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企業の本音と建前

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恐怖の面談初日

いよいよ、お客様との面談の日がやってきました(面談の経緯は前回の記事をご参照)。

当時勤務していた大阪のビルは川沿いにありまして、いつも小さな橋を渡るんですね。この橋、小さい割に多くのビジネスマンが行き来するので、とっても揺れるんです。

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ぼく「あっ、目まいする。今日の面談キャンセルかな。・・・違う、橋が揺れてるだけだ。あー、目まいってことで早退したい!!」

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ぼく「先輩!、(今日は体調が悪いっす、、とは言えない)」

先輩「何だ?」

ぼく「何でもないっす、面談頑張りまっす!こっからっす!」


お客様のご自宅を訪問

「目まいによる体調不良&面談中止」の作戦も空振りに終わり、お客様のご自宅に向かいます。とってもビビりながら向かいましたが、そこにはご高齢のおじいさんがいました。

お客様「わしは一時停止で止まったんだが、相手が急に現れて当たってきたんやー」

ぼく「・・・」

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ぼく「それは大変でしたね。急に出てきたのでしょうか」

お客様「そうや!一時停止で止まった時に相手は居なかったけど、少しずつ前に出たら、急にすごいスピードで当たってきたんや。相手が悪いんや」

ぼく「・・・」

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とりあえず、私は色々と諦めて帰社することにしました。お客様からすると「急に出てきた」という感覚になってしまいますが、相手の車がワープする訳ではありませんので、要するに見えていなかった可能性が高いと言えます。この事故形態の場合、お客様の過失割合が80%程度になりますが、今回のように「止まったのに相手が急に出てきた」と仰るお客様の対応には非常に苦慮します。

交通事故の示談にあたっては、様々なことを交渉のうえで確定させる必要があるのですが、そのうちの大きな要素である過失割合について、簡単にまとめると以下のプロセスが必要になります。

①事故状況の確定(止まってない、スピード出てた等)
②確定した事故状況の法的評価(「8割くらい過失が出る」等の評価)
③上記①②に関するお客様のご納得・同意
④相手側の同意

今はドライブレコーダーも普及してきているので、少なくとも「①事故状況の確定」から「②事故状況の法的評価」までの苦労は徐々に減るかもしれません。とはいえ、どんなにテクノロジーが進化しても、「③お客様のご納得・同意」以降の壁の高さが低くなるとは考えられないので、損害サービスは依然としてハードな仕事だと思います。


こんな話は聞いていない?

この辺りから、少しずつ疑問に思うことがありました。「就職活動のときって、パンフレットやHPで示談の話は出してないよなぁ。ちょっとは出しているから、嘘は言ってないけど。とはいえ、しっかりと情報収集せずに『給与と人の良さ』だけで会社を決めた自分も悪いんだけど・・・」

これに対して、社内の多くの人は「あんなの、綺麗な仕事を全面に載せているだけで、実際は違う(笑)。損保って実際は泥臭い仕事がほとんどだからね」と半笑いで言う人が多かったのですが、これって「笑」で済まされるようなことなのでしょうか。

新入社員のうち、概ね8割強は泥臭い現場への配属となり、多くの若者は事前期待とのギャップに直面し、一定数は退職してしまいます。ここで、「最近の若者は・・・」とは言って思考停止をせずに、こういった事前期待とのギャップがなぜ起きるのか考えてみたいと思います。

まずは、何といっても企業側の採用マーケティングではないでしょうか。企業側も優秀な人材を獲得するために、他企業との過酷な戦いを強いられています。このような採用競争下で「当社は、配属ガチャで8割は泥臭い現場へ配属となります。その分、給与は他業界より少々良いです!」等は面と向かって言えず、市場価値高めなコーポレート系の仕事を全面に出さざるを得ません。これは、多くの日本型終身雇用/メンバーシップ型企業において同様ではないでしょうか。

ところで、このような宣伝は「お祭りの屋台クジ引き」に似ていませんか。実際には当たる可能性が低いものを前面に置いて「当たると、スーパーファミコン(←すみません古くて)が貰えるんだよ!」と宣伝し、クジを引くと裏側から「はい、大当たり~」と言って風船を渡されるものです。(余談ですが、悪質な屋台は当たりクジが入ってないらしいですね)

くじ

子供の時は「スーファミ(スーパーファミコンの略)当たるかも!」と期待して何度もトライするんですけど、徐々に現実を知って「あんなの滅多に当たらないんだよ」ということに気付き、大人の階段を登るのです。

就職活動も同じく、日本の各企業はコーポレートや企業営業等のジョブをHPやパンフレットで大々的に宣伝をし、学生側は「こんな仕事するんだぁ」と思って入社したら、配属ガチャで思いどおりにならず、数年経つと本人も「あんなの、綺麗な仕事を載せているだけだよ」と半笑いで言う訳です。

採用パンフレットやHPにおいて、私のような自動車損害の従業員が、怖いおっちゃんとバトルして泥臭く解決するような場面は全隠しなので、悲しい限りです。本当に頑張ってやっているんだから、こういった部分を載せて欲しいですけどね(笑)


情報化社会の進展が、企業と個人の情報格差の解消をもたらす

しかし、今日の情報化社会の進展により、個人の情報収集力が格段に上がりました。令和の時代は、前述の採用だけに限った話ではなく、「企業ー個人」間における企業側の優位性の源泉であった情報格差はますます解消に向かうでしょうし、この流れに少しでも貢献したいという想いからも、noteを書いています。

なぜなら、学生側も「8割は泥臭い現場に行く企業に入社したんだ!」という点を理解して内定獲得&入社をすれば納得感もあると思いますし、雇用のミスマッチも減ると思います。もちろん「OB訪問等で情報収集をするべき」という話もあるでしょうが、OBによって話の質はバラバラでしょうし、更に「余計なことを言って人事に刺されたら怖い(社内的には『バツが付く』と言います)」ということもあって、OBによっては話す内容も保守的になってしまいます。(少なくとも私はそうでした)

いずれにせよ、先日、経団連が「終身雇用の見直し」に言及したように、近年の日本はジョブ型とメンバーシップ型の過渡期ですから、学生だけではなく従業員も今まで以上に情報感度を高くして、厳しい目で企業を選定していく必要がある一方で、企業側はより高度な専門人材を求めていくという流れになるのではないでしょうか。

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そして突然の異動

その頃の私は、良くも悪くも目の前の仕事をただ「がむしゃら」に頑張っており、自動車保険のことを自主勉強したりして、ある程度は交通事故の保険対応も慣れてきました。

そして配属から4か月後、急に課長に呼び出されました。

課長「今日飲みに行こう」 ぼく「課長は飲みが好きやな~」

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課長「ところで、先日面談に行った事案はどうなったの?」

ぼく「それが、息子さんが出てきてくれて、そこから先はスムーズに話が進みました!」

課長「それは良かったな。ところでやなぎ、実は異動なんだ、姫路へ」

ぼく「ひっ、姫路って、、、どの辺りだったかな?」

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(続く)

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