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親魏倭王の仕事と経験

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私の仕事から生まれた記事をピックアップ。
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#文化財

文化財保護業務の実態

文化財保護業務の実態

地方自治体における文化財保護業務の実態というのは、学生にはほとんど知られていない気がする。地方自治体勤務ということは公務員でもあり、文化財保護業務以外の業務も多々絡んでくるが、本業となる文化財保護業務に絞っても、その少なくとも八割くらいは事務仕事である。日々発掘調査や整理作業に従事できるのは外郭団体(埋蔵文化財調査事業団など)勤務の場合だけだったりする(それでも事務仕事はつきまとう)。

地方自治

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出土遺物と不時発見遺物について

出土遺物と不時発見遺物について

発掘調査で出土した土器などを遺物というが、これはどうなるのだろうか。
まず、これらは遺失物扱いとなり、所轄警察署へ届け出る必要がある。その間、遺物は発掘調査主体(市区町村が実施した場合は市区町村)が保管する。その後、都道府県や政令指定都市などの教育委員会との協議で当該遺失物が文化財と認められると、それらの遺物は所有者が判明しないばあいは都道府県に帰属するが、引き続き発掘調査主体で保管されることが多

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「残念石」から考える「文化財とは何か」

「残念石」から考える「文化財とは何か」

先月、耳を疑うようなニュースが飛び込んできた。木津川市にある大坂城築城時の残石、通称「残念石」を大阪万博会場のトイレを含む休憩施設の建材に使おうというのだ。主催者側の説明では石そのものに手は加えないとしているが、千田嘉博先生をはじめとする考古学者や私を含む考古学専攻の学芸員からは反発が相次いだ。文化財は現状変更に制約があり、それを毀損すると文化財としての価値が失われてしまうからだ。今回の残念石の一

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