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読書録:新型コロナとワクチンの「本当のこと」がわかる本

ASIOSほか『新型コロナとワクチンの「本当のこと」がわかる本』(彩図社)
買ったのはコロナ禍全盛期の2022年だったと思うが、読了が今になったのは体調不良で本が読めなかったためである。
本書は新型コロナウイルス感染症とそのワクチンに関する様々な言説をファクトチェックした本である。メインライターを務めるASIOSは超常現象等を懐疑的に研究する団体で、今までにも様々なファクトチェック本を出している。これに専門的知見から名取宏、峰宗太郎、森戸やすみら錚々たる顔ぶれが参加している。
今回の新型コロナウイルスパンデミックでは、SNS上で科学的裏付けのない様々な言説が流れた。特に、ワクチンが異例の早さで開発されたこと、mRNAワクチンという新しい技術で作られたワクチンだったことから、ワクチンに対するネガティブキャンペーンが行われた。本書によると、そうした言説の出どころはわずか12人のインフルエンサーだそうで、SNS上における情報拡散の速さにゾッとした。人の口に戸はたてられないと言うように、噂は瞬く間に拡散する。無論、意図的にそれをばらまく仲介者がいるわけだが、以前のネット環境ではここまで大規模な情報拡散が起こったとは思えない。やはりSNSという、シェアが容易な環境だから起こったのだろう。これまでのインターネット世界は、検索エンジンを使って自分から情報を探しに行くのが常套手段だった。ノイズも多く、玉石混淆の情報を取捨選択するスキルが必要だった。一方、SNSではアルゴリズムの発達で(部分的にだが)情報のほうがこちらに流れてくる。その中で情報検索すると、関連情報が自動的に集まる。そうすると受動的な学習になり、自己洗脳が進む。それが陰謀論者の言う「目覚め」の正体である。
今回の新型コロナウイルスパンデミックは誤情報拡散のモデルケースとなったが、その中には全くあり得ない噴飯ものの情報から、一見、実際にありそうなものまである(後者が厄介である)。ようやく政府も情報統制に乗り出すようだが、言論の自由は命に関わるデマを流す自由ではないし、他人を誹謗中傷する自由ではない。これは声を大にして言っておきたい。
本書は新型コロナウイルスとワクチンについての言説を幅広く取り上げて精査している。SNSにのめり込んでいる人ほど、本書を読むべきである。洗脳されてしまうと戻ってこれなくなる。


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