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連載百合小説《とうこねくと!》キスの理由、キスの意味、そして東子さまは……(1)

 《前回のあらすじ》
 恵理子ちゃんをめぐって東子さまと南武ちゃんが争っている所へ現れたのは、キス魔の西條さん。
 南武ちゃんへの嫉妬が収まらない東子さまは、自ら西條さんにキスをしてしまいます。
 ショックで崩れ落ちた恵理子ちゃんを押さえつけ「この子にもキスしてあげたら?」と言う東子さまだったが、西條さんの答えは──


 みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
「なんですって……?」
 私を後ろからホールドしたまま、動揺した声をもらす奥さま──神波東子さまの付き人をしています。

「だめです……。私……北郷さんにはキスできません……」

 切ない微笑を浮かべながら、西條さんは一歩後ずさります。
 どういうことでしょう。場所も状況もおかまいなしにキスをしてくる西條さんが、そんなことを……
「そうよ……こんな勝手なキスの仕方、アタシは絶対に許さないからね!」
 こちらに駆けてきた南武ちゃんは怒っています。

「アンタにとって、キスってそんなに軽いモノなの!? 北郷ちゃんとはどんな気持ちでキスしてたのよ! そんな軽い理由でキスしてたとしたら……アタシ絶対に許さないから!」

 西條さんと南武ちゃんの言葉に、東子さまの腕の力がフッと抜けます。私が立ち上がるより先に、東子さまが立ち上がります。
「違う……、違うの……」
 消え入りそうな、つまったような声を絞り出す東子さま。体を震わせ、首を左右に振ります。その表情は、今にも泣き出してしまいそうで……
「……ごめん、なさい……」
 そう言って踵を返すと、早足で歩いて行ってしまいました。
「東子さま──っ!?」

 追いかけようとした私の肩をガッとつかむ手と、服の裾をギュッとつかむ手。
 
 険しい顔で肩をつかんだのは、南武ちゃん。
 切ない顔で服の裾をつかんだのは、西條さんでした。

 *

 私と南武ちゃん、西條さんは、海辺にある階段に腰かけます。みんな、話を切り出せずに黙り込んでいました。

 でも、私は知りたかった。
 どうしてあの時、西條さんは私にキス出来ないと言ったのか。

「西條さん……どうしてですか」
 ようやく発した声は、喉に張り付いてカサカサと乾いていました。

「あんな積極的にキスをする西條さんが、どうしてあの時、私にキス出来ないと……」
 そう言って西條さんの方を向くと、西條さんは眉を八の字にして海の方を見つめていました。
「私も……こんな気持ちになったのは、初めてです……」
 西條さんは小さく息を吸うと、ふうっと息を吐いて口を開きました。

「私がどうしていろんな人にキスを求めるか……。その理由、聞いてくれますか……?」



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