中黒 靖(ボンサイ・ゲームズ)

中黒 靖(ボンサイ・ゲームズ)

最近の記事

ゲームの著作権/版権(ウォーゲームの場合)

先週から販売を開始したDecision Gamesの『Operation Causeway』ですが、商品説明に歯切れの悪い一文があります。 ※3月18日現在、公式/非公式で発表されていませんが、地形効果表がデザイナーが意図したものになっていないようです。 ルールブック内に、日本軍と連合軍とで地形が戦闘に与える影響が異なる、と書かれています。ところが地形効果表の内容はどちらも同じ。となると、エラッタとちゃうんかいと思いますが、今の時点ではそうとも言い切れないのです。 De

    • ハッピーショップスとアサルト・ゲームズ

      宣伝: BANZAIマガジン第11号は11月20日発売です。(宣伝終了) イタリアのウォーゲーム事情を特集しておりますが、その中でDissimula Edizioniの中の人にお話をうかがいました(上写真)。タイトルの「FSTR」とは同社がリリースしたWW2イタリア戦役ゲーム・シリーズ第1弾の『From Salerno to Rome』の略です。うちのショップでも扱わせてもらったのですが、世界的にたいへん売れ行きが良く(レーティング8.5は伊達じゃない)、この秋に3刷までい

      • 非英語圏の英語ルールブック

        多分にブーメランな内容です。 今年、スペインの新興パブリッシャー・スナフさんの『Ambon』の日本語版を出しましたが、驚かされたのが英語ルールブックが極めて読みやすかったこと。読めないのでスペイン語のルールブックは手にしていないのですが、章立ても文章も、例えばDecision Gamesあたりのルールブックを読むがごとしですらすら。たいへん助かりました。 ならばと、同じスペイン・ルドプレスの『アレア』の英語ルールブックに挑戦しましたが、こちらは大変でした。ウォーゲームのル

        • 第一が必勝の信念、第二が投入量

          これを書いている現在(10月11日)、「鈴木銀一郎追悼企画『鈴木銀一郎メモリアルボックス』」プロジェクトが苦戦を強いられています。 ところで同企画で再版予定の『ゲーム的人生ろん』にもありますが、鈴木氏の言葉 第一が必勝の信念、第二が投入量 は名言でありまして、翔企画を卒業した後でこの言葉の意味を噛みしめることが多かった。翔企画時代に実践できなくてすみません。結果的に、うまくいったプロジェクトはその両方が備わっていたし、うまくいかなかった時は両方、あるいはどちらかが欠けて

        ゲームの著作権/版権(ウォーゲームの場合)

          プロがウォーゲームで学ぶ時代

          むしろ流れが逆だろう、という話はさておき。 プロ向けのウォーゲーム・デザイナーのTwitterアカウントをフォローしておりますと、専用に開発されたゲームはもちろん、民間のウォーゲームを利用した学習も盛んに行われている様子をうかがえます。 我らが自衛隊も最近この方面での活動をされるようになっており、今年4月にはGeorgetown University Wargaming Societyで「Research of wargaming utilization」と題されたウェビ

          プロがウォーゲームで学ぶ時代

          ロシアンキャンペーン指数

          ビッグマック指数っぽく、ウォーゲームの価格を考えてみようじゃないの、という話です(意味合いは少し違いますが)。というのも間もなく『ウォー・イン・ザ・パシフィック日本語版』が発売されるのですが(10月9日です)、果たしてこの価格(6,200円+税)が適切なものなのか、自分なりに検証してみたいと思ったから。なおこの価格、原価3倍の条件を満たせていません……。 1976年の『The Russian Campaign』(以下、ロシアンキャンペーン。ヘッダ画像はBGGより)の価格は9

          ロシアンキャンペーン指数

          2年連続CSR賞ノミネートの意味と無意味

          ボード・ウォーゲームの世界で唯一の賞と言えばチャールズ・S・ロバーツ賞で、2013年から2018年までお休みしていましたが、2019年から再開されました。ありがたいことに昨年は『300』、今年は『レッドサン・ブルークロス』がノミネートされました。 これはもう、本当に皆様のおかげです。荒々しい、あるいは猛々しい元のデザインをソフィスティケートしてくれたディベロッパーズ&テストプレイヤーズの貢献大であり、海外市場で遊んでもらえるきっかけをつくってくれた、ルールの英訳をしてくれた

          2年連続CSR賞ノミネートの意味と無意味

          太平洋戦争の勝利条件

          太平洋戦争は日本に勝ち目のない戦争だったとよく言われるし、恐らくそのとおりでしょう。ですが、それでは「ゲーム」にならないので、太平洋戦争のキャンペーン・ゲームは何らかの工夫をして勝敗を競えるようにしているわけです。たとえ戦争で日本が負けるのが前提だとしても。 そんな工夫など知らん、歴史どおり1945年8月15日までに日本を降伏させれば連合軍の勝利、それ以外は日本の勝利や、と割り切ってしまったのが『ウォー・イン・ザ・パシフィック日本語版』(WitP)になります。原題が同じです