(※1)。演奏力至上主義みたいな風潮が一部にあり、そうしたバンド群に比べると演奏力も暴虐性も確かに劣る部分はある(※2)。なので「メタル音楽のショーケース」たるメタリカもそうした極端なジャンルは表現できない。ただ、Metallicaの魅力の根本は、「アルバムごとに音楽性を変えつつ、真摯に音楽と向かい合う姿がある」ことなんじゃないかと思いました。毎回、冒険しているんですよね。音像としては時々のメタル音楽、いや、ロック音楽のトレンドを取り入れながら「ロックバンド」というフォーマットの可能性を追求している。だから、どのアルバムも意味を持っていて、「Metallicaという物語」の一部になっている。「メタルバンド」という文脈を超え、「ロックの可能性を拡張しているバンド」という視点で見るべきなのだろうと思います。

以前、ロック史を紐解いてみたことがありますが(※3)、メタルという音楽は「ロックの最新系」なんです。80年代ぐらいからHR/HMがロックの最先端となり、あとはメタルの中でさまざまな進化や変化が起きている(全体としてはロックからヒップホップにメインストリームや若者音楽の中心が移りつつありますが)。だから、「メタルの王者」たるMetallicaは「現代のロックの王者」でもあります。

そして「次にどんなアルバムを出してくるのか予想できない」という点が徹底しています。毎回(良くも悪くも)「期待を裏切ってくる」部分がある。その物語がメタルという限られたコミュニティを超えて、広く一般の音楽ファンにまで共感を得ているのでしょう。

ざっとアルバムごとに特長を書いていきましょう。各アルバムの詳細はレビューで書いたので、私が感じた「メタリカという物語」の中での各アルバムの役割を書いていこうと思います。ベーシストが3人(クリフバートンジェイソンニューステッドロバートトゥルージロ)いて、それぞれベーシストが変わるタイミングでバンドも大きく変化しているので、3章構成として見ていきます。

最初期、クリフバートン、ラーズウルリッヒ、ジェイムスヘットフィールド、デイブムステイン

第1章:クリフ・バートン時代 憧憬と確立

1st:「Kill Em’ All」(1983)★★★★
パンク・ハードコアサウンドと欧州メタルの融合。メタルマニアたるメタリカの憧憬が感じられる作品。

勢い重視、パンク、ハードコア的な音像に欧州メタルが組み合わされた音像、MotorheadIron Maidenの1stに近い、メタルからもパンクスからも愛される音作り。旅立ちの章。若さゆえの疾走感があるけれど、改めて聴くとカークのソロは音の粒がかなりそろっていたり、リズムもけっこうタイトだったりします。さすがカークはジョー・サトリアーニの弟子。プロダクション的には粗削りな部分も多いが、演奏は洗練されている部分が同居していて、「アルバムを出せた!」という喜びを爆発させている無邪気さもありつつ、最初からかなりプロフェッショナルなバンドだったことを感じます。その後のメタリカが追求していく様々な要素の原型がかなり提示されたアルバム。

余談ですが、”『13日の金曜日』シリーズで真っ先にジェイソンに殺されそうな奴等だな”という感想を増田勇一氏に持たれたアー写がこちら。分かる。

裏ジャケット、みんな若くてモブキャラ感がある


2nd:「Ride The Lightning」(1984)★★★★☆
80年代HM黄金期に輝く名盤、ヨーロピアンメタルの様式美とUSパワーメタルの融合。1stから飛躍的な成長を見せた2nd。

1stからかなり進化しています。80年代メタル、正統派メタル的なやや華やかな音作りもあり、きちんと構築された正統派メタルといった趣。ただ、歌メロは独特。欧州メタルの抒情性とUSメタルの勢い、カラッとした感じが混ざり合っている。急に成長した親戚の子供のよう。まだ多少粗削りな部分もありつつ、80年代メタル最盛期に燦然と輝く名盤。ようやく「やりたいことをどうやればいいか」が分かり始めた段階。

(ちなみにこのジャケットのジグゾーパズルがあるんですが、難易度高すぎませんかね。上部はほとんど青一色じゃないですか。こんなのパズルにしたら手掛かり少なすぎるでしょ…)

裏ジャケット、ビジュアルも少し成長


EP:「Garage Days Revisided’84」(1984)★★★☆
Diamond Headが好きなんだぜ!

