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2023年の本ベスト約10冊
今年も色々面白そうな本がたくさんありましたね。読みたかった本を全部読めたわけではありませんが、それは来年のお楽しみ。
今回は、2023年に読んだ同年刊行の本の中から、約10冊を選んでみました。
※上半期ベストは刊行年問わず約10冊を選んでいます。あわせてお楽しみ下さい。
※以下、読了順です。各タイトルに貼ってあるのは出版社公式のリンク、概要はすべてそちらから引用しています。
また、該当する本について取り上げたエッセイがある場合は、〈関連エッセイ〉としてご紹介しているので、ご興味あれば覗いてみて下さいね。
1.すべての、白いものたちの
ハン・ガン 著/河出文庫
〈概要〉
アジア初のブッカー国際賞作家による奇蹟の傑作が文庫化。おくるみ、産着、雪、骨、灰、白く笑う、米と飯……。朝鮮半島とワルシャワの街をつなぐ65の物語が捧げる、はかなくも偉大な命への祈り。
生後すぐに亡くなった姉をめぐり、ホロコースト後に再建されたワルシャワの街と、朝鮮半島の記憶が交差する。
すべての、白いものたちの
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) February 25, 2023
ハン・ガン 著/河出文庫
“白いもの”の中を彷徨う、アンビエントミュージックを聴くように読んだ一冊。エッセイ、小説、散文詩…どれでもあってどこにも属せない浮遊感。だけど最後、自分が元居た場所に帰って来たと気付いてハッとする。それさえデジャブかのような。#読了 pic.twitter.com/GJX81TErad
2.外国語の遊園地
黒田龍之助 著/白水社
〈概要〉
はじめて手にする海外製品はときになぜかなつかしい。旧ソ連や東欧で出合ったさまざまな物をとおして、外国語の魅力を語る「物語」。
外国語の遊園地
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) March 28, 2023
黒田龍之助 著/白水社
言葉を探求する人のエッセイ好きかもな〜と思っていた所で本書を読み、やっぱり好き!となった。言葉を通して世界を見る、純粋でほわっとしたあったかい想像力、言葉との冒険譚。家にあるマルタの新聞やタイの硬貨を引っ張り出して眺めてしまう。#読了 pic.twitter.com/6XBx64dt83
3.オレンジ色の世界
カレン・ラッセル著/河出書房新社
〈概要〉
悪魔に授乳する新米ママ、〈湿地遺体〉の少女に恋した少年、奇妙な木に寄生された娘、水没都市に棲むゴンドラ乗りの姉妹……。不条理なこの現実を生き残るための、変身と反撃の作品集。
オレンジ色の世界
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) June 24, 2023
カレン・ラッセル著/河出書房新社
どの話も面白くて、永遠に続いて欲しかった本。山奥の幽霊、野生の木、沼地の女の子、竜巻、棺の中の遺体、荒海の死角…。人ではない/人智を超えた/人の想像力から生まれた存在との“中間地点”の関係を描く物語にゾクゾクした。とても好き。#読了 pic.twitter.com/HpgnGoyjTk
4.シャーロック・ホームズとミスカトニックの怪
ジェイムズ・ラヴグローヴ 著/早川書房
〈概要〉
精神病院に収容された男が口にしたのはクトゥルーのルルイエ語だった。彼の身にいったい何が? またもホームズが古き神々に挑む。
シャーロック・ホームズとミスカトニックの怪
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) July 7, 2023
ジェイムズ・ラヴグローヴ著/早川書房
楽しみにしてたホームズvsクトゥルー第二弾。大胆な二部構成、第一部で十分興味が湧いた状態で第二部に進めたので楽しめた。最後の展開はこれだよぉ!と心の中で大盛り上がり。本作も実にホームズだった。#読了 pic.twitter.com/wRkf887JfO
5.怪獣保護協会
ジョン・スコルジー 著/早川書房
〈概要〉
映画のゴジラは、並行宇宙の地球〈怪獣惑星〉からこちらの地球にやってきた巨大怪獣がモデルだった! ジェイミーはひょんなことから〈怪獣保護協会〉の一員となり、もうひとつの地球でこの怪獣たち相手に大奮闘することに!? 『老人と宇宙』著者の冒険SF!
