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TWELVE FOOT NINJA / VENGEANCE

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今週は平常運転、テーマなく新譜を聴いていこうと思います。1組目はTwelve Foot Ninjaの「Vengeance」。Twelve Foot Ninjaはビクトリア州メルボルン出身のオーストラリアのヘビーメタルバンドで、2012年にデビューアルバムSilent Machineをリリース。前作「Outliner(2016)」は好評を持ってうけ入れられ、オーストラリアのレコードアワード「AIRミュージックアワード」に2016年、最優秀HR/HM部門でノミネートされています。また、2016年のDisturbedのオーストラリアツアーのサポートを務めているようです。初めて知ったバンドですが、高い評価をされているバンドですね。本作が3作目。NINJAとありますが、日本好きなのでしょうか。ゲームのジャケットだし。Twenty One Pilotsのパロディみたいなバンド名ですが、アニメやゲームマニアなのかも。けっこうアーティストで日本のコンテンツ好き、いわゆる「OTAKU」文化愛好者は多くいます。

Allmusicで★★★★☆。最近、Allmusicはときどきニューメタル、メタルコア系に高得点をつける傾向がありますね。Tetrach★★★★☆だったし。同じレビュアー(Neil Z. Yeung)なので、この人がメタル系の担当なのでしょう。最近入ったレビュアーなのかな。Allmusicはレビュアー名での検索ができないので他にどんなレビューをしているのか分かりませんが、Tetrachもなかなか良かったので楽しみです。

…と思ったら、Neil Z. Yeung氏はSpotifyでプレイリスト公開していますね。なるほど、こういう嗜好か。レビュアーがプレイリスト公開しているのは趣味嗜好が分かっていいですね。僕も作ろうかな。

おっと、話がそれました。それでは聴いてみましょう。

活動国:オーストラリア
ジャンル:オルタナティヴメタル、ファンクメタル、ジェント、アヴァンギャルドメタル
活動年:2008年ー
リリース:2021年10月15日
メンバー:
 Nik "Kin Etik" Barker –リードボーカル (2008年–現在)
 Steve "Stevic" MacKay –リードギター (2008年–現在)
 Shane "Russ" Russell –ドラム (2008年–現在)
 Rohan "Ro" Hayes –リズムギター、バックボーカル (2012–現在)

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総合評価 ★★★★☆

90年代~00年代のUSニューメタルやグルーヴメタル、ひねくれたポップセンスを持ったUKハードロックといったあたりを彷彿させるパートと、レゲエやタンゴなど南米伝統音楽、欧州伝統音楽を彷彿させるパートが融合して、奇妙なミクスチャーを奏でている2~7曲目が白眉の出来。面白い。シングルカットされた1とか9、最後の10は普通のニューメタルというか、特異性をあまり感じないのだけれど、中盤がとにかく面白い。ある意味プログレッシブロックというか、「さまざまな音楽要素をロックに取り込んでみた」というジャンルをプログレとすればまさにプログレ。もっと一般的に言えばミクスチャーメタルになるだろうか。疾走感はあまりなく、スラッシーさよりはグルーヴィーな感じ。ちょっとアップテンポでもファンクな感じ。5,6あたりは日本のシティポップ感もあり、面白い音像でした。全体的に楽し気な雰囲気が漂っているのも娯楽作としてGood。

1.Start The Fire 04:09 ★★★★

ややエスニックというか、エスニックテクノ的なスタート。からのグルーヴィーなリフ。ちょっと懐かしい感じというか、ニューメタルですね。ところどこに飛び跳ねる浮遊する空間音が今風か。ボーカルが入るとポップな雰囲気に。今のポップロックのトレンド、それこそTwenty One Pilotsとかああいう感じのメロディにヘヴィなリフが絡み合い、ところどころスクリームも入ります。こういう「美味しいところどり」を臆面もなくできるのはオーストラリアの強みですね。USだとどこかのシーンに属して、そうなるとその中で突き詰めていくというか、あまり折衷的なものが(オーストラリアに比べると)生まれづらい気がします。逆に言えば、オーストラリアは折衷的でめちゃ分かりやすいものがウケる、そういうものでないと世界には出てこない、ともいえる。音の組み合わせ方のセンスがいいですね。

2.Long Way Home 03:01 ★★★★☆

ちょっと変わった感じ、ストレンジな感じが増してきました。ちょっとサーカス的な感じもする。レゲエの感じも入るし。さまざまな音楽を混交した印象です。正しく”ミクスチャー”なメタル。US西海岸の能天気さ、スケーター的な「かっこよけりゃ何やってもいいじゃん」的なノリもありますが、もっと音は重め。あと、スラッシーというよりはグルーヴィーです。

