「ALOHA」の根底ある世界観、精神性、ルーツとは?
アロハという言葉は、世界でもっとも有名な言葉のひとつだ。映像や音楽などで、地球上のほとんどの人が少しでもハワイのことを知っているだろう。
しかしそれでも、アロハという言葉の意味を理解するためには、地元のリズムに合わせてゆっくりと時間をかけて、観光客向けの商業的な形ではなく、本物のハワイ文化のルーツをたどってみる必要があると思うのだ。
1500年以上昔、ポリネシアからの入植者が太平洋の真ん中にある無人島にたどり着き、彼らの宗教、言語、習慣、工芸品、技術を持ち込んだ。 何百年もの間、彼らは他の文明から完全に隔離された状態で生活し、限られた資源の中で生き抜くための知識と技術を身につけた。 土地や自然環境は、ハワイアンのアイデンティティには欠かすことのできない一部となり、彼らの幸福にはなくてはならないものとなったのだ。ハワイのアートや工芸品はすべて自然との繋がりと土地への愛を表現しており、アロハの寛大な精神でそれを表現しているのだと感じる。
アロハという言葉は「こんにちは」や「さようなら」と訳され、挨拶としてよく使われている。しかし、あまりにもこの言葉がカジュアルに使われ過ぎていて、本来の意味が薄れてしまっている。
アロハは単なる挨拶ではなく、ハワイの精神的価値観の根幹をなす概念であり、生き方でもある。
実はアロハには、愛、愛情、寛大さ、心を込めて話すこと、忍耐、傾聴など、さまざまな意味がある。「アロ」は、今を共有することを意味し、「ハ」は呼吸、生命エネルギーを意味すると言われている。さらにそれぞれ5文字のアルファベットにはそれぞれの意味が含まれているとも言われている。
愛は自然な状態であると信じ、ハワイアンはすべてのことをアロハで行ってきた。それはポジティブなエネルギーの交換であり、交換したものは必ずお返しするという暗黙の了解がある。このエネルギーの交換に参加するには、言葉を発するたびに心のこもった意図を込めるのが一番だ。
さらに彼らの考える愛には、嫉妬や恐怖などのネガティブな感情がまったくない。この愛の例としては、公園、庭園、ビーチなどの維持管理に細心の注意が払われていることが挙げられる。ハワイアンは自分たちの「楽園」をとても誇りに思っていて、土地との繋がり(アロハアイナ)があるので、長年毎日通ってきたビーチや公園は、自分たちの家の裏庭と同じくらいの感覚なのだ。友人の芝生を褒めるのと同じように、地元の人に「とても美しいビーチがあるよ」と伝えるのは、アロハの素晴らしい一例である。
ハワイという小さな楽園の経済は観光産業に大きく依存している。スローペースの地元の人々は、別のペースで行き来する膨大な数の観光客を受け入れてきた。現代では、さまざまな通信手段や簡単に手に入るニュースにより、世界が縮小しているように感じられる。人々の世界は昔よりもはるかに広がり、他人を常に意識するようになり、隣人を思いやる社会になってきている。これは間違いなく良いことだが、彼らの世界観や精神性を表現するハワイ語はその影響で危機的状況なのもまた事実だ。英語が公用語となっている今、ハワイの島々でハワイ語はあまり話されていない。
ハワイ語は口承で伝えられてきた歴史がある。アルファベットが伝えられたのは19世紀に宣教師が来島したことがきっかけだが、ハワイの歴史の多くは世代から世代へと口頭で伝えられてきた。
ハワイ語はハワイの伝統を守るために欠かせないものだ。ハワイ語はポリネシア人の先人たちと繋がり、人種としてのアイデンティティに欠かせないもので、単なる言葉ではなく、魂を伝える波動、もっと言えば、宇宙と繋がるツールである。それは日本語も同じなのだが、言葉を伝承し使っていかなければいけない貴重な言語なのだ。
幸いなことに、最近ではハワイ語を教えたり、実践したりすることへの関心が高まっている。英語にはアロハの側面を表現するための言葉がたくさんあるが、アロハに代わる英単語はひとつもない。
以前にも書いたが、ハワイ語は日本語と同じ母音言語だ。音ひとつひとつに意味があり、言霊=波動が宿り、それは宇宙と繋がっている。
ちなみに、日本語の音にあわせてアロハとマハロを紐解いてみると下記のようになると思う。
ア=天
ロ=元に戻る
ハ=離れる
マ=空間
ハ=離れる
ロ=元に戻る
※神代文字の研究者の片野貴夫氏の解釈に基づく。
アロハは、天から離れてしまったものが元に戻る、ということを意味しているのかも知れない。それはつまり、愛の源泉である宇宙(天)との繋がりを結び直すという感じだ。
マハロは、空間的に離れてしまった魂という存在が元に戻る、ということを意味しているのかも知れない。それはつまり、人と人とが繋がりを取り戻す感謝を表現しているという感じだと思うのだ。
とりとめのない話になってきたが、アロハというもっとも知られているハワイ語の真髄、言葉に込められている精神性や世界観を伝えたかったのだ。
言葉というのは、どの言語もそうだとは思うが、歴史や文化、精神性や世界観が根底には込められている。
日本語と同じ母音言語であるハワイ語。アロハという誰もが知っている言葉の奥深さを感じていただけたら嬉しい。
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