怪獣保護協会
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) July 20, 2023
ジョン・スコルジー著/早川書房
ゲラ読み、面白くてびっくりしてたらあっという間に読み終えてた。私はこういう怪獣モノが好きだったんだなぁ…。御し切れない怪獣をどう保護するのか、ハラハラわくわく楽しめる。私の推しはヘリのパイロットです。https://t.co/YGcWMcOJfX#読了
「怪獣保護協会」はかなり読みやすいから、“怪獣は好きだけど翻訳物が苦手”な人でも楽しめそう。後、早川書房公式ツイッターで触れられてた“書かれていないあること”の意図と合っているかは謎だけど、私なりに“明記されてないが故に楽しめた”点は2つあって、ある意味で新時代のSFだなぁと。#読了
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) July 20, 2023
〈関連エッセイ〉
6.奇病庭園
川野芽生 著/文藝春秋
〈概要〉
奇病が流行った。ある者は角を失くし、ある者は翼を失くし、ある者は鉤爪を失くし、ある者は尾を失くし、ある者は鱗を失くし、ある者は毛皮を失くし、ある者は魂を失くした。
何千年の何千倍の時が経ち、突如として、失ったものを再び備える者たちが現れた。物語はそこから始まる。
奇病庭園
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) August 13, 2023
川野芽生/文藝春秋
果てしなく美しい劇薬。見目と精神の美醜は重ならず、“美醜”という概念自体が醜く思える。一文ごとに微睡のような毒が香り立ち、織り重なって結末を迎える。『無垢なる花たちのためのユートピア』『月面文字翻刻一例』に続き、なくてはならない毒がまた増えた。#読了 pic.twitter.com/4SKcpOp4MC
〈関連エッセイ〉
7.グレート・サークル
マギー・シプステッド 著/早川書房
〈概要〉
1950年代に消息を絶った女性パイロットをめぐる壮大な歴史小説
幼い頃から空の世界に魅了されていたマリアン。空軍での従軍を経て、生涯の夢である地球一周飛行挑戦の途上、彼女は消息を絶った──50年後、ハリウッド映画でマリアン役を演じるハドリーは、明かされることのなかった秘密に近づいていく。
『グレート・サークル』
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) September 8, 2023
マギー・シプステッド著/早川書房
1914年生まれの女性飛行士と、彼女を演じる女優が軸のお話。ふとした出来事が未来に繋がるのが実に見事で、こうして歴史は紡がれるんだ…と毎度ハッとした。飛行機好きにはたまらない、ただ空を求めた人間の生き様。これは名作…!#読了 pic.twitter.com/gras4c0e71
『グレート・サークル』の作中で描かれる愛のようなものはどれもぎこちなくて、揺るがないことほど名前がないのがリアルだった。愛によく似たグロテスクな支配欲、説明し難いけど確かにある何か、複雑な家族への想い、甘酸っぱいだけじゃない初恋。時代によって変わるもの、変わらないもの。#読了
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) September 8, 2023
解説込みだと826頁(写真は比較のミンティア)。こんなに分厚いのに、文章の読みやすさと「この人たちどうなっちゃうんだろう…?」という好奇心が湧く物語の力でぐいぐい惹きつけられて全く飽きなかった。物語から目を逸らすのが惜しい本。『グレート・サークル』、読めてよかった。#読了 pic.twitter.com/CkFQCBuFSj
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) September 8, 2023
後、『グレート・サークル』はディズニーシーのアトラクション『ソアリン』の世界観が好きな人にぴったり。『ソアリン』で語られるカメリアのモデルとなった実在の飛行士、アメリア・イアハートについて『グレート・サークル』で多く言及されてる。読了後は『ソアリン』の印象が変わる…かも?#読了