デイブムステイン在籍時の写真を使ったジャケット

カバー曲集、メタルファン、メタルマニアとしての一面が顔をのぞかせます。「好きなものは好き」と公言し、自分のルーツを開示することに積極的な姿勢はメタリカの特長。「これ、かっこいいだろ?」とほくそ笑むメンバーの姿が浮かびます。また、カバー曲を演奏することで逆説的に「Metallicaらしさ」も浮かび上がってくる。独自のグルーブ感というか、バンドの各楽器が絡み合う印象を受けます。


3rd:「Master Of Puppets」(1986)★★★★★
「Metallicaの音楽」を確立した1枚、スラッシュメタルという枠内にとどまらず、この時代の「ロックの進化の可能性」を提示した名盤。

最高傑作と呼ぶ人も多いアルバム、一つのピークに達しています。クリフ・バートン時代に築き上げたサウンドの一つの到達点。なんというか、各楽器隊が別のリズムを奏でて、それらが絡み合ってポリリズム的な酩酊感を生む音像。「自分たちにしか出せない音」に最初にたどり着いた境地。今聴いても新鮮だし、一つの発明。

ただ、ここでクリフ・バートンが物語から退場してしまいます。このままだったらどうなっていたのだろう。もしかしたら、ここで一つの完成像が見えてしまったがゆえに、あと数枚はピークが続いたとしても「メタルシーンの大物」止まりで、今のメタリカのような「ロックシーンを代表するバンド」までは巨大化しなかったかもしれません。

中ジャケット、メンバー写真もこなれてきました




第2章 ジェイソン・ニューステッドとボブ・ロック時代 探索と破壊

EP:「The $5.98 E.P. - Garage Days Re-Revisited」(1987)★★★☆
1から出直しだ。

ジャケット、左端のジェイソンはまだ表情硬め

クリフが去り、ジェイソン・ニューステッドが入ってくる、これによって一度は完成したバンドサウンドが大きく変化していく、これは加入時のジャムセッションで、新しいバンドサウンドの意識合わせ、焦点合わせといった意味合いが強いアルバム。やはり原点として重要なのはDiamond Headのようでここでも1曲目。手探りで始まる第2章の幕開けです。


4th:「...And Justice For All」(1988)★★★★☆
一度完成の域に達した「Metallicaサウンド」を解体し、要素分解して再構築。各要素の完成度は上がり、精緻に組み上げられた芸術作品に。

ここから「問題作」が続いて行きます。1st~2nd~3rdも音像は変化していったものの、概ね前作のファンも納得する方向への進化でしたが、今作からは変化が大きくなっていく、リスクを取って変化していきます。

クリフ不在によってベースがぽっかり穴が空いた印象。ジェイソン・ニューステッドもプレイはしていますが、存在感がアルバム前半はほとんどありません。ラーズのドラムとジェイムスの歌・リフが全体を引っ張り、カークのソロがアクセントで入る、といった印象、各パーツが分解され、整理され、もう一度メタリカサウンドが再構築されます。今までは様々な要素をおそらく自分たちでも自然に組み合わせて音楽ができていた、バンドのケミストリーで新しいものが生まれていたのが、ここで一度分解してきちんと作り直した印象を受けます。

一番の変化は、ジェイムスの歌が上手くなり、歌メロにフックが増したこと。リフだけに頼らず、「歌メロ」の比重も増えています。また、カークのソロもけっこうメロディアスでかなり構築された、作曲された感じの曲も増えました。そしてラーズのドラム、くっきりと浮き出るような、言い方を変えれば耳につくような独自のサウンドになります。楽曲的には1stの頃に戻った印象、各メンバーがさまざまな要素を持ちより、ミックスして出している印象です。もちろん、1stに比べるとその組み合わせ方がかなり精緻になっているのですが、2nd、3rdではそれらの要素がまじりあい、一体化していく感じがあったので、それに比べるとまた「各要素がはっきりとばらけて聞こえる」感じに戻った印象。これで80年代が終わり、メタルにとっても冬の時代が訪れます。

裏ジャケット、音に呼応するように集合写真ではなく各メンバー個別写真


EP:「B-Sides & One-Offs '88-'91」(1988-1991)ーーーーー
メタル・ジャスティス~ブラック・アルバムの架け橋

正式なアルバムではなく、後にGarage Inc.の2枚目にこのタイトルでまとめられた企画盤。メタルジャスティスとブラックアルバムの間にリリースされたEPのB面や企画盤に提供された曲を集めたもので、Queenハードコアバンドのカバーが含まれます。メタル以外の比重、欧州メタル的な湿り気のない音、メタルの音像に限らないより普遍的な「刺激的なバンドサウンド」を模索している印象も受けます。だんだんとジェイソン・ニューステッドのベースも前面に出てきます。

当時のアーティスト写真、ジェイソンが少し馴染んできた


5th:「Metallica」(1991)★★★★☆
「新しいMetallicaサウンド」の模索が、メタルの枠を超えて、メンバーも予想しないほど「ロックの王道」として世の中に受け入られた作品。

初のセルフタイトルを冠した「Metallica」。黒一色に見えるジャケットから通称「ブラックアルバム」と呼ばれます。洗練された音像、90年代メタルだけでなくロックシーンを代表するアルバムの一つ。当時はかなり音像が変化したような扱いも受けましたが、改めて今聴くと最初にミドルテンポの曲が固まっているだけで疾走曲もあるし、1st~4thとけっこう連続性があるアルバムで、次作ほど極端な変化はありません。手探りでサウンドを再構築した前作(メタル・ジャスティス)がグラミー賞をとるなど商業的成功も収め、自信を取り戻して自分たちのカッコいいと思える音を追求した1枚。

