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楊駿驍
2023年5月7日 19:58
※この論考は2023年1月5日の「早稲田超域哲学研究会」で発表した内容を微修正したものになります。序この論考では2000年以降と2020年前後という二つの時期において、それぞれ中国で影響力を持った互いに対照的な、そして日本の文脈から見ると極めて保守的な二つの思想を取り上げて紹介したいと思います。2000年以降については中国の哲学者・趙汀陽の議論を取り上げ、2020年前後については人類学者の
2022年3月10日 15:23
「言説の権利」をめぐる異議申し立て中島隆博は『中国哲学史ーー諸子百家から朱子学、現代の新儒家まで』(中公新書、2022年)の中で現代中国の哲学界における「普遍性論争」について紹介している。簡単にいうと20世紀に入ってから、中国の総合的な国力の向上に伴って、西洋的な普遍概念を相対化し、そのオルタナティブとしての中国的な普遍性についての議論が活発化したということである。例えば「天下」や「王道」とい
2021年1月28日 15:39
最近は中国でよく読まれている思想系の本を読んで、重要なものは読書ノートを作っていこうと思っている。もちろん思想をまじめに議論するとか、アカデミック的にどのようなことが言えるかとかのためではなく、あくまで中国の人たちがどのような思想を導きに世界と自分を考えているかを知りたいためである。そこで、「現代中国で一番哲学者と呼ばれるに相応しい」と言われている哲学研究者の陳嘉映の講演「教育と洗脳」(『走
2021年2月9日 16:28
はじめに今回は2020年に中国でたいへん話題になった、人類学者の項飆(シャンビョウ)のインタビュー集『把自己作为方法:与项飙谈话』(上海文艺出版社,2020 年)を読んだので、その内容を簡単にまとめてみたい。項飆は1972年浙江省温州市生まれで、現在イギリスのオックスフォード大学の社会人類学の教授である。著作一覧は記事の最後に載せてあるが、彼を一躍有名にしたのは北京郊外で温州出身の商売人た