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合計5万円をかけて、じゃんけんをした

「男気ジャンケン!!じゃんけんぽい!!!」

歓声と悲鳴が周りを行き来する。男気ジャンケンは、支払う額や商品が明確に決まってからジャンケンをしているので、賭博の分類にはならないとどこかで聞いたことがある。麻雀などの賭けはどれくらいの金額が負けるか決まっていないので賭博になるらしい。

男たちの集まりでは、何かしら楽しい企画やギャンブル性のある遊びが必要不可欠である。

年末に地元の友人たちと食べ歩きの旅に出かけた。愛知県にある犬山城。犬山の城下町へと足を運んだのだ。地元から車で3時間ほど。大晦日のため、みな早く帰らなければいけない。そして日帰り。

往復の移動時間でなんと6時間、結果犬山に滞在出来る時間は2時間。何とまあ、だいぶだいぶクレイジーな旅だ。

そして参加する男たちもクレイジーなメンバーだ。(僕を除いて)

クレイジーな男の1人が「今回の食べ歩きはさ、男気ジャンケンで支払いを決めようぜ」とクレイジーな提案をした。男たちはクレイジーのため、そのクレイジーな男のクレイジーな申し出をクレイジーさのカケラもない笑顔で承諾した。なんてクレイジーなグループだろう。

僕たちは7人のグループだった。これからジャンケンで勝ってしまうと×7の料金を支払うことになる。うまくいけば何も支払わずに旅を満喫できるというメリットももちろんあるが、その分ダメージも大きい。絶対に"勝ちたくない"旅が始まった。

目に入った食べたいものを買っていくスタイルで進んでいった。コロッケ200円、だんご100円、カフェオレ400円…

1人で買って支払う分には問題が無い額なのだが、7人分は地味に金額が膨らむ。「よっしゃー!!」と勝った人が拳をあげるが、目は笑っていない。負けて笑いながら「いやぁ、払いたかったわぁぁ」と呟くが、払わなくてよい特権を手に入れ、煽るような態度を見せている僕は、いつか本気で殴られそうである。


しかし男たちのクレイジーはここからだ?

このままではスリルが足りないよねと1人のクレイジーな男が言い出した。「今度はこれを食べたいぜ」そう言って、3貫1000円の肉寿司を食べることになった。勝ったら合計で、7000円も払わなければいけない。

僕は天を仰ぎ、全力で負けにいった。(負けに行くことも勝つことと同じくらい難しい)

みな全力で負けたい顔をしている。大の大人が必死にジャンケンを負けたがっている。男気ジャンケンとはよく考えたものだ。普段はジャンケンなど絶対に勝ちたいものなのだ。しかし、今日は負けなければならない。ジャンケンの手をだしたあと、一瞬勝敗がどっちだったか分からなくなるが、理解してから皆、安堵の表情を浮かべる。

そして寿司ジャンケンでは、食べたいと言い出した男が勝ち上がった。言い出しっぺが当たることはよくあることだ。本日の大金、7000円マイナスに彼はなった。

しかし、こうなってくると話はまた変わってくる。だんだんと皆、金銭感覚が狂ってくるのだ。ギャンブル狂のように、大金を賭けたくなってくる。食べたいものではなく、高いものを探して皆がキョロキョロし始めた。

「これ食べたいけどな」
「どれ?200円じゃん!ダメダメ」
「あれは、600円かぁ、、」

ここまでくると食べ歩きではなく、男気ジャンケンがメインとなってきている。僕は、往復の移動に6時間をかけてまで、そしてわざわざ他県の犬山まで来る必要はなかったのではと思ったが、熱が冷めるので言わなかった。

そしておそらく、犬山の城下町1番の値段を誇るであろう、飛騨牛のレア?なんとか?(忘れた)の串焼きを見つけた。問答無用で食べることになった。これが一本2000円するものだ。バカとしか言いようがない。クレイジーなんて表現を飛び越えて、大バカ者である。

勝ったら14,000円の支払いだ。食べ歩きで14,000円?訳が分からない。そして1番訳の分からないのは、別に誰1人としてこの串焼きが食べたいわけではないことだ。完全に値段だけで決めた。

絶対に勝ち進めない戦いが今ここに。

そして、結果として本日まだ支払っていなかった男が勝ち上がった。そして僕はなんと、運良く全てのジャンケンに負けることができた。支払いは0円で旅を終えた。普通のジャンケンであればただ負け続けた人であるので、何とも言えない気持ちにもなる。

けれども全ての勝負で勝ち進み、マイナス5万円になってしまっていたら、笑っていられただろうか。今年の分の運を相当使ってしまったのではないかと少し心配になった。

しかし、たとえ全額支払うことになってしまっても笑って過ごせるくらい、道中も皆で盛り上がり、何とも楽しい1日であった。

この内容を書きながら、楽しかった思い出を振り返る。写真を見返す。時が経ち冷静になると、本当にクレイジーな旅をしたなぁと思う。

けれど、そんなバカな(ここでは褒め言葉)友に恵まれている自分はなんと幸せだろうか。そしてその幸せを噛み締めている自分が小恥ずかしく思う。けれど嬉しいのだ。

きっと似たことを飽きるまで繰り返すだろう。来年も、再来年も。変わらないメンバーで。

年末は余分に、お金を用意しておかなくてはね。


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