今、これだけの商業的成功を収めた後で聴くと「ここでMetallicaは変わった」と思えるかもしれませんが、実は音像的には連続している。ミドルテンポの曲は2nd、3rdからあったし、もともと持っていた要素の中で、この時のメンバー、この時代の気分にあった音像を追求していった結果、彼らは「Metallicaのニューアルバム」を出しただけ。実のところ、3rdから4thへの音の変化の方が極端であり、このアルバムは3rdに回帰した部分もあります。

当時のアーティストビジュアル、モノトーンで統一


Live : 「Live Shit: Binge & Purge」(1993)★★★★
ブラックアルバムまでのMetallicaを総括するベスト盤的ライブアルバム...のはずがマニア向けの巨大さとブートレグ的な音質で反抗心を誇示。

初のLive盤、ベスト的選曲でブラックアルバムリリース後、世界的大スターになっていったMetallicaの姿が収められています。ライブではジェイソン・ニューステッドの存在感もしっかりある。意図的に荒々しさ生々しさを前面に出した作品。コレクターズアイテムで通称「メタリ缶」と呼ばれた巨大なボックスセット。

バンドの内部では言えばブラックアルバムのツアーで数年にわたり世界中を回り、疲労しきっていた。それゆえに休息を必要とし、休息期間をつなぐ意味も込めてツアーの総括としてのリリースがなされたアルバム。比較的アレンジはスタジオ盤通りながらライブなので各音質が一定。ここにいたるまでもアルバムごとに音質、サウンドプロダクションの変化が激しいバンドなので、こうしてライブ盤でまとめて聴くと同音質で聴ける、、、はずなのですが、これ、曲ごとにけっこう音質や各楽器のミックスが違うんですよね、歓声も切れるし。メキシコでの数日間のライブを収めたものだそうで、たとえば数年にわたるツアーのハイライト的にいろいろなライブ会場からつなぎ合わせたのならともかく、同都市、数日間のライブならそれほどバラバラになるはずもないんですが。不思議なサウンドプロダクションのライブアルバム。海賊版感を出したかったんでしょうか。ブラックアルバムで「メインストリームにすり寄った」「ポップになった」みたいな批判もあったので、あえてアンダーグラウンドな音作りにこだわったのかもしれません。そういう「負けず嫌い」なところがメタリカ(特にラーズ)にはあります。

当時はVHS入りの巨大なボックスセットだった


EP : Motorheadache '95(1995)★★★
Motörheadを一つの指標にしてやっていくんだという意思表示?

Garage Inc.のディスク2は蔵出し音源の宝庫

こちらもGarage Inc.の2枚目から。Motörheadのカバー曲集、ブラックアルバム後のツアーで燃え尽きたメタリカが再度集結し、次のアルバム制作に入る。そのアルバムセッション中にレミーの50歳の誕生日パーティーのためのMotörheadカバー・セッションが行われました。

Motörheadというのはもともとメタルとパンクを融合したようなところがあり、そもそもサイケでもある。レミーはジミヘンのローディーからキャリアをスタートし、サイケ・スペースロックバンドのHawkwindでデビューし、ビートルズの大ファンです。ハードロックの誕生シーンに立ち会った人であり、メタルシーンの前から活動をしている。「Motörhead」はメタリカ結成当時から一つのコンセプト、テーマとしてありましたが、60年代、70年代のロックのルーツからつながる王道と、現代を生きるメタルバンド、ロックバンドとしての音像をどうするか。そうした指標としてMotörheadの存在を再確認した気もします。

あと、Motörheadって、少なくともレミーは自分たちをメタルバンドとは言わない。「We are Motorhead, We play Rock'n'Roll」と必ずライブで言っていた。「ロックンロールバンドだぜ」ということなんですね。ジャンルが細分化される前の、ルーツとしての60年代ロックから俺たちは生まれてきているんだ、という矜持。Motörheadは90年代後半のMetallicaの指標の一つだったような気がします。

レミーを囲むメタリカメンバー


6th : 「Load」(1996)★★★
ロックスターに生まれ変わり、「世界最大規模のロックバンド」としての立ち居振る舞いをしようとしたアルバム。

一番サウンド的には変化が激しかったアルバムの一つ。前作(ブラックアルバム)から5年の月日が流れたとはいえ、いわゆる「メタル」の音像を離れ、ハードロック、ロックバンドの音像に近づいていきます。「”Metal”lica」ではなく「”Rock”-tallica」への変化。彼らの存在感もメタルシーンを超えて「時代を代表するロックバンド」になる。次々と話題を提供し、時代の寵児となる。ゴシップセレブ、ハリウッドスターの仲間入り、メタル雑誌、メタルシーンだけでなく一般のメディアにもメタリカが登場する。