3.Vengeance 03:27 ★★★★☆

サイレンのような、緊迫感のある音だけれどどこかユーモラス、ちょっと笑いのセンスがある。アルバム全体の雰囲気なのだろうけれど、コミカルな感じがして楽し気な雰囲気があります。ボーカルのスクリームの性質によるのかな。あまりシリアスになりすぎない感じが特色ですね。テンポとしてはミドルテンポでヒップホップの感覚もある。ブラストビートや疾走感よりはダークでゴシックな雰囲気、ちょっといびつなサーカス的な。マリリンマンソンとかロブゾンビとか、ああいったシアトリカルな感じがあります。歌メロが不思議な感じで、カントリー的というか、大陸的なのだけれどちょっとUSとはまた違う。オーストラリア感ですね。どう違うのか具体的に指摘できないのだけれど。音程の移動、メロディの展開の仕方。

4.IDK 03:03 ★★★★★

マーチングのような、勢いよく更新するリズム。からの、ジャジーで跳ねるようなパートからめちゃポップなサビへ。これは変わっていて面白い。80年代のTears For Fearsとグルーヴィーなメタルが融合したような。なかなか衝撃的なミクスチャー、キメラ感強い。

5.Shock To The System 03:19 ★★★★☆

ディスコ、いや、シティポップ的なスタート。カッティングする爽やかなギター。このアルバム面白いな! そこからドラムが連打されヘヴィなギターリフが入ってくる。オートチューンで補正されたエレポップ的な声。そこからタンゴに変化する。タンゴはかなり本格的にタンゴ。ボーカルだけは道化的だけれど、バッキングはしっかりタンゴしている。そこから刻みのメタルコア的な音像に変化する。

6.Gone 03:24 ★★★★☆

またポップな、シティポップ的なイントロ。シティポップはアジア圏で人気が高まっていて、インドネシアとかフィリピンとかで人気らしいがオーストラリアでも人気なのでしょうか。太平洋域、オセアニアに広まっているのかな。インターネットだから地理的制約はないですが、地理的に近いほうが文化や風土が近い場合があるから伝播はするのかも。これは90年代UK、Terrorvisionとか、ちょっとけだるさもあるハードロックな音像のポップスみたいな感じがある曲。シティポップのつもりで聞いているとヘヴィな音像ですが、メロディはずっとポップ。ボーカルはちょっとおちゃらけた感じが強い。一聴して耳に残るフックあり。

7.Culture War 03:37 ★★★★☆

歪んだ、チューニングがいびつなピアノ。そしてグルーヴィーな、いかにもニューメタルなリフが入ってくる。この「いかにも」が本当にいかにもでありがちなのだが、このアルバム全体を通してそうした「わかりやすいさまざまなサウンドスタイル」を融合して曲を組み合わせていくのがこのバンドの特色なのだろう。この曲はけっこう素直なニューメタル、メタルコア。グルーヴィーにスタートし、ちょっと疾走し、メロディアスなサビへ、という典型的パターン。ありがちだがクオリティは高い。各パートの盛り上がり、躁状態のアッパー感が高く、音響的迫力がある。途中から伝統音楽的なダンスミュージックに変わり、そこから激烈な連打に。切り替えが極端だなぁ。

8.Dead End 03:43 ★★★★

グルーヴィーなリフと絡み合うダークなパート。押しては返す、波のようなリズム。ちょっとWildhearts的な、UK的なひねくれたポップセンスもある。米英のトレンドなどをうまく取り入れつつそこから距離を置いて整理してカリカチュア、ディフィルメ化するのがオーストラリア的。なんというか90年代~00年代のUK,USハードコア、ニューメタルシーンがフラッシュバックするようなパートに、タンゴとかレゲエとか、南米伝統音楽、あとはポルトガルとかスペインあたりのジプシーなダンス音楽みたいなものが混じる。ところどころアボリジニー的なものなのかもしれないけれど。そうしたサウンドが特色かな。

9.Over and Out (feat. Tatiana Shmayluk) 03:24 ★★★★

比較的オーソドックスなリフ、から、音の隙間があるヴァースへ。ミドルテンポでボーカルラインが続く、エモ(マイケミカルロマンスとかパニック!アットザディスコとか)のサウンドにも近い。女性コーラスが入ってきた。これがゲストボーカルかな。ピアノも入ってきてさらに盛り上がる。この大仰な感じはまさにエモ。MVが作られているだけあってフックもあってキャッチー。ただ、このバンドならではのキメラ感、変なミクスチャー感は薄い。オーケストレーションが入ってきて盛り上がるのはA級エモバンド感はあるけれど。

10.Tangled 03:06 ★★★☆

アコギとボーカル、グランジやオルタナメタルのバラード感がある。悪くないけれど普通の曲。

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