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「おばけの神器」 田村一インタビュー

田村一個展「おばけの神器」。
会期前半に在廊した田村一本人が語る今展と制作について。
どうぞお楽しみください。

白白庵オンラインショップ「おばけの神器」特設ページはこちら

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ー「おばけの神器」、出来上がった展示の全体像を見てどんな感触を抱いてますか?

田村:もっともっとでかいのが作りたいですね。on uもいろいろ作りたいし。

ーー始まったばかりなのに早々に次への展望ですね。

田村:ヒイラギ型のon uの型はプラモデルのパーツ作ってる時に派生して出来上がったんですけど、そんな風に何かを作ることでそこからまた次の制作につながるわけです。こうやって出来上がった作品を眺めると、これから作らないといけないものが見えてきます。

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「on u ラプンツェル ヒイラギ片口」

ーー「おばけの神器」は展示の制作と並行して決まったタイトルですが、これを受けてどんなイメージを抱きましたか?

田村:普段、個展の場合は自分でタイトルをつける事が多いので、自分のやっている抽象的なものづくりに対してこういう見られ方をするのはおもしろいですね。人にタイトルをつけてもらうと「あーそう見えるんだ」という感じ。
自分が作っている手のついたシリーズを「おばけ」と呼び始めたのは白白庵主宰の石橋さんなんですけど、個展の象徴的な作品を送って欲しいと言われてこの作品を送りまして。それで出てきたタイトルが「おばけの神器」。白白庵での前々回個展が「おばけの役割」で今回は「神器」になったか、と。客観的に見られたイメージが別の方向にも「深化」してるんだな、と感じます。

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「おばけの神器」
イメージ撮影:石橋圭吾(白白庵主宰)

ーー「抽象的な物づくり」とは?


田村:いわゆる普通の生活で具体的に使いやすい器、という事ではなくて、形を歪ませてみたり動きにアクセントをつけてみても「何か良いよね」「かっこいいよね」という感じが作品には必要で。乾燥や焼成で素材に潜んでいた動きが出てくるから粘土の可塑性もすごく重要。そうやって素材の特性と付き合っていくと、無理に使いやすいものに落とし込もうとするよりも抽象的なものを作る方が自然で。
そういう作品に動きを与える力をイメージして「おばけ」とか「ユーレイ」と呼ぶのはアリだな、と思います。

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「おばけの役割 L」

ーー「具体的に使いやすい」わけでなくても、盛り付けた時の絵がイメージできるので田村さんの器を「使いにくい」と感じたことは個人的にはないですね。

田村:みんな「使いやすさ」を考えすぎて囚われてるんですよ。
(コンビニのアイスコーヒーカップを指差して)これだって使いやすいよ。凄い。綺麗に氷が溶けてアイスになるし。自分でドリップするより綺麗。
よく考えられてるな、と思います。
学生の頃にアフォーダンスを学んでいたのですが、今はデザインの分野で主に取り入れられている考え方ですね。
でも自分はデザイナーではなくて作家なので。その「デザイン」的な部分とは違うところで物づくりをしないとしょうがないじゃないですか。その違いは注意しないとね。
「アフォード」って動作のきっかけを与える、ということだから、抽象的な柄でもこういうのを見て「あ、素麺盛りつけたい」と思うのも良いなと。
その抽象性から導かれる使い手と物のやりとりが深まると面白いし、そういう楽しみを感じている人もだんだん増えてきているように思います。

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「on u octo L “SQUARE”」

ーーちょうど今指差された新シリーズ「on u」の成り立ちからお伺いしたいです。

田村:去年の秋から作り始めました。いつか再生して使おうと思っていた轆轤の削りカスが何トンもあって。この鋳込みという方法なら型さえあれば自分でなくても出来るので、人に任せることも想定してます。近くには秋田の美大生達もいますし。将来的には分業でできたら良いですね。

ーーレコードレーベルみたいな動きですね。

田村:どちらかと言えばon u はバンドのイメージです。で、その音源をリミックスするのが自分。Tortoiseのアルバムとそのジョン・マッケンタイア mixみたいな感じで。
一点もの作品としてのon uとたくさん作るものを分けても良いかなと思います。