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) September 8, 2023
8.テムズとともに 英国の二年間
徳仁親王 著/紀伊國屋書店
〈概要〉
1983年から約2年間を過ごされたオックスフォード大学での日常生活や研究生活、音楽活動、ご学友との交流、登山やテニスなどのスポーツ、英国内外への旅……。
内側から英国を眺め、外にあって日本を見つめ直した「何ものにも代えがたい貴重な経験」。
テムズとともに 英国の二年間
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) September 17, 2023
徳仁親王 著/紀伊國屋書店
一国のプリンスが“自由な一学生”で居られた日々を美しい文章で回顧する暖かなエッセイ。誰にも青春はありいつか終わる。世界の輝きに心躍り、大人になる切なさも感じた。イギリス映画・小説ファンや川の歴史に興味がある人にもお勧め。#読了 pic.twitter.com/dt6mEKKnvo
〈関連エッセイ〉
9.わたしたちの怪獣
久永実木彦 著/東京創元社
〈概要〉
わたしは踏みつぶされるかもしれない。ミサイルに焼かれるかもしれない。それでいい。一番の怪獣は、わたしなのだから――。
『七十四秒の旋律と孤独』の著者が描きだす、現実と地続きの異界。
わたしたちの怪獣
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) October 11, 2023
久永実木彦 著/東京創元社
日頃、“意思や意図を持たない対象に人間が思いを重ねて感情を抱く”っていう人間らしい現象を見るのが好きなので、表題作や最後のお話がじんわり沁みた。人は未知のものにこそ何かを重ねて文脈を作ってしまう生き物…。https://t.co/A1KOQu3Rdi#読了
私はSFを読む時に、その世界で生きてる人の生き様を知りたいと思う部類の読者なので、「わたしたちの怪獣」収録作はどれも楽しかった。ままならない人生に突然現れる未知や転機としてのSF、好きです。そして著者あとがきでMCU風に帰還を予告されたあのヒト、帰ってきたらいいなぁ。#読了
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) October 11, 2023
10.シャーロック・ホームズとサセックスの海魔
ジェイムズ・ラヴグローヴ 著/早川書房
〈概要〉
1910年、ホームズとワトスンがクトゥルーの古き神々と初めて対決してから30年後。闇の勢力に仕えるドイツ人スパイが暗躍し、ヨーロッパが戦争へ突き進む中、海辺のサセックスで隠退生活を送るホームズは、三人の女性の失踪を調査することに。事件の陰には、邪神としてよみがえった仇敵モリアーティがいた!? ホームズは多大な犠牲を払い、最後の戦いに挑むが……。驚異のホームズ×クトゥルー・パスティーシュ、第三弾!
シャーロック・ホームズとサセックスの海魔
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) December 3, 2023
ジェイムズ・ラヴグローヴ著/早川書房
ホームズ×クトゥルーのパスティーシュ3部作、遂に終わってしまった…。女性たちの失踪、邪神の企て、不気味な神殿。こんな世界観なのに最後までホームズしてたな〜!からのオチでヒェ…となった。好きです#読了 pic.twitter.com/UCvEPlcWvJ
11.8つの完璧な殺人
ピーター・スワンソン 著/東京創元社
〈概要〉
ミステリー専門書店の店主マルコムのもとに、FBI 捜査官が訪れる。マルコムは以前、“完璧な殺人”が登場する犯罪小説8作を選んで、ブログにリストを掲載していた。ミルン『赤い館の秘密』、クリスティ『ABC殺人事件』、ハイスミス『見知らぬ乗客』……。捜査官は、それら8つの作品の手口に似た殺人事件が続いているというが……。ミステリーを心から愛する著者が贈る傑作!
