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<2>新たなキャリアのステージに進む勇気と知恵~転職で人生を変えたい人に必要なこと~

「自分のキャリアは今のままで良いのか?」
という思いが生じたら、それは自分が新たな人生/キャリアのステージに移行するタイミングが来たという信号かも知れません。
そんな時は、いったん立ち止まって自分に向き合ってみるべきであると前回のコラム「あなたのキャリアは今のままで良いのか?」で述べました。


変わろうと挑戦しているのに、変われない時の行動パターン

でも、人が変わろうとしているのにも関わらず変われないことは多々あります。変わるべきだと直感した時についやってしまいがちなことは、焦って今までと同じ古い発想で目標を立てて、今まで通りの古い考え古いやり方で、新しい(!?)挑戦を始めてしまうことです。

例えば、大学受験に合格した後に目標を見失って空虚な気持ちになった時に、慌ててよく考えずにとりあえず難易度の高い資格試験の勉強を明確な目的が無いまま始める…といったようなことです。(もちろん目的があって資格取得に取り組むことは素晴らしいことです。)

これは一見新しい取り組みに見えますが、自分が空虚な気持ちになった原因を深く考えずに従来と同じような別の取り組みを始めているに過ぎません。問題を先送りしているだけです。これでは近い将来に同じような問題が生じてしまいます。

この、頑張っているのに変われないワナに陥らない為のお勧め方法があります。

それは、自分が変わろうとして新たな挑戦を始めた時に、あなたのことを良く知る人に「自分の取り組みは今までにない新しい挑戦なのか?」あるいは「一見新しいことの様だが、実質は今までと同じ発想の取り組みに過ぎないのか?」、聞いてみることです。家族や親友であればその違いに気づくでしょうし、また、気づいたら耳の痛いことでも言ってくれるでしょう。何よりもあなた自身がその発言を受け止めやすいと思います。

繰り返しになりますが、自分が変わるべき時期に差し掛かっているにも関わらず、従来の焼き増しをしているだけでは新たな自分に変わることが出来ません。

古い自分のままで古いやり方で、古い発想のチャレンジをしてしまうのです。自分としては新たな自分に変わろうと行動をしているつもりなのですが、今までと同じことをしているのです。これが変わろうと思って積極的に行動しているのに人が変われない時の行動パターンです。

行動できない時もある

また、変わりたいと思っていても、動けない時もあります。変わるべきだと言う気持ちはあるけれども、何をしたいのか分からないことや、仕事の責任や家族など公私ともに背負っているものが足枷になって動けないということもあります。

そして、何よりも、そもそも人間と言う生き物は、変化を恐れるものです。現状から変化することに対して、心の内には防衛反応が生じて変わることに抵抗するものです。それが普通です。人間も他の生き物と同じで生き延びる為に安全、安定を求めています。ですから、変わることに対してあまり積極的な気持ちになれないのは普通ことです。

有名なマズローの欲求5段階説でも、第一段階は食欲や睡眠欲など生きていく為の本能的な欲求で、第二段階が安全欲求です。安心して安全に暮らしたいという欲求で、心身の安全だけでなく経済的な安心も含めて安定した生活を求めています。

人間の欲求の5段階のうち、初めの2つの段階が生きたい、安全に生活したい、という安定を求める欲求なのですから、あなたが変わりたいと思いながらも、リスクを取って転職や起業をすることが出来ないということは決して臆病なのではなく、人間として自然な反応です。

更に、その次の第3段階の欲求は社会的欲求です。これは人と繋がっていたい、集団に所属していたいという欲求です。自分が所属している会社、慣れ親しんだ組織や繋がっている人々との関係から抜け出すことに対して知らず知らずの内にブレーキがかかってしまうのは無理ありません。

転職への心のハードルをマズローで見てみると

例えば、自分のキャリアアップの為に転職を考えたとしても「会社の皆からは何て思われるかなぁ…」「お世話になった人々に迷惑を掛けてはいけない」「新しい会社で自分が受け入れられるかどうか分からない。不安だ」といった心の声が聞こえてきて、転職を断念してしまう人は多いです。誰かと繋がっていたい、何らかの組織やコミュニティに所属していたいという社会的欲求を満たしたいと思うのが人間という生き物です。

でも意志を強く持って、そんな迷いも断ち切って転職活動をしたとします。ところが、内定を取得して現職の上司に退職を申し出たら、「実は君のことを大変高く評価していたのだよ。だから、次の人事で昇格させて年収も引き上げるよ」と自分の価値を認められて第二段階の承認欲求を満たされてしまったらどうでしょうか?

会社で自分が十分に認められていなくて正当に評価されていないという不満が転職をしたい私的な理由であったとしたら(これ、多いです)、転職する必要が無くなってしまいますね。

加えて、「君がやりたいことやチャレンジしたい気持ちは良く分かった。社内で好きな部署に異動させてあげるから退職は思いとどまらないか?」と提案されたら、マズローの第一段階の欲求「自己実現の欲求」まで満たされる道が開きますね。もう、転職する理由は無いと感じても無理はないでしょう。転職したい意欲が消え去ってもおかしくはありません。

マズローの欲求五段階

マズローの欲求五段階説の図を見ると分かりやすいですが、自己実現をしたくて新しい自分に変わろうと思っても、安心や安全を求める気持ちを攻略して(第五、第四)、慣れ親しんだ人々や組織との繋がりを振り切って(第三)、変わる自分を認めてくれる人がいないことをものともせず(第二)、自己実現の為に(第一)自ら変わろうとするのは大変ですね。クリアしないといけない欲求が4段階もあります。

それらを乗り越えてやっと変わる為に行動出来ることなんて、人間にとっては不自然なことです。安全が脅かされることや(解雇やブラック労働、ハラスメント等)、孤独に耐えられなくなる(フリーランスで孤立、等)などの状況が生じない限りは、変わる為に動くことなんて普通は出来ません。あなたが変わりたいのに動けないことは当然のことなので気にする必要はありません。

新しい自分に変わる為には明確な目的意識が必要

ただし、もし本当に変わりたいと思って動きたい場合は、明確な目的と強い意志を持って意識し続けて行動すれば変わることが出来ます。逆に言えば、自然な自分の感情に任せていては余程のことが無い限りは変わることが出来ません。

自分にとって不自然なことをするのですから、意識し続けないと無理ですよね。目的意識を強く持ちましょう。

ただ、人は変わりたいのに動けない時もあるし、むしろそれが人間として自然な反応であるので、もしあなたがその様な状態で悶々としていたとしたら心配する必要はありません。

まずは「あー、私は変わりたいけど動けず悶々としているのだな」と自分の現状を在りのままで受け止めておけば良いでしょう。

(2023年8月21日)
山本恵亮
1級キャリアコンサルティング技能士

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