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先代が大切にした、子供でも食べてもらえるイワシの味。 ー 千葉のおいしいを大切に ー

さかなのイメージって、どんな感じだろう。「魚は体に良い。」「魚は食べた方が良い。」テレビやメディアを通じて、そんな言葉を耳にすることがありますが、実際問題でいうと「子供が苦手。」「調理するのが大変。」と、苦手なイメージやネガティブな印象が多いのも魚です。

苦手な方のことを考えてみると、例えば焼き魚では、「骨がある。取らなきゃいけない。」「匂いがちょっとキツイかな。」「調理の手間が多く、自分で捌けない。」と、主婦や子供の目線で考えてみると、もっと多くの声が出てきそうです。

ただ弊社では10年以上もの間、多くのお客様から支持され続けているイワシの甘露煮があります。その商品の名前は、【ピリ辛いわし】と言います。味付けはピリ辛といえど、そこまで辛すぎずお子様でも食べられる味わいとなっています。

note-ピリ辛いわし一本

何故この甘辛く仕上げられたイワシが、ここまで支持されるのか、まじまじと見つめ、時には口にしながら改めて考えてみました。


まず注目すべきは。

魚の甘露煮や佃煮は、他にも色んな種類のものが販売されています。その中でも職業がら気にしてしまうのが、原材料で何が使われているかです。

ピリ辛いわしに、どんな原材料が使われているかというと、

名称 そうざい
原材料名 いわし(千葉県産)、水あめ、しょうゆ(大豆・小麦を含む)、砂糖、発酵調味料、しょうが、酵母エキス、寒天、昆布エキス、かつおエキス、唐辛子、醸造酢

まずピリ辛いわしには、添加物が使われていないという事です。日持ちさせるため、色味を良くするため、香りづけを良くするため、添加物が使われる理由は様々ですが、ピリ辛いわしには、まずこの添加物が使われていません。さらにピリ辛いわしの栄養成分表示を見てみると、

栄養成分表示(100g当たり)
エネルギー 238kcal / たんぱく質 19.0g / 脂質 2.5g /
炭水化物 34.8g / 食塩相当量 1.8g

魚だからか、たんぱく質が多い気がします。日本人の1日のたんぱく質の必要摂取量は、男性で約60g、女性で約50gとも言われており、ピリ辛いわしを単純計算4本から5本食べれば、19.0g摂取することができます。

「そうか。イワシなんだよなぁ。」

ピリ辛いわしに使われているのはマイワシになります。その大きさは約20cmくらいになるので、イワシの中でも大きい部類のイワシです。イワシについて深く調べていくと、たんぱく質に加え、カルシウムが100g当たり74mg、鉄分2.1gと魚の中でも多く含んでいるのが特徴とのこと。

さらにさらに、ひと昔話題になり多く取り上げられていたDHAとEPA。「そんなの知らないよ。」という方に、簡単にご説明していきます。

DHAとは、一言で言えば「私たちの体に必須の脂肪酸(栄養素)」です。脂肪酸とは、脂質いわゆる「油」を構成するモトになるものです。

ー マルハニチロH.P. から引用 ー

EPAとは、「エイコサペンタエン酸」の略称です。いわし・さば・あじなどの青魚に多く含まれるn-3系脂肪酸のひとつです。
主に青魚の油に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)は、体内でほとんど作ることができない「必須脂肪酸」の一種です。

ー ニッスイH.P. から引用 ー

少し難しい話になってきましたが簡単にまとめると、DHAは体内では作られることがない必要な脂であり、EPAは動脈硬化を抑制する効果をもっているようです。

栄養の面から見ても、イワシは食べた方が良いという食材であることには違いありません。

子どもにも食べてもらえるように。

ピリ辛いわしを食べていて思うことがあります。それは、魚の臭さをそんなに感じない。という事です。元々このピリ辛いわしは、茨城県鹿島市の海辺近くの工場で作られていました。

事業継続が難しく、今は千葉県東金市にある老舗味噌店の小川屋味噌店に、その技術は引き継がれています。

はじめてピリ辛いわしを作っていた工場に伺い、当時の社長の話で印象に残っているのが「子どもが、魚臭さを感じたら食べなくなっちゃうでしょ。」という言葉です。

子供でも食べてもらえる魚の甘露煮作り。先代の社長は、魚というものにあるネガティブな面を、どう取り除いていくか。という難しい課題に向き合って、このピリ辛いわしを製造していました。その答えがハッキリと見つかったのか見出せたのかは伺ってはいませんが、何年も地道に積み上げられてきた、その製造方法をご紹介していきます。

イワシは一尾一尾手捌き。

いわし手捌き

約20cmほどあるマイワシを一尾一尾、頭を落とし内臓を取り除いていきます。使用するイワシは、旬に漁獲される脂ののったイワシではなく、11月から12月ごろに水揚げされる、どちらかと言うと身のしまったイワシが主体になる。と記憶しています。

甘露煮にする場合、脂がのったイワシになってしまうと、逆に臭みにつながってしまうそうです。この原料の選定段階から、すでに魚の臭みに対する意識は高く、それをどう取り除くかの努力が行われていたと感じ取れます。

さばいたイワシを冷風乾燥。

乾燥させる

先程さばいたイワシを、一尾一尾きれいに並べ冷風をあてて乾燥させていきます。乾燥させていく理由は様々ですが、イワシの中にある水分を取り除いていくことで、甘露煮に煮詰めていくときに味を染み込みやすくします。ピリ辛いわしに使用するイワシを加工しはじめて、一日目がこうして終了していきます。

