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ある和食店が日本語が話せないお客さんをお断りした理由

お客さん相手の仕事をしていると、どうしても売上や利益が気になるものですよね。私も人材エージェントの仕事をしていると、クライアント企業や転職相談を受ける候補者の方々に貢献しようと頑張るわけですが、最終的に双方が合意して候補者が希望企業に採用されて企業から成功報酬を獲得しないと自分の仕事が成功したことにはなりません。

厳密に言えば、全てのお手伝いが成功する訳ではないのですが、採用される人数や成功報酬を合計した売り上げが一定水準以上でないと良い仕事をしているとは言えないのです。世知が無いですが、資本主義の世界に生きる限りはそういうものだと割り切るしかありません。

ですが、先週に食事をした和食店の大将の筋が通った仕事ぶりから学んだことがあったので紹介したいと思います。


7年続く実力派の和食店

そのお店は大将と奥さんが切り盛りする個人店で、コの字型のカウンターに10席ほどある小さなお店です。メニューはアラカルトでオリジナリティある手の込んだ料理ばかりです。(写真を撮っておけばよかったですが1つもありません、、、)
ホタルイカをたたいて何かの野菜とあえて何かのジュレがかかったやつとか、イノシシのお肉を季節の野菜と極上のスープで炊いたやつとか、、、
食事を文章で表現するのは難しいですね。上手く書けません。丁寧に説明してもらったことも覚えていませんし(´;ω;`)

料理系のドラマの撮影でも登場したそうで、その時の逸話でも食事しながら盛り上がりました。

日本語が話せない観光客が来店

その日は私達2名だけがお店にいたのですが、しばらくして欧米の観光客と思わしき男性と女性が来店しました。日本語はまったくできず英語だけで「予約した〇〇ですが」と丁寧におかみさんに話しています。

しかし、このお店は日本語が話せるお客さんしか予約を受けていないそうです。でも、別の日本語ができる代理人が予約したようで、その時に気づかなかったそうです。

おかみさんも、大将も、英語は全く話せないようなので、私が「片言の英語ですが手伝いましょうか」と申し出てサポートしました。

私が思っていたことは、私がちょっとサポートしたらお客さんも食事できるかな、お店としても2名入ると有難いだろうな、ということでした。

しかし、おかみさんが伝えてほしいと言ったことは「このお店では日本語が理解できることが必須です。日本語が話せない人はお受けできません」ということでした。

私はずいぶん冷たいなぁ、、と思いながら理由とともに説明しました。
幸いそのお二人はこちらに気を遣わせるような態度も取らずに理解して去っていかれました。

売上を捨ててお客さんをお断りした理由

で、日本語が話せないお客さんをお断りした理由は、そのお店のメニュー1つ1つが複雑で英語では説明できないから、でした。

このブログの前半で私が料理を日本語で紹介しようとしても書けなかったアレです。確かに、日本語が分からない人に複雑な料理の説明を伝えるのは難しいです。

お任せで料理を出しても良いのかも知れませんが、そうすると料理を一口だけ食べて苦手だと感じたら、そのまま戻されることも多いそうです。
それでもお客さんが観光の体験として満足して、売り上げが上がれば良いと考えても良いかも知れませんが、そこはお店としてはポリシーに合わないとのこと。

お店としては魂を込めてつくった料理を、きちんと説明して、提供してお客さんに食事を楽しんで頂くことを重視しているそうです。その良いサービスが提供できないのなら、たとえ売り上げがあがるとしてもお断りするという判断をしておられました。

その日はお客さんは私達2名だけでした。

きっとあと2名はいれば売り上げは倍になって助かるはずなのに、お断りするという勇気に、お店の矜持を感じました。

自分もそのような姿勢で仕事をしているか?

仕事をしているとポリシーに合わないことを要求されることもあるでしょう。
私も違うなーと思いながら、売り上げの為、お金の為に、割り切ってやっていることがあるかも知れません。パッと思い出せませんが。

ですが、大事にしたいポリシーに合わない仕事はお断りする。
そんな姿勢が良い仕事をしていく上では大事だなぁと、今回のお店の対応を見て感じた次第です。

(2024年4月8日)
山本恵亮
1級キャリアコンサルティング技能士



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