無我夢中に自分たちのサウンドを追い求めた1st~3rdまでと、クリフを喪い新しいサウンドを必死に模索した4th、5thを経て、気が付けば「世界で最大規模のロックバンド」になっていたメタリカは、そうした変化の渦中で、80年代のメタル以前のルーツ、より「ロックの根源」に近づいていこうとしたのでしょう。それはラーズにとってはMotorhead、レミーであり、ジェイムスにとってはカントリーだったのかもしれません。あと、カークの趣味というか、まぁこれはラーズや他のメンバーも好きなんでしょうけれどホラー風味も出てきます。MVとかではゴシック的なメイクを行うなどビジュアルがだいぶ変わりますが、一番ノリノリで変化していたのはラーズとカークで、コープスメイクまではいかないけれどちょっとホラー的なルックス。各自の嗜好、源流にもっとさかのぼったアルバム。ここでジェイソン・ニューステッドは根っからのメタルヘッドだったので、メタラーから見るとメタリカの中で「一番メタル」な感じがするので人気が上がっていった気がします。

バンドサウンドの中でもベースとドラムがかみ合ってきていますが、今度は急激なロックサウンドに拡張したものだからサウンド的にはチグハグでやや統一感のないアルバム。とはいえ、ゴシックメタルストーナーメタル色が強く出た曲もあり、広くこの時代のトレンドをとらえ、その後のメタルシーンにも影響を与えたアルバムでもあります。

ちょっとゴシックを取り入れたビジュアル、ジェイソンは引き気味


7th : 「Reload」(1997)★★★★
アメリカーナの影響を感じる新しい音像を開拓。ストーナー色がもっとも強いアルバム。90年代後半アメリカン・ロックの王道的快作。

前作と2枚組にする構想もあった、という作品。ガンズの「ユーズユアイリュージョン」を意識したのでしょうか。同時期に作られた曲で、確かに似た傾倒の曲が多いですが、こちらの方がサウンドがこなれている。アルバム1枚を経て、さまざまな評判も聴きながらサウンドを調整し「こういう曲調に似合うサウンド」を作り上げた印象。録音時の各楽器の音作りとかミキシングとかマスタリングとかそういったものを総合して音が良くなっています。

曲のクオリティとしては前作とそこまで変わらない気もしますが、こちらの方が全体の流れが自然で、アルバムとして聞くと心地よい。バンドサウンドの再生を感じます。クリフ死後の2枚、メタルジャスティスとブラックアルバムはそれぞれバンドサウンドとしてはけっこういびつで、ベースが聞こえないとか、ドラムが浮いて聞こえるとかいろいろありました。それが結果としてフックになり「新しい音楽体験」に繋がった部分もあると思いますが、3rdまでにあったバンドの一体感はなかった。それがLoadからやや再生し始め、今作ではすっかり「バンドサウンド」になっています。ラーズのドラムも聴きやすく、ジェイソンのベースと絡み合う。心地よいグルーヴ。個人的にはこのアルバムが一番ストーナーメタルへの接近を感じました。あとはサザンメタルというか、USのルーツミュージックへの接近。かなりカントリーサウンドのLow Man's Lyricなんか収録されていますし、これ、知らないで聴いたらMetallicaと分からない。いわゆる当時の「アメリカン・ロック」の王道感、煌めきと開放感があります。

改めて聴くといいアルバムですね。メタルではないけれど。

ちょっとカントリーなイメージもあるアーティスト写真


Cover : 「Garage Inc.」(1997)★★★☆
様々なタイプの音楽を演奏できるようになったMetallicaが、様々な曲をメタルサウンドに作り替えてみたアルバム。

カバーアルバムにして、メタルサウンドへの回帰となったアルバム。「Load」「Reload」で拡張した音楽性はそのままながら、自分たちのルーツとなったさまざまな曲をメタルサウンドでカバーしています。曲としてはカントリー、ヨーロピアンメタルからハードコアまで幅広いのですが、音にはエッジが戻っている。少なくとも「アメリカンロック」感は減退し、メタルサウンドになっています。前2作が「Metallicaの曲をさまざまなジャンルの音像で演奏したらどうなるか」の挑戦だとしたら、今作は「さまざまなジャンルの曲をメタルの音像で演奏したらどうなるか」のアンサーとも言える。「Rock-Tallica」から「Metallica」への回帰と呼べる音像の曲が多いです。Garege Daysシリーズなので初心に戻る、というところか。

ただ、過去のカバー曲集はどちらかといえばジャムセッション的な、ライブ感あふれるものが多かったですが今作はフルアルバムということでかなりカッチリとした録音がなされています。とはいえ「Load」「Reload」を通過したこともあってかバンドサウンドはタイトながら自然な感じで、メタルジャスティスやブラックアルバムに比べるとより自然体なサウンド。