素人ながら、魚の甘露煮というと魚を捌いて、そのまま煮込む工程に移行していく。そんな単純さをイメージしてしまうため、乾燥だけで1日目を終わらしてしまうことに、とても驚いた記憶があります。

欠かせないひと手間。

ピリ辛いわしの加工がはじまって2日目。乾燥させたイワシを見てみると、約10%ほど小さくなっていました。乾燥させていけばいくほど、ドライフルーツと一緒でイワシも身が小さくなっていくのがわかりました。

ここで先代の社長がこだわっていたのが、もう一回身をギュッとするための焼き加工を加えるということです。

いわしを焼く

この焼くという工程が、さらにイワシの旨みを凝縮し、イワシの臭みをとる一つの大事な工程とも、先代は言っていました。またこの一度焼くということが、この後煮込んでいった時に煮崩れしにくく、しっかりとした食感のイワシに仕上がるとのことで、ピリ辛いわしには欠かせない一つの要素ともなっています。

他の魚の甘露煮と比較しても、お客様から支持される理由の一つが、この焼き加工にあるのではないかとも感じました。

煮込む準備。

煮る前に並べる

ここまで乾燥や焼きを繰り返してきて、幾度となく一尾一尾を並べ替えて行うピリ辛いわし。どこかで身がボロボロになっても良さそうなものですが、写真からもわかる通り、身がきれいなまま並べられていきます。

ただでさえイワシは鰯という漢字のごとく、水揚げ後は痛みやすいと言われています。そのイワシを手で捌くところから始まり、非常に丁寧に扱われ仕上がっていくのが、見て取れました。

独自のタレで煮込む。

煮る

ピリ辛いわしに使っているタレは、独自でブレンドしたオリジナルのタレを使用しています。タレの一部を紹介すると醤油は千葉県で醸造された醤油を使用しており、その千葉で醸造された醤油とは【ちば醤油】となります。

下総醤油をはじめメディアでも取り上げられる醤油を製造している、老舗中の老舗のお醤油。さらには、ちば醤油も創業170年と小川屋味噌店と同じ江戸から続く歴史に、何か縁を感じてしまうところすらあります。

その老舗のお醤油をつかって、イワシを煮込み一晩浸け込みます。煮込んだだけでは味は浸み込んではいきません。冷めていく段階で、イワシに吸い込まれていくかのように、味が染み渡っていくのです。

取り掛かりから最低3日。

煮た後

こうして一晩浸け込まれてできたイワシは、黄金色にもみえる煌びやかな仕上がりとなります。出来上がったピリ辛いわしを口にしてみると、骨も柔らかくなっており、イワシの臭みも感じません。

ご家庭では到底かけることができない手間を、このピリ辛いわしは3日間かけて行っていきます。先代の「子どもが、魚臭さを感じたら食べなくなっちゃうでしょ。」という言葉の通り、イワシのネガティブな面を極力取り除こうとした努力で出来上がったのがピリ辛いわしとなります。

note-ピリ辛イワシp

先代と話をしたあの日。

このピリ辛いわしを製造していた会社は、株式会社山甚と言います。創業当時から製造業だったわけではなく、創業者は漁師でその後を引き継いだとのことでした。

私たちが伺うと、いつも笑顔で出迎えてくれて、自身が手がける商品へのこだわりなど楽しげに話をしてくれました。「お店で試食販売をして欲しい。」とお願いすれば気持ちの良い返事で受けてくれて、社長自らが試食をお客様に配る姿を見せてくれました。

商売をする。という感覚より、どこか「自分の手がけた商品を、より多くの人に食べてもらいたい。」そんな思いの方が強い経営者だった気がしています。

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食べる人のことを考え、魚臭さを感じさせないことを頭に入れながら、いわしを中心に、他にも秋刀魚や昆布、ちりめんなど多くの佃煮や甘露煮を手がけてきた先代。

私たちは、その先代が作り上げたピリ辛いわしを、これからも多くの方々に口にしてもらえるように、引き継いでダメになったと言われないようにしていかなければいけません。

商品を販売する時に、考えてしまうことがあります。「これが売れる。こう売りたい。」という気持ち。ただ先代は、そんな事よりも「子どもに食べてもらうには、どうしたら良いのか。骨を柔らかく、匂いを感じない、ただ食べてもらえたら嬉しい。」と言う、きっと私たちよりも食べる人に近い存在で製造に携わっていたのだとも思います。その純粋さから生まれた商品だから、添加物も使わずにここまで多くの人に支持され続けるんだろうな。と振り返って見て改めて感じました。

喜ばしい認定授与。

弊社グループ会社の小川屋味噌店が、先代から製造方法を学び、味を引き継いでから約2年あまり。実はこの度、ピリ辛いわしで大変喜ばしい認定を授与しました。それは、【千葉県水産物ブランド認定】です。

2006年に創設され認定後も3年に一度審査される、もはや千葉県を代表する水産物の認定を受けました。今年は、ピリ辛いわしの一品だけというのも嬉しい限りです。

この認定は、千葉日報でも記事として取り上げられています。

また、その時の受賞の様子を弊社社長のTwitterでも紹介しています。

先代が築いきた口にしていただく方のことを考えた、イワシへのこだわりを製造を引き継いでいくスタッフたちが、守り続けている取り組みが評価され、素直に喜ばしいことです。

この受賞に甘んじることなく、そしてこの認定に恥じない品質の水産物加工品をスタッフ一堂で、お客様にご紹介し続けていきます。

直営店の新生房の駅のピリ辛いわしの売場。

note-新生売り場

こちらは栗山房の駅の売場。

note栗山

製造スタッフが作った商品を、大切にお客様に紹介していってます。

引き続き応援のほど、よろしくお願いいたします。

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