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「女子大生、車に住む」宮本芽依がバンライフで示す生き方の可能性

「女子大生、車に住む」一度見たら忘れないチャンネル名を引っ提げ、SNSでバンライフの魅力を発信する人がいる。現役大学生で、バンライファ―を目指す宮本芽依さんだ。

バンライフとは、バン(貨物自動車)とライフ(人生)を合わせた造語で、家を持たず、車を拠点に生活すること。旅と暮らしを融合させたこの自由なライフスタイルが、現在欧米の若者を中心に人気を博している。彼らはベッドや机など生活するうえで最低限必要なものを車にのせ、好きな場所に移動しながら暮らすのだ。

2021年11月、彼女は長年の夢だったバンライファ―としての活動を叶えるべく行動を起こした。「やりたいことに年齢も性別も関係ない」とメッセージを掲げ、クラウドファンディングに挑戦。わずか1ヶ月で96名からの支援が集まり、約120万円の資金調達に成功した。

彼女は現在、2022年4月から始まる本格的なバンライフに向けて、バンの内装作業に励んでいる。もちろん、学業と両立しながらだ。

「自分の気持ちに素直になって行動したら、応援してくれる仲間が増えた」と話す彼女に、バンライフとの出会いやその魅力について尋ねた。

バンの内装作業に励む芽依さん

バンライフ、そして旅との出会い

開放感のある景色

芽依さんがバンライフと出会ったのは、高校1年生のとき。何気なく見たInstagramの投稿に、大きな衝撃を受けた。それは、雄大な自然のなかで、自由気ままに旅をしている海外バンライファーの写真だった。

「仲間と乾杯して和気あいあいと過ごす様子や、ベッドで自由に寝転ぶ写真を見て、いいなぁって」

何にも縛られないライフスタイルに心が躍った。

バンは、動く家だ。暮らしを快適にするため、ベッドや机、キッチンなどの生活に必要な設備を手作業で整えていく。持ち主一人ひとりの感性やこだわりが溢れるおしゃれな内装にも魅了された。

「いつか絶対にバンライフを実現する」

高校生の芽依さんに夢ができた瞬間だった。

海を眺めながらのんびり過ごす

大学に入ると、旅に明け暮れた。「お金はないけど、旅がしたい」。その一心から、ヒッチハイクで日本を半周した。

真っ白なスケッチブックにマーカーペンで行き先を書き、走る車に向かって必死に掲げる。乗せてくれた方のほとんどが、ヒッチハイクやバックパックで旅をした経験をもっていたという。

「出会った人たちはみんな、自分の人生に満足している人が多かったです」

宿泊代を抑えるために選択したヒッチハイクの旅だったが、人との偶然の出会いに魅了されていった。

移動中は出会った方々からたくさんの話を聞かせていただき、この人に出会えて良かったなと思い、別れがきて、そしてまた次の出会いが訪れる。こうした旅の感動を自分の心の中だけに留めておくのは、もったいない。そんな気持ちから、旅で出会う人たちに「夢」を尋ね、動画や写真に収めることにした。

なかでも印象に残ったのは、宮城県石巻市で出会った50代の男性。彼の家や職場は、東日本大震災の津波ですべて流された。

何もかもがなくなった。しかし、そんな大きな喪失感のなかでも、彼は逆境に負けなかった。「これからどんな人生を生きたいか」と自問自答し、ついにはやりたいことのために起業した。

年齢や置かれた状況を言い訳にせず、自分の人生を切り開いている姿がかっこよかった。

「彼のような大人になりたい」

芽依さんは、胸がギュッとなるような憧れを覚えた。

「いつか」は永遠にやってこない。いま行動しよう

中国留学中の芽依さん

昭和女子大学国際学部で中国語を専攻していた芽依さんは、大学4年生のときにダブルディグリー・プログラム(日本と海外の学位が取得できる)に参加。中国にある上海交通大学に、2年間の留学が決まった。