この当時のMetallicaはさまざまな大物アーティストのトリビュートアルバムなんかにも参加してましたね。KinksRay Davisトリビュートアルバムとか、企画コンサートでBruce Springsteenのバックで演奏したり。「メタリカ」という固定の音像、ひいては「メタル音楽」だけではなくより広範な「ロック音楽」を説得力を持って奏でることができるだけのキャパシティをバンドが持ちえたということ。これは「Load」「Reload」によって得られたものでしょう。

余談ですが、1曲目のDISCHARGEのカバーなんか、改めて振り返ってみれば次作St.Angerにも通じるところもあったり。

コスプレで遊ぶメンバー、より普遍的な「ロックスター」に


Live : 「S&M」(1999)★★★★
後の「シンフォニック・メタル」に多大な影響を与えたと思われる、メタルとオーケストラがぶつかり合うゴジラVSキングコング的アルバム。

ロックとクラシックのコラボや映画音楽を多く手掛けてきた音楽家、マイケル・ケイメンの指揮するサンフランシスコオーケストラとの共演。オーケストラとぶつかり合うメタリカサウンド。火花が散るバトルが繰り広げられます。オーケストラはオーケストラでリフを足したりソロを弾いたりするものだから情報量がとにかく多い。オーケストラと見事にぶつかり合うメタリカの4人も見事。ここでバンドサウンドは完全な成熟と完成を迎えます。

振り返ってみると、ここでサウンドとしては行き詰ってしまっていたのかもしれません。完成されている。次の一手はこの完成したサウンドを壊さないと次に行けない気もします。全体として聞くと音程を埋めすぎて似たように聞こえるとか、お好み焼きをおかずにご飯を食べる的な主食+主食でおなか一杯になりすぎるところもありますが、いわゆる「シンフォニック・メタル」のレベルを確実に引き上げた1枚とも言える。これまでもロックとオーケストラの融合は繰り返されてきましたが、メタルとオーケストラをこのレベルで融合させたのはこれが初でした。「Battery」でオーケストラと共に疾走するとか、ある意味冗談か妄想のようなものを大真面目に実現。

1stで「鼻垂れメタル小僧」だったころの面影はなく、堂々過ぎる貫録を持った音楽家集団としてのメタリカがいます。

オーケストラとの共演の様子




第三章 ロバート・トゥルージロ時代 虚像と伝説

8th : 「St.Anger」(2003)★★★☆
ニューメタル、メタルコアに接近。殿堂からストリートへ回帰。ハードコアサウンドでジェイムスの歌い方も過去一番エモーショナルに。

Some Kind Of Monster」という映画があります。邦題は”真実のメタリカ”。当時のバンドの様子を描いたドキュメンタリーで、90年代を駆け抜けたメタリカ、ロックスターとしての虚像、巨大化するエゴ、ライフスタイルの限界、行き詰る人間関係、ジェイソン・ニューステッドは脱退し、ラーズとジェイムスの関係も悪化、解散寸前までメタリカが追い込まれる姿が赤裸々に描かれます。そのどん底から再起を図るアルバム。

ベーシスト不在のままで録音は進み、プロデューサーのボブ・ロックがベースを弾いています。前作でオーケストラとの共演で完成された、完成されすぎた音像を提示したメタリカ。それは70年代のプログレのようであり、ある意味完成されすぎて入り込む余地がなかった。ロック史では70年代後半に”複雑化するロック”に対するカウンターとしてUKパンクがルールをひっくり返して活性化したように、メタリカもロック史をなぞるかのような音像の変化を遂げます。ぶち壊し、初期衝動を取り戻す。

サウンド的には2000年代に出てきたSlipknotなどの影響を受けたのかニューメタル、メタルコアにかなり接近した音作り。このカンカンとしたスネアの音はたぶんSlipknotのパーカッシブな音作りに触発されたと思うんですよね。かなり荒々しい音像になり、「Garage Inc.」で見せたDISCHARGEカバーのようなハードコア的な荒々しさ。とはいえ歌メロはしっかりとフックがありメロディだけ聞けばメロコア的な一面も。音像はニューメタルハードコアの中間、ということで一番メタルコアに近い音像。メタリカのアルバムはどれも商業的に大成功をおさめているので、それぞれ後続のバンドや同時代のメタルシーンの潮流に大きな影響を与えています。振り返るとニューメタルやメタルコアの隆盛に一役買ったアルバムだったのかも。

ストリート感満載のアーティスト写真


EP : 「Some Kind Of Monster」(2004)★★★★
ロバート・トゥルージロとの相性は抜群。

ロバート・トゥルージロ加入後のライブ音源(スタジオライブは別)の初リリース。メタリカにトゥルージロが新しい生命力を吹き込んでいます。

シンプルに言えば、クリフバートンに近いタイム感でラーズとの相性がよく、ラーズとジェイムスのリズムの間を埋めて、バンドサウンドを一体化させている。さらに現在までに進化してきたメタリカサウンドに引けを取らない、いやむしろプレイヤースキルとしてはメンバー最高とも言える演奏能力を持ったトゥルージロによって過去曲が新しい命を得ています。

