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ロシアの情報工作、対抗するウクライナ

ロシア、デジタル鎖国で世論操作、政府側、1000万超SNS拡散、偽情報で世界と分断
2022.4.8日経新聞朝刊

(記事抜粋)

   ウクライナ侵攻を続けるロシアが、国内で偽情報を大量拡散し世論操作を進めている。現地SNS(交流サイト)上の主な偽情報の拡散経路を日本経済新聞が調べたところ、ロシアの拡散工作を担ったとみられる100以上のアカウントが確認できた。1カ月の閲覧数は1000万件を超え、ほとんどが国内とみられる。偽情報を飽和させ、国民を世界の情報から分断している。

 侵攻時、ロシアは西側SNSを容認していたが、戦況膠着後に遮断。偽情報を国内に飽和させていった。米シンクタンク大西洋評議会のアンディ・カービン上級フェローは「国民向けに侵略を正当化する『証拠』を圧倒的な量で提示」する狙いを指摘する。


ロシアの情報工作はお家芸で、過去にも度々行われています。

(参考)
・2014年、ウクライナ親米政権がクリミア半島のロシア系住民を弾圧しているとの偽情報を口実に半島を併合、軍事侵攻を正当化

・2016 年、アメリカ大統領選でトランプ氏の対抗馬だった民主党のヒラリー・クリントン氏を攻撃するSNSを拡散、ロシア寄りの考えを持ったトランプ氏の大統領就任に影響


今回のウクライナへの侵攻開始前でも、

・ウクライナ東部でジェノサイド(集団虐殺)が行われている
・ウクライナが生物兵器や生物兵器を開発している(根拠無し)

など、ロシアの軍事侵略を正当化するため偽情報を流布しています。

3月中旬、ゼレンスキー大統領が投降を呼びかける偽情報が拡散しましたが、これにはAIに本物のデータを学習させ、そっくりの動画や音声を合成する(ディープフェイク)技術が使われたそうです。

本物の映像と並べてみないと、正直わからないです…

専門家によると、解像度を上げる補正技術をつかえば、もはや本物と判別がつかなくなる恐れがあるとのこと。

しかし、実は、お家芸ロシアに勝るとも劣らない情報戦をウクライナは行っています。

同じ日の日経新聞朝刊に掲載された記事をご覧ください。

対ロ支えるデジタル部隊、政府・財閥にサイバー攻撃、ハッキングで国民に真実、危機対応で新たな形。
2022.4.8日経新聞朝刊

(記事抜粋)

   ロシアによる侵攻を受けたウクライナの抵抗で、デジタル部隊の健闘が目立っている。今回の戦争は、国家が危機に立ち向かう新たな形を世界に示している。
 ロシアが侵攻を開始した2日後の2月26日、ウクライナのフョードロフ副首相兼デジタル転換相が世界を驚かせた。ロシアの政府機関やインフラ関連の企業などにサイバー攻撃を仕掛けるボランティア(義勇兵)を世界に募ることを発表。その名も「IT軍」だ。
 実際、ロシア政府機関などのサイトを閲覧できなくしたり、プーチン政権に近い新興財閥(オリガルヒ)の個人情報を暴露したりしてロシアの混乱を後押しした。
 その後、もう一つの組織「インターネット部隊」も立ち上げた。こちらは情報統制下にあるロシア人にウクライナで起きている事実を知らせるのが目的だ。


ウクライナの情報戦を担うフョードロフ氏は、ネット広告会社の創設者のひとりで、現在31歳。

ロシアの侵攻が開始されてからすぐ、テスラの創業者イーロン・マスク氏へ向け、SNSで衛星ネットワークシステム「スターリンク」の使用を要請。

これに反応したマスク氏は、すぐにスターリンクの通信機器をウクライナへ送ります。

スターリンクとは、世界の至る所で高速インターネット接続を可能にする衛星ネットワークシステム。
これにより、従来のインターネット網がロシアによって破壊されても、ウクライナでインターネットを継続して利用でき、コミュニケーションも遮断されないそうです。

これにより、ロシアに妨害されることなく、情報戦を有利に進められたんですね。

この着眼点と行動力には脱帽です。

次々とSNSでメッセージを送り、情報戦でロシアを圧倒しているフョードロフ氏。

戦況は長引いており、予断を許さない状況ですが、ひとまず、このウクライナ最年少の閣僚にエールを送りたいです。

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