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Netflixとニュースのはざま ー続き

選択型の動画配信ならエッジの効いた面白いコンテンツを作りやすく、従来型のテレビ番組はその内駆逐されるだろうというのが前回の話だった。

しかし、選択型が増えるとどうなるのか。ニュースの世界で考えてみたい。
この世界でテレビと同類なのは新聞(いわゆる業界紙除く一般紙)だろう。基本はテレビと同じ一方通行型、購読料はあるが広告収入にも結構支えられており、一般的なジャンルは概ねカバーされ(日経新聞ですら競馬記事があり、文化欄もある)、内容も良い意味で無難、一定のスクリーニングがかかっておりフェイク記事は少ない(最近はそうした信用を毀損する残念な記事も多いが)。

これに対して、Webで配信されるYahooなどへの掲載記事は、まぁ酷い。
いわゆるコタツ記事が多く、テレビ番組で誰それがこんなコメントをしたみたいな、ファン以外にはほぼどうでも良い内容の記事や、見出しと内容が一致しない、ようは見出しで煽ってクリックしてもらおうというだけの、中身スカスカの記事とも言えない文章だらけである。
これを選択型といって良いかはやや疑問はあるが、まぁこれだけクオリティが低いのは無料だからで、有料で良ければ新聞社中心に相対的にずっと良質な記事をしかも、グーグルなどにキーワード登録しておけば、選択したジャンルの記事を簡単に読めるし、有料記事は間違いなく選択型と言えるだろう。

ところで、私は昭和世代のアナログ人間なので、情報収集は基本新聞である(笑)。
それも紙で購読し、残念ながら日経新聞はイギリスでは電子版しかなくなってしまったが、それでも紙面ビューアーで読んでいる。
これは何でかというと、紙面を興味ある無し関係なくざっと眺め、何となく気になる単語や見出しが目に入り、それを読むスタイルを守っているからで、関係ない業界や自分が全く知らない国の話などの情報を得やすいからだ。

選択型の最大の欠点は、結局、自分が興味のあるジャンルの内容しか読まないし見ないので、幅が広がりにくい点だ。
垂れ流し型メディアの場合は、ある意味否応なく目に入るので、意外な発見や学びがあるし、偏りが少なくなる。

尤も日経新聞なんか、自分が詳しい業界の記事を読むと、記者の勉強不足が透けて見えることも多く、ということは良く知らない業界の記事を読んで分かった気になるとマズいのだが、それでも全く読まないよりはマシだろう。
何より、時期もジャンルも違う記事・情報がある時急に結びついて、一気に視野が広がる、理解が深まるということがあり、そうした体験を重ねた自分にとっては、新聞紙面というのは非常に重要なツールた。

余談だが、新聞紙面の下段にある雑誌や本の広告も興味深い。これも見出しだけ追えば、いま世間一般では何が求められているかが良く分かる。
だから私は会社の後輩や若手には必ず新聞は紙面で読めと勧めている。電子版を購読して、業界関連記事をチェックしている若手は褒めてやりたいが、それでは勿体ないし、何より視野が広がらない。

もっと言えば、結局人間は、読みたいものしか読まず、見たいものしか見ない動物だから、私も気を付けないとあっという間にコロナ脳の頑固じじいの出来上がりである。

とは言え、前回書いたとおりテレビが衰退し、選択型コンテンツが増えると、ネトウヨの人々は中国・韓国叩きの記事しか読まないだろうし、リベラルの人はトランプ礼賛の記事は絶対に読まないだろう。
趣味・嗜好により受け手が細分化し、タコツボ化が進むのは間違いなく、そうなると、まずファクトやデータに基づいた客観的な見方や論者が減り(バランスの取れた、ある意味コウモリみたいなコンテンツは誰からも選択されない)、特定の層に耳触りがよく、声の大きい発言(論者)ばかりがはびこることになる。
そうなると、そもそも議論にならない状態がより増加し、アメリカのような分裂化が日本はじめ各国でより深刻化してゆくことになる。

余り考えたくない未来だし、個人的には楽観主義者なのだが、この嫌な予想は何となく当たりそうな気がする。テレビ局にも新聞社にも垂れ流し型コンテンツ、本当に頑張ってもらいたい。
あれ前回と逆のテイスト、、、

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