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「on u Rhombus」 

ーー型を使っているのでもっと機械的で同じものが届くと思っていましたが、ひとつづつから全然違った印象を受けます。

田村:形が一定にはなってないし、歪んでますからね。
鋳込みの場合、人によっては圧力かけたり離型した後に研いで整える場合もありますね。
浸け込むと離型まで時間がかかるし歪みやすいんですけどそれはそれで良いかな、と思います。
型は既に20種類以上あって、今回まだ持ってきていないものもあります。
型の一部は知人の原型師にお願いしています。その人はめちゃくちゃ腕が良いから大体なんでもできちゃう。コーヒーのサーバーとかも作ってみたいですね。

ーー本当に分業を見据えているんですね。


田村:ちなみに今回の製作だと全部一人でやっていたので、轆轤を前にして右側に泥漿を置いて。泥に絵を描いて型をベチョッと浸け込んでタイマーを押す。そして型を泥に浸けてる間に轆轤を挽いて、時間が来たら型を取り出す、っていうDJみたいな動きで制作してました。
轆轤の成型と同時にやると気が散っちゃうんですけど、底を削ったり掘ったりする作業だと、要はon uの原料を作ってることになるし、区切りもつけやすいので効率的に作業ができます。

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「on u oval "yggdrasill“」

田村:で、見切りも早くなりました。轆轤挽いて「うーん」ってなったヤツを今まではいろいろ調整したり変化させていたんですが、「再生できるから良いや」って思えるようになって。削りながら「なんかおかしいな」って思ったら原料にしちゃえ、と。
on uがあると思うと安心して見切りがつけられる。すぐ再生できる、と思うことで轆轤の制作でも実験的なこともしやすくなりました。

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「マグ 透土」

ーー今回の作品ラインナップは作家としての全貌、とは言わないまでも今この瞬間の”田村一”を俯瞰するには分かりやすい内容だと思います。

田村:せっかく青山君が事前に記事をまとめてくれたので、それに沿った形で整理した制作になりました。
ほかのショップだと「おばけとかの言葉はちょっと・・・」とか言われたりするんですけど笑
それにon uもあったので今回は轆轤仕事の方では限定色とかの変化球は作りませんでした。

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「碗」





ーー素材は”天草陶石”、”天草+透光陶土”があってそれぞれに「からみ」を加えたものがメインですね。本当に最近の田村さんのスタンダードラインナップと言いますか。それでいて釉薬の表情も少しづつ変化しています。


田村:「からみ」を使った作品をまとめて作ったのは久しぶりですね。
on u の型も増えて、試してみたいパターンも多いので釉薬の調合も一旦整理しようと思ってます。
今回の作品も基本は青白色なんですけど、少しだけ緑や黄色が浮かぶものもあります。

「夜化」で使った籾殻の灰もやっと灰汁が抜けてきたのでそろそろ釉薬にしてみたいですし。薪を融通しあう組合みたいなのが秋田にあってそこで灰を分けてもらったり。天然灰の世界に足を踏み入れようかと。凄く色が変わるから色々やってみようかなぁ、と。

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「からみ プレート」

ーー「陶芸産地ではない」秋田の地元の素材に密着してきてますね。
最後に今更ですが、今回の見どころとしてアピールしたいポイントはありますか?

やっぱり最新シリーズの「on u」がどう受け止めてもらえるか、多くの人に見て欲しいです。
あとは「からみ」。これは久々にたくさん作りましたがやっぱり「いいな」と思いますね。




田村一作品概要については「おばけの役割/田村一」
「on u」については「おばけの神器が始まる前に②」
各記事も合わせてご覧ください。

白白庵 オンライン+アポイントメント限定企画
田村 一 個展
「 お 化 け の 神 器 」
PAKUPAKUAN presents
Ceramic artist TAMURA Hajime solo exhibition
“Sacred treasures of the ghost”

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【オンライン】
日時 2020年9月11日(金)午前11時 ~ 22日(火)午後7時
   *会期中の木曜日は定休日のため受注のみ。
会場 白白庵オンラインショップ《PAKUPAKUAN.SHOP》

【ON LINE】
DATE & TIME : 2020.9.11 FRI. 11:00am. - 9.22 TUE. 7:00pm.
*only order correspondence for a regular holiday on Thursday during a session
VENUE : Special issues page on www.pakupakuan.shop

