見出し画像

ヘルプ商店街【ショートショート】

大学生から上京し、そのまま就職したぼくは、地元の商店街を久しぶりに訪れた。

幼い頃は毎日のように足を運んだ商店街だ。
晩御飯のおかずに困れば惣菜屋、
鍵を無くしたら鍵屋、
旅行に行くときの飼い犬の世話はペットショップ、
どんな些細な困り事もここに来れば解決したものだ。

だが、久しぶりの商店街は、思い出とかけ離れていた。
人通りはない。すっと、黒猫が通りを横切る。
ほとんどの店にはシャッターが下りている。
人々の声は聞こえず、昼下がりにもかかわらず、いまだに眠ったままのような、商店街の姿に愕然とした。

「おう、久しぶりだな」

肉屋のおじさんだ。中高生時代、体の3分の1はおじさんのメンチカツだったといっても過言ではない。

「どうしたんだよ。こんな商店街、らしくないじゃんか!」

挨拶も礼も差し置いて、きつい言葉が飛び出る。

「あれを見ろよ」

示された先に聳え立つ摩天楼。
母が最近できて便利だと言っていたデパートだ。

「あいつができてから、みんなあっちにいっちまってよ」

おじさんは続ける。

「みんな、うちの店をどうしてくれるんだ、って訴えに行ったんだ」

訴えに行った人は翌週には、デパートの中に店を開き直したらしい。

「辛いのはだれもうちらの『商店街』を助けてくれとは言わなかったことなんだよな…」

(531文字)

#毎週ショートショートnote



410文字って無理じゃないですか?
先週から参加し始めたこの企画。他の方の作品を見て感動し、自分の作品を見て文才の無さを憂う、そんな週でした。

今週も無事大幅に字数を超えてしまいました。
週の半ばに書いて、推敲して文字を削る作業を来週はしてみようかな。

拙い作品を読んでいただきありがとうございます。
来週のお題も楽しみにして頑張ります。

ではまた。


たらはかに様の企画に参加させていただいています。
素敵な企画をありがとうございます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?