映画の公開でかなり自己開示したことも含め、「メタリカという虚像」を脱ぎ捨て、等身大のメタリカに戻っていく、地に足がついた生活感のある人間性が見えるようになっていく。年齢に伴う人生ステージの変化もあるのでしょう。虚像と苦闘した90年代から、自然体に回帰していく過程のように思えます。

アーティスト写真も肩の力が抜けた


9th : 「Death Magnetic」(2008)★★★★
1st~4thへの回帰、80年代後半のスラッシュメタルサウンドと2000年代のメタルの語法の融合がなされた作品。

ブラックアルバム以降タッグを組んでいたボブ・ロックと別れ、リック・ルービンと共に原点回帰したアルバム。トゥルージロ加入後初のスタジオアルバムでもあります。

シンプルに言えば4thメタル・ジャスティスに近い。曲構成はそこそこ複雑なものもありますが、音作りがソリッドになり80年代後半のスラッシュメタル的なエッジがありつつ、今や大御所たるメタリカらしいフックのある歌メロが乗る。さまざまな音楽を飲み込んでいますが、2008年の同時代性を持った素晴らしいメタルアルバム。トゥルージロの力もあり、バンドサウンドも熱量と迫力があります。

ただ、ブラックアルバム以降,、常に音楽性を拡張してきた、新しいことをに挑戦してきたメタリカとしては初めての「過去への回帰」でもある。もちろん、深化した部分はありますが、オリジナルアルバムとしては過去を振り返るという姿勢を始めて見せたアルバムでもあります。

当時のビジュアル、ビジュアルも80年代~90年代初頭に回帰したイメージ


Collaboration : 「Lulu」(2011)★★★★
達人同士のコラボによる一筆書きのような作品、「先が読めないメタリカ」の復活と、真の意味で「ロックバンド」に脱皮したアルバム。

世界中のメタリカファンの多くが「」となった(ような気がする)ルー・リードとのコラボ作「Lulu」。ルー・リードがもともと持っていた物語のアイデアを音楽化する試みで、それまでのメタリカのレコーディングと違う、数週間で仕上げる即興性の高い録音だったとか。

これ、今改めて聴いてみたら思ったよりいいアルバムなんですよ。「メタリカの新譜」として聞こうとしたら訳が分からない、「Death Magneticの続編」として期待したら「ブラックアルバム」から「Load」にいたる変化よりはるかに極端な変態を遂げていて、「?」となります(私もそうでした)。ただ、前作で初めて「回顧モード」になったメタリカが再び大きな冒険をしたアルバムだったと思いますし、むしろこのアルバムにしかない透明感というか自然体なサウンド。アシッドフォークアンダーグラウンドフォークストーナーサウンドの融合といった2010年代のヘヴィ・ミュージックの「ヘヴィさ」の表現手法を先取りしていたアルバムとも言える。

そもそも今回、メタリカを全部聞き直したのはDizzy Mizz Lizzyの「Alter Echo」にMetallicaが引用元として挙げられていたから(※4)なのですが、今作が一番「Alter Echo」には近かった。ある意味、メタリカが作った中で一番サイケなアルバムかも。

90年代後半、70年代ハードロックまで戻ったMetallicaが60年代ロックにまで戻りつつ、新しい音楽を生み出す、別の幹を作っていこうとした試みであり、それにはUSロックの革命のアイコンの一人と言えるルー・リードとのコラボというのは考え得る限り理想的な船頭を得たと言えるでしょう。このアルバムを経たことでバンドサウンドがさらに拡大し、演奏できる音像の幅がさらに広がった気がします。聴いていて「心地よい音」もさらに出せるようになったというか。音楽家として成長した一枚。

ルーリードと談笑するジェイムスとラーズ


EP : 「Beyond Magnetic」(2012)★★★☆
Death Magneticのアウトトラックながら「Lulu」で身に着けたオーガニックなサウンドを活かした次作への布石。

Death Magneticのアウトトラックス集、前作と同時期の曲と言われたら納得の曲たちですが、サウンドが変わっています。Luluを経たからか、よりオーガニックな音に。次作に繋がる音作り。各パートにくっきりとしたエッジがたっているというよりはやや混然とした音の塊感、だけれど各パートがしっかり聞こえて絡み合うというサウンドバランスになっています。良い音。

前作の回顧モードの後、2010年にはスラッシュメタル四天王(MetallicaMegadethSlayerAnthrax)によるBig4ツアーも実現、「回顧」といっても巨大な規模でやってしまうのがメタリカ。デイブ・ムステインとの和解(したあとまた喧嘩したりもしているようですが)も経て、過去を回顧するだけでなく総括し、前向きに進む、新たな挑戦へ挑むモードになったメタリカ。挑戦作だった「Lulu」を出したことで自由度を取り戻し、次作へ向かいます。

