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Amyl and the Sniffers / Comfort To Me

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アミル アンド ザ スニファーズは、メルボルンを拠点とするオーストラリアのパブロックとパンクロックのバンドで、ボーカリストのエイミーテイラー、ドラマーのブライスウィルソン、ギタリストのデックマルテンス、ベーシストのファーガスロマーで構成されています。バンド名を冠したデビューアルバムは2019年のARIAミュージックアワード(オーストラリアを代表する音楽賞の一つ)で最優秀ロックアルバムを受賞しました。本作は注目を集めてのリリースとなるセカンドアルバム。70年代のハードロック的なサウンドと言われ、ストゥージズ(イギーポップ)やダムドなどと比較されています。本人たちがインタビュー等で話している影響元はマイナー・スレット、セレモニー、AC / DC、スリーフォード・モッズ、ドリー・パートン、カーディBなど、ハードコアからヒップホップまで幅広い。本作もメディアでは好評で、Kerrang誌は満点(5/5)、Allmusicも★★★★☆をつけています。ここ3年ほど盛り上がりつつあるUKパンクの流れに対してオーストラリアのバンドがどんなサウンドを鳴らしているか、聞いてみましょう。

活動国:オーストラリア
ジャンル:ガレージパンク、インディーロック
活動年:2016-現在
リリース日:2021年9月10日
メンバー:
 Amy Taylor - Vo
 Bryce Wilson - Dr
 Dec Martens - Gt
 Gus Romer - Ba

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総合評価 ★★★★☆

シンプルでかっこいいロック、ハードロックでありパンクでもある。ところどころアリーナロック的な壮大さもあるけれど、基本的にはそれほどキャッチーなコーラスなどもなく、シンプルで硬派。アルバム全体を通して流れがあるとかコンセプチュアルではなく、曲ごとのバリエーションがありバラエティは考えられているが「シンプルにカッコいい曲」が並んでいるアルバム。1曲だけ、たとえばラジオとかプレイリストで偶然聞くとインパクトが大きい気がする。アルバム全体として同じテンションで流れていくので、後半になるとやや食傷気味。ただ、どの曲も完成度はそれほど変わらない。シングル向きの曲、そうでない曲というのはある気がするが、どの曲もライブでは盛り上がりそうだし、実際ライブだとエネルギッシュなんだろうなぁ、と感じる。

ライブ映像。あまりテンポは変わっていない、演奏はけっこうかっちりしているがボーカルのエネルギーは高い。最近のUKのポストパンク勢というより、もっと直情的でシンプルなパンク。USのStarcrawlerとかに近いかも。

1.Guided by Angels 02:59 ★★★★☆

性急なドラムからスタート。プロトパンク、ハードロック感がある。曲構成はシンプルなハードロックだが音の分離が良く、各楽器のクリアさはモダンなプロダクション。やはりオーストラリアらしく分かりやすい、ディフォルメされたようにも感じるパンク、ハードロックサウンド。観察してエッセンスを抽出している。オーストラリアのバンドはUKのブームやバンド群の特徴をうまく抽出して、シンプルにそぎ落とすのがうまい。AC/DCとかも「エッセンスを抽出した」バンドだと思う。あまりポップになりすぎず、あくまでぶっきらぼうなハードロック。カッコいい。

2.Freaks to the Front 01:41 ★★★★

ハードコア的なスタート。80年代ハードコア。曲も1分台と潔い。Turnstileと比較するとより直接的でシンプルな感じがするが、女性ボーカルなのでもっと聞きやすい感覚がある。はじける感じというか。

3.Choices 02:20 ★★★★☆

ギターリフが入ってくる、ハードロック的。ボーカルもそれをなぞる。そこからハードコア、スラッシュ的なツービートの疾走へ。これはカッコいい。ちょっとバッドレリジョンみたいな、エピタフ系のメロコアな疾走感もある。

4.Security 03:47 ★★★★☆

Twisted Sisterみたいなイントロのドラムから曲がスタート。アリーナロックの雰囲気もありつつ曲が始まればパンキッシュ。

5.Hertz 02:33 ★★★★☆

歯切れのよいリフ、リフのカッコよさはハードロック的。だんだんテンションが上がってきた。ちょっとスタジオ盤ではやや制御された感じも受けるが(ライブはもっと熱量が高そう)、この曲は熱狂感がある。ギターソロがけっこうオーソドックスなロックなのが面白い。それほど長くないがうまくコンパクトなソロで雰囲気を変えている。

6.No More Tears 02:57 ★★★★☆

この曲のイントロは面白いな、なんだかビートバンド、80年代アングラの薫りがする。ピストルズ的なパワーポップ、メロディアスなパンクの雰囲気もある。けっこうベースは暴れている。やけくそ感がある曲ながら、スタジオ盤らしくしっかりビートや演奏が制御されている。ポップな感じがして、シングル向きな曲。

7.Maggot 03:21 ★★★★☆

ベースリフからスタート。なぞるようにギターが重なる。ボーカルは歯切れが良い。お、曲調が展開して大サビが入る。こういう展開は初かな。アリーナロック的なスケール感のあるハードロック。

8.Capital 02:45 ★★★★☆

やや直情的でアップテンポな曲。言葉数も畳みかけてくるような感じ。お、途中からリズムが変わった。性急なブラックサバス、というか、マイナースロットというべきだろうか。あまりマイナースレッドを知らないので、知っている範囲で言えばデッドケネディに近い。ひねりのある80sハードコア。80sだから音像全体としてはそんなにゴリゴリではない。パンクと地続き。ボーカルもストロングなスクリームではない。

9.Don't Fence Me In 02:40 ★★★★

シンプルなリフとボーカルが絡み合う。ストゥージズ感。影響元でカーディBの名前をバンド自身が挙げているが、この力強い発音、ボーカルスタイルに多少の影響を感じるな。それほど歌い上げる、というより言葉を紡いでいく、吐き捨て型ながらしっかり言葉を伝えようとする明瞭な発音。プロトパンク的ともいえるのだけれど、意識しているのはヒップホップの力強い発音なのかもなぁ。ギターソロのところでちょっとリズムにアクセントが入る。

10.Knifey 03:30 ★★★★☆

ちょっとメロウな、メロディアスな感じがする曲。けだるさのあるギターサウンド。低音でうなるベース。路地裏、ストリート感がある。ミドルテンポでややテンションダウンするものの、その分メロディがしっかりしている。

11.Don't Need A Cunt (Like You To Love Me) 01:31 ★★★★

ノイズまみれのギター、そこからアップテンポでドラムが入ってくる。アップテンポとはいっても一定以上の速度は出さない、きちんと言葉が聞こえて曲として形がしっかりある。ライブでは1.2倍ぐらいに早くなるのかな。ちょっと抑えめに演奏している感じ。ひどいタイトル(Cuntは女性器)。

12.Laughing 01:44 ★★★★

アップテンポな曲が続く、言葉数が多く勢いがある、1分台の曲2連発。

13.Snakes 03:03 ★★★★

ややミドルテンポで落ち着いた。ピストルズ的な曲に歯切れのよいパンキッシュなボーカル。ややテンポが落ち着いている分、しっかりギターソロもある。初期アリスクーパーなどにも近い、70sハードロック感もある。

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