さまざまな人たちとの出会いに心を躍らせた留学生活だったが、新型コロナウイルスの影響により、現地での滞在はわずか半年で幕を閉じることに。

「観光はいつでもできるからと、勉強ばかりしていました。成績は上がったけれど、現地でしかできない経験を後回しにしてしまったことに、とても後悔しましたね」

芽依さんは帰国し、留学プログラムの残り1年半は、すべてオンライン授業に切り替わることに。この苦い経験が、彼女の行動を変化させた。

素敵な景色を見つけたら、車を止めて休憩


以前から夢見ていたバンライフも、“いつか”を待っていたら実現しないのでは。居ても立っても居られなくなった芽依さんは、すぐに軽バンをレンタルし、バンライフの準備をはじめた。

「とにかく、やってみよう」

マットレスや衣類、考えられる必要最低限のものをバンに詰め込み、一か月の旅に出た。

その日の自分が見たい景色を追い求めて車を走らせ、時間になればオンライン授業を受講する。大自然のなか、澄んだ空気を堪能しながら食事をとり、夜は星空を眺めて眠りにつく。

「食事は節約のため、カップ麺とかなんですけどね(笑)それでも、幸せです」

一日の終わりは星空を見る

自分らしく居られる

勉強や作業も、心惹かれる場所を選ぶ

海のそばで朝日を浴び、一日のはじまりにコーヒーを飲む。そんな小さな日常が、最高の贅沢だと溢れんばかりの笑顔で話す彼女。

「バンライフは、日常に隠れた小さな幸せを感じさせてくれます。他人の目線や意見を気にすることなく、自分の欲求に素直に従って行動できるんですよね」

自由闊達な印象を受ける彼女だが、かつてはSNS上で無数に飛び交う情報の渦に困惑していたという。

「本来、顔を合わせてするやりとりが、SNSの発展で相手の反応を無視した“一方通行”のやりとりになりました。受け取らなくていい情報を受け取って、落ち込むこともありましたね」

望まない情報を目にし、無意識に他者と比較するのは幸せな生き方ではない。そう言い切る芽依さんは、自身の感性や欲求を大切にし、取り入れる情報を一つひとつ丁寧に選びとっている。

「見たくない情報は、通知をオフにしています」。その結果、他者と自分を比較することはなくなった。

見たい景色に会いに車を走らせる

夢や理想を発信し続ける

「バンライファ―になりたい」

その夢を実現させるため、彼女は行動し続けた。

例えば、バンを購入する際は、SNSで気になるバンライファ―に自ら連絡をとり、アドバイスを貰いに行った。

知り合ったバンライファーは、みんな快く話を聞いてくれ、親身になってくれたという。理想のバンを探し続けながら、購入費用を工面するために、数々のアルバイトに励んだ。

そしてついに資金を貯め、バンを購入。彼女の愛車となったのは、中古福祉車両の「日産キャラバンE25」。この車にした決め手は、天窓だ。通常のバンに比べて多くの天窓があることで、車内に太陽光がこれでもかと降り注ぎ、開放感を得られるという。しかし、その内装費用まではアルバイトでは賄い切れなかったため、追加資金をクラウドファンディングで集めることにした。

SNSでは、購入に至るまでの悩みやトラブルまで赤裸々に発信した。夢の実現に向けて着実に進む彼女の様子を見た人たちからは、「応援しています」「僕もやってみようと思いました」そんなコメントが多く寄せられるようになっていた。

「やりたいことにはやりたいと声に出す。そうすると、自分に近い価値観の人が集まり、夢を応援してくれる仲間に囲まれるようになるんです」

彼女の周りに集まる人たちは、人の夢を笑わない。「芽依ならできるよ!」「絶対に叶う!」など、そんな前向きな言葉が飛び交うのだ。互いの夢を語り合い、応援し合える環境は心地よい。

「まだまだ、日本ではバンライフの認知度が低いです。自然と密接に関わりながら過ごすこの生活スタイルを、もっといろんな人に広めていきたいと思います」

学業と両立しながら、夢をひたむきに追い続ける彼女の姿は、かつて芽依さん自身がなりたいと願っていた、「かっこいい大人」そのものだ。


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