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【アポイントメント】
日程 会期中の金・土・日・月曜日 限定
時間 午前11時~午後7時 の間で 一時間枠
*一時間を上限とする来訪枠を設定し、各枠内で最大2名までの受付といたします。
*3名様以上でのグループのご来訪はお断りします。
*アポイントは訪問前日の営業時間内までの予約受付を必須とさせていただきます。(原則として電話受付)
*マスク着用、入口でのアルコール消毒・検温必須。
感染症予防対策を万全に講じ、事前予約のある方のみ来場可能とさせていただきます。
会場 白白庵(1階エントランスギャラリー)
   〒106-0072 東京都港区南青山二丁目17-14
   TEL&FAX 03-3402-3021
   www.pakupakuan.jp | info@pakupakuan.jp

【Appointment for visiting PAKUPAKUAN gallery】
DATE : Only FRIDAY, SATURDAY, SUNDAY and Monday during 2020.9.11 FRI. - 9.22 TUE.
*Tuesday and Wednesday are online business days, Thursday is a regular holiday.
TIME : 1 hour during 11:00am. to 7:00pm.
*Only less than 3 people will be accepted in each time schedules.
*We do not give the permission to visit to our gallery if visitors will be over 3 members.
*Please call us if you hope to visit us, until in business hours (11:00-19:00) of the day before visit.
*Mask wearing, alcohol sterilization, the thermometry at the entrance are required.
VENUE : PAKUPAKUAN (Entrance gallery at 1st floor)
     2-17-14, Minami-Aoyama, Minato-ku, Tokyo, JAPAN zip 107-0062
     TEL & FAX 03-3402-3021
     URL www.pakupakuan.jp Mail info@pakupakuan.jp

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カミノ ミエザル テガ ハタラク トキ
ミズハ トウトウト ナガレ
カゼハ ヒュウヒュウト フキ
ヒトハ ボウゼント タチツクス
オバケノ テガ アラワレル トキ
ヒトハ ヒトダケニ アラズ
カミニ ササゲル ウマキ サケ サカナ
トモニ アジワイ タマヘ
When the invisible hand of God works,
Water is torrentially flowing,
The wind is howling,
And humans just stand without doing anything.
When the hands of the ghost appear,
Humans are not just humans.
Delicious drinks and nibbles for God,
Taste them together.

昨年の夏に行われた個展「Lotus on the table」から一年、白白庵では通算3回目の田村一の個展は
新型コロナウィルスの感染状況をふまえ、オンライン及びアポイントメント限定での開催となります。
代表作となりつつある「お化け」のシリーズをはじめ、新しく取り組む鋳型とマーブリングの作品「on u」の最新作も披露します。
日用の食器であることを前提にしつつ、依り代や神器を連想させる特有のフォルムが魅力の田村作品。
人里離れた秋田の山奥から届く、待望の新作をお楽しみください。

It's been a year since the solo exhibition "Lotus on the table" last summer, and this will be the 3rd solo exhibition at PAKUPAKUAN for TAMURA Hajime.
In view of the recent outbreak of the new coronavirus, the solo exhibition will be open only by appointment or online.
In addition to the "ghost" series, which is becoming one of his best-known works, he will also present his latest work, "on u", a new series of mold and marbling works.
Tamura's works are designed to be used as daily tablewares, but their unique forms are reminiscent of Yorishiro (object representative of a divine spirit) and sacred objects.
Please enjoy the long-awaited new works from deep in the mountains of Akita, far away from human habitation.

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【出展作家】 Artist
田村 一
陶芸家 / 秋田県在住
【略歴】
1973 秋田県生まれ
2000 早稲田大学大学院修了後、東京で作家活動を開始
2002 栃木県芳賀郡益子町に移り制作
2011 秋田県に戻り、現在に至る

TAMURA Hajime
Ceramic artist / resident in Akita pref.
〔Brief Personal Histroy〕
1973 Born in Akita Prefecture
2000 Started activity as an artist after earning a master's degree at Waseda University
2002 Moved to Mashiko-machi, Haga County, Tochigi Prefecture
2011~ Came back to Akita Prefecture

web site 【Ghosts in the snow】
www.tamurahajime.jp


【企画・ディレクション】Direction
石橋 圭吾 (白白庵) ISHIBASHI Keigo (PAKUPAKUAN)


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