Beyond Magnetic」というのも、磁力を超えて、ということ。磁力を発していたのが過去だとしたら、それを超えていくというタイトル。

デイブムステインと共演するメンバー


LIVE Soundtrack : 「Through The Never」(2013)★★★★☆
生ける伝説としてのメタリカのライブを余すところなく伝えるベスト盤的ライブ盤。

「ライブを映画にしよう」ということで制作された「Through The Never」。解散寸前の姿を収めた「メタリカ:真実の瞬間(Some Kind Of Monster」が「ありのままの姿」だったとしたら、こちらは完全に虚像神格化されて伝説の神々となったMetallicaが描かれています。こちらはライブのサントラとしてリリースされたベスト選曲のライブ盤。公式ベスト盤がないメタリカにとってベスト盤、入門編的な位置づけとしても機能するアルバム。かなり音がいいんですよね、サントラという性質もあるのかミックスが聴きやすい。1曲だけ聞くと迫力不足というか、音圧もやや低めで籠った感じも受けますが、きちんとダイナミクスがあります。

「Death Magnetic」リリースの時、マスタリングで音量を大きくしすぎて音が割れた、「ラウドネス戦争の被害者」とされたメタリカですが、その反動か、あるいはLuluを経たことでクラシックロックの音作りも学んだのか、それ以降音が小さめ。その分きちんとダイナミズムが出るようになっています。ストリーミングとかYoutubeでプレイリストを組むと分かりますが、他のメタルアーティストに比べるとMetallicaは音が小さめ。最小と最大の音量差がつまりダイナミクスですから全体の音量を上げてしまうとダイナミクスが減る。とはいえ、音量が小さいと他に比べて一聴して迫力不足と感じるリスクがあるわけで、それを分かりやすくやってしまうメタリカは凄いなあと思います。今の時代、「音量小さめ」でメタルミュージックをリリースすること自体、かなり反抗的。「メタリカはメタリカ」という立ち位置を手に入れたが故の王道。

映像美あるライブ映像


10th : 「Hardwired...To Self-Destruct」(2016)★★★★★
総括と深化を同時に果たし、成熟と衝動が両立する奇跡的な「カッコいい」ロックアルバム。

個人的にはこれが最高傑作だと思いました。「メタルマスター」と方向性は違えど、同じような音楽的到達点にある。大きく言えば「Death Magnetic」は1st~4thの集大成だとするがこれは5枚目以降、ブラックアルバム~St.Angerまでをしっかり総括しつつ、Luluで手に入れたクラシックロックのスピリッツも含めて「メタリカの全歴史」を総括しながらも新しい地平へ漕ぎ出している自由さも感じる名盤。もちろん、過去の作品を葬り去る、上書きする様な名盤ではなく、「過去のすべての体験」を消化して、新たな境地にたどり着いたアルバムとでもいいましょうか。ここまでスリリングなロックアルバムは稀。かといって音の余白というか余裕もある。遊び心というか、緊迫感だけでない音”楽”も感じます。

80年代前半の無我夢中さと天性、80年代後半~90年代の神経質で精巧な芸術性、90年代後半からの無謀にも見える音楽的冒険、そして2000年代の回顧と、ルーリードからの継承を経てたどり着いた場所。単純に「カッコいい」んですよね。これだけベテランなのに。凄い。ヨーロピアンメタルの様式美、ハードコアの激情、サイケの酩酊、オルタナの内省、スラッシュの疾走、メタルのエッジ、ストリートの情熱、すべてを飲み込んだメタリカの音

タイトル「Hardwired...To Self-Destruct」は「固まってしまうと、、、自己破壊へ向かう」といった意味。今までを総括したようなアルバムにこのタイトルをつけてしまえるのが凄い。「変化し続ける」宣言。

変化のイメージを前面に出したアーティスト写真


Live : Helping Hands... Live & Acoustic At The Masonic(2019)★★★☆
北アフリカ伝統音楽の要素も感じる新たな音楽的冒険を記録したアコースティックライブアルバム。

バンドサウンドが完成の域に達した、、、と思ったら再び解体作業。今度はアコースティックライブアルバムのリリースです。

もともとブラックアルバムリリース時からアコースティックライブはやったことがあるようですが、こうして公式リリースは初。一聴して思うのはLed Zeppelinへの接近というか、北アフリカ音楽、モロッコ辺りの伝統音像(ジャジューカ)のような響きも取り入れています。やはりロック+アコースティックだとZeppelin的になるのでしょうか。

単にMetallicaの曲をアコースティックにした、というセットではなく、伝統楽器の音を加えて、新しい解釈、よりサイケデリックな響きになっています。でもこれ、ライブの画像見ると伝統楽器じゃなくてスライドギターなのかな。とはいえアレンジにはカントリー/ウェスタンやアメリカーナにとどまらない広範な影響を感じます。コードもワンコードで延々と酩酊させるような響きがある。

