見出し画像

20歳の頃の自分を振り返り、今の自分に酔う話。

20歳の頃、某回転寿司チェーン店で僕は働いていた。チェーン店だけあって、アルバイトで80人くらいが在籍しており、同い歳だけでも10人はいた。

仲良くなった10人は、バイト終わりの深夜、一人暮らしの僕の家に集まるのが日課になっていた。バイト先から1番近かったのだ。

酒を飲んだり、ゲームをしたり、深夜2時に隣の部屋のカップルがおっぱじめているところを聞くために、男数人で壁に耳をこれでもかと当てつけて、静かにと無言で人差し指を口の前に立て合い、揃いも揃ってニヤニヤしたりしていた。

「そんなことするなよ、恥ずかしい」と同級生に対して僕は叱りながらも、1人になった別日にはしっかりと聴いていた。マンションの壁が薄いのがいけないのだ。しっかりとしたムッツリスケベである。

皆で朝まで騒いでは、一限に間に合わないと死にそうになりながら各々の大学に向かっていた。そんなバカをやっていたが、単位取得が怪しくなってくるとバイト終わりに真っ直ぐに家に帰るようになった。根は真面目なメンバーが揃っていたのだ。

大学生らしいことは数ヶ月で終わった。疲れて寝たい夜でも家で騒がれて、僕は機嫌が悪い時が多かったが、部屋の中で吐くやつがいなかっただけでもマシだと思おう。ベビースターラーメンを部屋一面にばら撒かれた時は、さすがに温厚な僕もキレ散らかしたけども。

皆ものすごく良い奴であった。そして僕以外は、本気でアルバイトに取り組んでいた。社員でもないのに売り上げやらシフトの調整やら、1日の目標立てなどをして周りを引っ張っていた。
なぜそこまでする必要があるのかと、皆についていけなくなった。たった900円程度しか貰っていないのだ、目の前に寿司だけ流しておけばいいだろうと思っていた。

それでも皆は集えば、どうやったらもっと作業効率が良くなるだとか、今のメンバーで最強の布陣を練るとしたらどうなるかなど、飲みの席で話し合っていた。

同級生が作り出した最強のフォーメーションには、さして重要では無いポジションに僕の名前が書かれてあり、少しムッとして批判した思い出がある。

「提供の速さよりも、商品の形や美しさが満足度に繋がるだろ」と根拠の無い主張をしては、判断軸を巧妙にズラし、自分の自尊心を守っていたのだ。

7年前に経験していたのだ。同級生たちからしっかりと学んでいたはずだった。

今、僕は仕事に対して本気ではなかった。勝手に限界をつくり、自分の軸で満足しては、向上しようとしなかった。いや、大学の頃も、そして今も、向上心はあった。確かに向上したいと目指していた。けれどそれは自分が持参した、短い短いものさしだったのだ。

時間がある今、2015年の同級生との飲み会でムッとしてるキミの所に飛びこみたい。急にキミにそっくりの僕に首根っこを掴まれ、全く知らない会社へとキミは連れていかれる。驚きを隠せない顔をしているが、そんな様子を気にすることなく、僕はオフィスの自分を見せながら「見ろ、同じことをしているぞ、これを見た上で、キミはどうしたい」と無理やりの疑問系にして伝える。キミは困惑した表情で僕を見る。

首根っこ掴んでいる僕の腕も貧弱である。情けない顔をしているだろう。キミがこれを見て変わってくれたなら、今の僕も変わることができるのに…と人任せな感情に乗せて(この場合は自分に任せてるから良いだろうか)自分へと希望を残したい。

あいみょんの"裸の心"を聴きながら夜の街を歩く。今自分を守るものはない。今後は、自分で自分の全てを決めていくことになる。いや人生というのは最初からそうだ、そこから逃げていただけだ。

1番自由で、そして1番不安が募る時間だ。
過去の自分を連れてくることはできない。けれど、今の僕が過去に行くことはできる。
声は届かないけれど、差し伸べた手はすり抜けるけれど、見ることだけはかろうじてできる。

後ろを振り返ると足跡が付いた道は一本しかない。確かに歩んできた。一歩一歩、自分で選んだ道を。この先の道はたくさん見える。今は立ち止まり、ゆっくりと見極めるときかとも思う。耳を澄ませると右側の道からはグワワワと気味の悪い鳴き声が聴こえる。左の道からはゴオオと強い風と水の音だ。

キミは何も言わずに僕の背中をたたく。キミの力を借りながら、僕は歩き始める。

酒も飲まずに夜の雰囲気だけでこんなことが書ける僕は、きっと世でいうナルシストなんだろうな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?