8つの完璧な殺人
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) December 8, 2023
ピーター・スワンソン著/東京創元社
本屋の店長のブログを元にした連続殺人という導入に引き込まれ、これ解決するの?と掴めそうで掴めない空気にオロオロし、終わりを静かに見届ける。本作も、底冷えする“人の過去の暗がり”の立体感が見事だった。積読が増えるミステリー。#読了 pic.twitter.com/1a86em56IZ
12.ナイフをひねれば
アンソニー・ホロヴィッツ 著 / 東京創元社
〈概要〉
「われわれの契約は、これで終わりだ」彼が主人公のミステリを書くことに耐えかねて、わたし、作家のホロヴィッツは探偵ホーソーンにこう告げた。翌週、わたしの戯曲を酷評した劇評家の死体が発見される。凶器はなんとわたしの短剣。かくして逮捕されたわたしにはわかっていた。自分を救ってくれるのは、あの男だけだと。〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズの新たな傑作!
ナイフをひねれば
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) December 9, 2023
アンソニー・ホロヴィッツ著/東京創元社
洋画や演劇好きには嬉しい要素多め、メタ的に犯人の察しはつくのに経緯がまるでわからずハラハラ。全てが繋がったスッキリ感とほろ苦さはシリーズ1かも。このシリーズ、事件が起き危機が迫っても暗くなりすぎない所が好きです。#読了 pic.twitter.com/9EcJtPuJ5B
13.シャーロック・ホームズとジェレミー・ブレット
モーリーン・ウィテカー 著 / 原書房
〈概要〉
映像の世界でも愛され続ける名探偵ホームズ。数々の名作が存在するなか、決定版ともいえるホームズを演じたのがジェレミー・ブレットである。作品について本人・共演者・制作陣の言葉と、百点以上のカラー図版とともにたどる。
「シャーロック・ホームズとジェレミー・ブレット」をやっと買えた😭嬉しい、彼の名前が題名についてる本を日本語で読める幸せ。カラー図版たくさんでこの分厚さだなんて…ありがとう…。本全体のデザインが本当に美しくて、中の表紙も格好いいんだわ…#今日買った本・届いた本 pic.twitter.com/nQs8mKuZO5
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) December 3, 2023
シャーロック・ホームズとジェレミー・ブレット
— 矢向 亜紀 / やむかい あき (@AkiYamukai) December 10, 2023
モーリーン・ウィテカー 著/原書房
最高のホームズ俳優の真の姿に迫る、彼への親愛に溢れる本。終わりの方や訳者あとがきはボロボロ泣きながら読んだ。ドラマは何度も円盤で見たけれど、改めて本書を手に通して鑑賞したい。素敵な本を有難う…#読了 pic.twitter.com/oXyUKzQR6e
終わりに
自分は海外ミステリーやSFを読みがちなのですが、2023年は普段ちょっぴり遠く感じていたジャンルに手を伸ばして、好きな本が増えた年でした。幻想小説、短歌・俳句、エッセイ……。著者の出身地も広がったと思います。
最初から日本語で書かれた本も、例年より多く読んだ気がします。やっぱりこう、言葉の産地直送といった雰囲気があって心と脳に染み渡りますね。
また、2023年は私にとって怪獣元年と言いますか、怪獣にまつわる作品を読んだ珍しい年でした。SFと一言に括っても、色んな題材があり何をメインに描写するのか作品ごとに異なって、面白いなぁと改めて思った次第です。
更に、シャーロック・ホームズ関連の本をたくさん読めたのも思い出深いです。クトゥルー×ホームズというパスティーシュ、かなり変わり種ではありますが自分が好きな名探偵の活躍ぶりに心躍らせた年でした。ジェレミー・ブレットについては言わずもがな。
2023年も好きな本がたくさん増えました。2024年も好きな物語・ことばにたくさん出合いたいものです。
最後に、今年読んだ本の感想ツイートまとめを置いておきます。
それでは、2024年にまたお会いしましょう。
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