トゥルージロ加入以降、「完成されたメタリカ像」をしっかりと深化させるようなアルバムと、「純粋に音楽的な探求」のバランスが良いですね。こちらは「新しい探求」のアルバム。メタル色はほとんどないですが、「メタリカ色」は濃厚です。知らない方も多いアルバムな気がしますが、サイケデリックやストーナーサイドのメタリカが好きな方は是非聞いてみてほしい。

ライブの様子、チャリティコンサートらしい


Live : 「S&M2」(2020)★★★★☆
キャリア総括の大団円。20年前のS&Mとの比較を通じて、音楽家としての変化と成長を感じさせる一枚。

オーケストラとの共演ふたたび。音楽家として一回りも二回りも成長したメタリカが再び、20年ぶり2回目のオーケストラと共演。1回目があるので今回は双方とも余裕があります。音楽的に楽しむ姿勢がある。それは緊迫感の欠如という面もありますが、音楽を通しての対話、自然な心地よさが増しています。

メタリカのメンバーも、そしてリスナーも20年の時間を経たわけで、熟成の時を経た味わい深いすばらしい演奏。ぶつける、ねじ伏せる音像から包み込む、酩酊させる音像へ。サンフランシスコ交響楽団の演奏も軽やか。

10th(Hardwired...To Self-Destruct)は初期も含めたメタリカの全歴史の総括と深化を果たした名盤だった、と位置付けましたが、彼らがあのアルバムで唯一総括できていなかったのはS&M。あのアルバムはやはりオーケストラがいないと再現できない。そこで、オーケストラを含めて再度振り返りを行うことで、20年の間にメタリカはどう変化し、どこにたどり着いたかが分かる仕掛けを感じます。前作(S&M)のようなゴジラVSキングコングというよりは、連作の大作映画の最終作、たとえばアベンジャーズのエンドゲームのような美しい大団円

指揮者と肩を組むメタリカ

そして伝説は続く…。


■Metallica全作品レビュー


■注釈

※1 メタルのトレンドで言うと、1995年ぐらいからずっとブラックメタルのリリース数が一番多い。デスやブラックメタルが最も多く、激烈性を追求し、演奏技術至上主義的な面もあるテクニカルなメタル、プログメタルがその後に続く、という構図が続いています。それはメタルがメインストリームから再びアンダーグラウンドなシーンになった時期とも符合する。そんな中、メタリカはずっとメインストリームで勝負しているわけで、その中でメタルの要素で言えばストーナーやスラッシュメタル、ヨーロピアン的な王道ヘヴィ・メタル、あるいはより広義なロック音楽の音像をミックスした独自の音像となっています。

※2 これについてプロメタルドラマーであるYU-TOさんがちょうど記事で触れていました。だいたいガチでバンドまでやっているようなメタラーはこういう感想の方が多いんじゃないでしょうか。

自分が聴きたい"Enter Sandman"のドラムって、あのラーズのガムシャラで下手くそで感情剥き出しなクソみたいなドラム(失礼 笑)なんですよ。
そして、あのガタガタなドラムでも成立する(失礼 笑)、長年の経験で熟成されたMetallicaグルーヴ。
(中略)
でもね、やっぱMetallicaって凄い。
上のリンクのライブ映像観て下さいよ。
こんな荒っぽい演奏で、これだけの人を熱狂させて、もうイントロ流れた瞬間に何万人もの大歓声を巻き起こす名曲を世に生み出してる。
その凄さって、もう技術とかの次元じゃ無くて。
これこそがメタルとかロックの本質で、言葉では上手く説明出来ないけど、まさに"モンスター"と呼ぶに相応しいこの貫禄は誰にも真似出来ない。
そういう魅力を持つ人達こそが、"音楽"という存在の素晴らしさを世の中に伝えてくれる"アーティスト"と呼ぶに相応しい人達で、それって"1回聴いただけで叩けちゃう"とかそういうのより全然すごい事。

※3 ロック史は「ギターとボーカルが絡み合い、ビートが強い音楽」としての歴史と言い換えられます。ブルースの影響が強い。弾き語りに独自のロックンロールビートが発明されて、協調されていった。その流れの最新系というか、もっとも極端な形がヘヴィメタルで、あとは「メタル」という括りの中で変化・深化しています。たぶん、ギターサウンドとしてはこれ以上の変化は難しいというか、「ギターに聞こえなくなる」というところなんじゃないでしょうか。ディストーションギターの後にもシンセ・ギターとかいろいろ出てきて、ほとんどどんな音でも出せるようになってきたけれど、結局ディストーションギターの衝動性が一番快楽度が高いと言うか、「その次」は見つかっていない。「その次」は超重低音とか、ヒップホップに変化していった気がします。ギターから(=ロックから)は離れてしまった。

※4 アルバムレビュー1回目の「Kill ’Em All」に経緯を書いています。


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