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第一が必勝の信念、第二が投入量

これを書いている現在(10月11日)、「鈴木銀一郎追悼企画『鈴木銀一郎メモリアルボックス』」プロジェクトが苦戦を強いられています。

ところで同企画で再版予定の『ゲーム的人生ろん』にもありますが、鈴木氏の言葉

第一が必勝の信念、第二が投入量

は名言でありまして、翔企画を卒業した後でこの言葉の意味を噛みしめることが多かった。翔企画時代に実践できなくてすみません。結果的に、うまくいったプロジェクトはその両方が備わっていたし、うまくいかなかった時は両方、あるいはどちらかが欠けていたのです。

その意味でAll or Nothing式のクラウドファンディングは、一消費者として、前者が欠けているように感じられました。ゴールしたら追悼します、しなければ追悼できません、はさすがにちょっとアレです。もちろんプランBは用意されているとは思いますが。

一方で、All or Nothingにしたい気持ちもよくわかります。消費者の価格感とすれば、
 1)書籍: 3K円
 2)モンスターメーカー: 3.5K円
 3)史上最大の作戦: 12K円
くらいではないでしょうか。1)2)だけなら必勝の信念で2,000部の企画は推せるとしても、3)込みで1,000部は難しい。普通に考えると安全圏は200-300部。冨岡さんに怒られても、生殺与奪の権を他人に与えたくなります。

そうなると果たして3)が正しい判断だったのか、ということになります。『史上最大の作戦』は確かに評判の良いゲームではありますが、今でも普通に入手できる商品です(お、今は通常価格に戻ってますね)。しかしプレイ時間が長い。マップも2枚に拡大されているので、おいそれとプレイできない。

翔企画時代のことしかわからないので、見当違いなことを書くかもしれませんが、鈴木氏は置き物よりはプレイできるゲームを好まれました。であれば、プレイしやすいもの、「編集長の対戦日誌」にもよく登場した作品をチョイスしたほうが良かったのではないか、と思うのです。

鈴木氏と対戦していた/対戦を夢見ていた当時の若い人たちは、鈴木氏が好んで対戦していた作品を当時の仲間たちと、あるいは当時の自分と同じくらいの年齢になった子どもたちとプレイして、いろいろ偲びたいんじゃないでしょうか。偲ぶだけじゃなく、何かに夢中になったあの頃の熱い気持ちを思い出すかもしれません。

そうすると現在市場に出回っていない、『モンスターメーカー』と同時期、即ち鈴木氏のデザインに脂がのった時期に開発された『ロンメルアフリカ軍団』あたりを選ぶべきだったのではないかと思うわけです。
 1)書籍: 3K円
 2)モンスターメーカー: 3.5K円
 3改)ロンメルアフリカ軍団: 3.5K円
こんな感じ。これなら必勝の信念で推せます=自分のプロジェクトであれば、ゴールしなくても責任もって遂行いたします。

あとは投入量。人・金・時間の投入ですね。このへんのバランスについては一概に言えませんが……。

『ロンメルアフリカ軍団』は、できれば若いクリエーターによってブラッシュアップしてもらいたいです。新しい方が携わることで、ウォーゲーム畑の人にも新たな発見があるでしょうし、そうでない方にも触れやすい作品になるはず。(あと、大きな声では言えませんが、「鈴木氏とロンメル」の組み合わせで活用できる資産があるのではないでしょうか。)

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この言葉にも一理ありますが、鈴木氏のゲームは「終わった」わけではないのですよ。「虎は死して皮を残し、デザイナーは死してゲームを残す」ともおっしゃっていましたが、まさに現在進行形の企画であるVUCA版『日本機動部隊』とも連動させる(例えばバッカー限定の購入オプションを追加する)などすれば、今のファンにも訴求できたのではないかと思います。久々の(日露戦争、ロンメルアフリカ軍団以来の)グローバル展開、こういう情報も積極的に「投入」していきたい。

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実際のところ「プランB」があるのかないのかわかりませんが、必勝の信念と投入量でもって、なるべくより良い形でランディングしてもらえればと願っております。

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