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【デイヴィッド・ホックニー展】色を浴びる、iPadで描かれた絵を印刷した展示物をiPhoneで撮る。



色彩豊かな人

 デイヴィッド・ホックニーって、彼自身が“絵になる人”だったんだな。彼の肖像画や写真を見た時にそう思った。
 チェック柄の黄色いジャケットにチェック柄のハンチング、真っ青なカーディガン、まん丸黄色のメガネ……。そりゃこんなに色彩豊かな人だから、描く絵もカラフルだよなぁと。


画材が変わっても、彼の絵は変わらない

 展示は、東京都現代美術館の三階と一階にて。撮影可能なのは一階のみで、三階は絵の具で描かれた作品もあればiPadで描かれた作品もある。

 出迎えてくれたのは、三階に着いた瞬間目に飛び込んで来る二輪のラッパスイセンの絵。最初の章「春が来ることを忘れないで」を飾る絵だ。
 どれだけ見ても筆運びの凹凸がないなと思ったら、iPadで描いた絵だった。

 「自画像」の章では、彼自身も含めた友人達の自画像がたくさん。三階の展示室は大小様々な絵や映像作品なんかもあって、隣の展示室から別の展示室を眺めるのも趣深くて楽しかった。


 ところで、ふと彼の絵について不思議だと思ったことがある。それは、筆で書いてもiPadで描いてもそんなに差異を感じないところ
 絵を描く人にとって、画材が変わる影響はどれだけ大きいんだろう? 描き心地は変わるだろうし便利さ・不便さもあるだろうけど、構図や心構え的といった精神的なところに影響はあるのかな?
 誰にだって多少は画材に影響を受けると思うけど、デイヴィッド・ホックニーは絵の具とiPadの境目に気付いてないのかもしれないというくらい、二つの画材をシームレスに行き来しているように見えた。

こちらは撮影可能な映像展示。左の状態から右の絵が出来上がる。その過程を見てるはずなのに、なんでこうなるのかわからない……。絵が上手い。

 

iPadで描いた絵を印刷したものをiPhoneで撮る不思議

 大雑把に見えて繊細、だけどおおらかで瑞々しい。デイヴィッド・ホックニーの絵は見ていて飽きない。
 だから、一階に展示されていた100×9000cmの大作『ノルマンディーの12か月』は何周しても楽しかった。

こんな感じで始まって……
ぐるっと回って……
また冬が来て終わる大きな絵。

 こちらの作品は撮影可なので、気に入った部分や全体像を何度かiPhoneのカメラで撮りながら、ふと気付く。
「デイヴィッド・ホックニーがiPadで描いた絵のデータが紙の上に印刷されて、それをiPhoneで撮影したデータが私の手元に残るのか……」
 なんか不思議な体験だった。デジタルとアナログの間を自由に行き来している彼のように、彼が描いた絵もまた色んな形に変化へんげして愛され続けるんだなぁ……と。


大きな絵の前に立つ度に感じる開放感

 今回の展示の中で、特に大きかった作品は二つ。一つ目はこちら。

 大きな絵の前に立つと、なんかもう何もかもから解放されたような心地になる。かつてここに画家が立っていて、筆を振るっていた過去だとか。誰かがこの絵を運んできた苦労だとか。色んなことが巡り巡って、偶然私がこの絵の前に居合わせた。そんな奇跡と言うにはあまりにもありふれた瞬間に、頭がパーンと広がるような気持ち。絵の中に吸い込まれたような不思議な感覚。
 この『ウォーター近郊の大きな木々またはポスト写真時代の戸外制作』の前でも、同じような気持ちになった。まるで原寸大の木の前に立っているような心地がしたけど、よく見るとそこまで精緻に描かれているわけではない景色がまた面白い。

 もう一つは撮影可の作品、『春の到来、イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート』。ピンク色の壁が印象的な展示室に飾られていた。

キービジュアルにも使われていたので、見覚えのある方も多いのでは。
周りの絵も大きい。左の馬の標識が私は結構好き。作品名は『5月30日』。
人と比べると一つ一つの絵の大きさがよくわかる。

 キャンバスいっぱいに広がる彼の色彩で、自分の視覚が満たされるのが本当に心地いい。ポップさや親しみやすさもありつつ、色で心が満たされる不思議な展示だった。


特に注意が必要なポイント2つ

 現地で感じた、注意した方がいいなと思ったのはこちらの2つ。(以下で取り上げた東京都現代美術館の投稿と重なる内容で申し訳ないが、写真は撮りたい人だけが該当する注意事項である一方、ここで取り上げた2つは来場者全員が対峙することなので、体感的なものを書き残しておきたい。)

①展示室内は結構寒い

 公式からもアナウンスされているように、展示室内の温度は21℃設定。

 入り口すぐでブランケットを借りられるのだけど、21℃がどんなものかイメージ出来ず、まぁ平気でしょと思ってスルーしてしまった。(東京都現代美術館は電車の最寄り駅からやや距離があるので、暑い中歩いて来ると余計に感覚が鈍る。)
 いざ展示室に入ったら、思った以上に寒かった。私は七分丈のシャツの上に夏物としてはやや厚いカーディガンを羽織っていたがそれでも寒さを感じた(廊下やエスカレーターに出ると暖かいけれど)。冷房が苦手な人は、温度調節がしやすい服装で来る・ブランケットを借りるなど工夫をしてほしい。

➁グッズ売り場は入場券がないと入れないエリア(再入場不可)

 図録を除くホックニー展オリジナルグッズは、展示会場内にあるショップでしか購入出来ない。

外から見るとこんな感じ。

 それ故再入場も出来ない仕組みなので、欲しいけれどどうしようかな……と悩んでしまった際には、とことん悩んでからショップを出て欲しい。カラフルで心躍るグッズばかりなので、目移りしてしまうこと間違いなしだ。

私は横長のポストカードとホックニーの自画像クリアファイルを購入。牧草ロールがある風景、気に入っていたので、この部分がポストカードになっていたのは嬉しかった。


開催概要

 デイヴィッド・ホックニー展は、東京都現代美術館で2023年7月15日(土)- 11月5日(日)の期間にて開催。また、サマーナイトミュージアムの日(8月18日・25日)は21時まで開館しているので、昼とは違った夜の美術館を堪能するのもまた一興。

私は日中に訪問。暑いのが苦手な人は、夜間に利用するのも手かと。

 その他最新情報は、東京都現代美術館公式サイトや美術館のSNS、ホックニー展のSNSをご確認頂きたい。



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© 2023 Aki Yamukai


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