「自分用チョコ増加」というトレンドの深層
■バレンタインは贈る用のチョコよりも自分用のチョコが増加
近年のバレンタインのトレンドを見ていると、贈る用のチョコよりも自分用に買うチョコレートが多くなっているというレポートやトレンドを目にすることが多くなりました。自分のためにチョコレートを買う事が増えているというのが店頭などに立っている実感値としてもあります。
「誰かに贈るより自分のために買う」ことが増えている事は冷めた人が増えていたり、おもいやりが無くなっているのか?
というと、ちょっと違うと思います。
個人的な予想としてはここから5年くらいのトレンドでまた誰かに贈るチョコレートと言うのが増えてくると思っています。自分チョコが増えているというトレンドの表面的な事実だけを捉えて、自分のために消費が増えていると短絡的に結論付けられないなと思います。
ブランド運営をしていてこのトレンドを長期的にどのように捉えるかと日々思案しています。
■自分用チョコの増加の表層と、深層のインサイト
今の自分用チョコのトレンドはもちろん自分へのご褒美という面も強くあると思いますが、そこには情報の非対称性が無くなったことによる、消費者の価値観の多様化と専門化という面が深層に作用していると思います。
これは簡単にいうと「お客さんの好きが個々人で違ってきており、好きな分野にマニアックになっている」という事だと思います。
この深層心理をみずに短絡的に「自分買い用」というトレンドを捉えてはだめだなと思えた経験があります。
■「自分は好きだけど、人に贈るとなると・・・」という忖度
MinimalではMinimal’Tableというお客さんを巻き込んで行うWorkshopを定期的に行っています。そのMinimal’Tableの特別版での出来事です。
特別版のテーマは「新商品開発」。
新メニューであるガトーショコラや焼き菓子の試作品を食べて頂き、感想や意見をもらうというお客さんと一緒に商品開発を行うものです。
好き嫌いも含めてお客さんに本気の意見を頂き、それを吸収して商品開発に活かしていくガチな企画です。
その企画中の食べているときはワイガヤな感じはなく、無言で皆さん黙々と商品と食べてご意見シートに感想を記入していきます(笑)
ガトーショコラとお茶のペアリングの評価を10段階で聞いた時の事です。そのペアリングを「他の誰かに薦めたいか」を0(薦めたくない)~10(薦めたい)まで聞いた際に起こりました。
ペアリングを食べた時は皆さんとても良い反応でした。味わいが変化して、とても美味しい!これ大好き!という前向きなコメントが多く、それは高評価だろうと10段階の評価を聞きました。
しかし皆さん10段階でいうと6くらいの評価。つまり悪くはないが特筆して良くもないという事です。そこである男性のコメントが印象的でした。
「個人の好みとしてはこれは9か10の最高評価ですが、これを誰かに贈るとなるとびっくりしたり、これがわからないのではないかと思うので6にしました。」
このコメントに他のお客さんも同意していました。
■「個人の変化」と「社会の変化」の時差
情報の非対称性がなくなり、お客さんは多くの情報をとる事ができるようになり、またブランド側も画一的な情報でなく独自のこだわりをオウンドメディアで発信するようになったことで、双方が個別的でマニアックになっていく事で、「一般的に美味しい」ではなく「自分にとって美味しい!」という事に消費の判断軸が変化してきているのです。
そうなる事でお客さん側はどんどんマニアックになります。
まさにチョコレートで自分買いが増えているのは世の中にどんどん増えているチョコレートブランドをお客さんが情報をとり探究し続ける事で自分の好きを追究している事が作用しているのではないでしょうか。
では一方で誰かに贈る際は、自分の好みがマニアックであると自認していればいるほど、それとは違ったある意味で”置きにいく”という事が起こるのだと思いました。
つまり、誰が食べても外さないモノの方が無難で贈りやすいという事です。
俗にいう定番品が一番贈りやすいので自分の好みはこれだけど、送る時は違うものを贈ろうとなっている事がありそうです。
個人の変化の積み重ねが社会の変化だとすると、今はまだ個人の変化が起こっているタイミングでそれが積み重なって社会の変化になるまで時差が自分買いが起こっている現状ではないかと言う仮説です。
■誰かのためを思って贈る人は多い
自分買いが増えているのは、決して世の中が自分のためだけに動いているとか、冷めている事ではない事は、Minimalのお客さんを見ていると実感します。
Minimalのお客さんはもちろん自分買いもしますが、それは自家消費の側面に加えて、誰かに贈る際の下調べの両方の意味があると思います。
お客さんは贈る時に「〇〇が好きな人なのですが、どんな板チョコレートが合いますかね?」「これの味はこうだから、喜ばれるかな?」と真剣にスタッフに尋ねて、贈る人の事を考えながら喜んでもらえるようにOnly oneの贈り物を選んでいらっしゃる方がとても多いです。
決して冷めている事なんてなく、むしろ誰かのための「Made for you」に溢れています。
情報の非対称性が無くなっていく世の中で、お客さんの価値観は多様になり、好きに対してマニアックに専門化していく。その現状として自分が好きなモノを深める自分買いやご褒美買いが増えているのだと思います。
一方で贈るという行為にはまだまだハードルがあり、一般的に外さないモノを贈るという傾向があり、自分の好みとは違った忖度をしないといけないことは本質的にはめんどくさいと思っている可能性が多々あると思いました。
Minimalで端的にこの現象を表すと「板チョコはFRUITY(カカオ豆由来の酸味や果実味があるライン)が好きだけど、あの人に贈ると酸味や果実味にびっくりするから無難なNUTTY(ナッツやコクなど従来のチョコレートを連想させるライン)にしておこう」という現象でしょうか(笑)
■過渡期にある時に、生き残るブランドが備えるべき「先鋭化」
では、ここからどのようになっていくかと予測すると、恐らく5年くらいでその忖度は無くなっていくのではないでしょうか。
Minimalが約5年前にブランドを開始した時お客さんの反応はFRUITYが良かったものの、プレゼント需要が高まる時期は圧倒的にNUTTYが売れました。
しかし、この5年で酸味や果実味があるチョコレートがある意味で珍しくなってきつつある中で、自分の好みでFRUTYを贈る人が増えてきています。
つまり、消費は自分の好みをきちんと表明してその良さを合わせて贈るという行為が増えていくと思いますし、贈られた側もその価値観を理解し、楽しむようになってくると思います。
世の中が変化していくのに5年程度かかるのではないでしょうか。
誰かに何かを贈るという行為は、ある意味で自分のプレゼンです。世の中が変化した先には当たり前に「自分のセンスや好みを贈る」という事になり、贈られた側もそのセンスを楽しむという状態になります。
そうなると、必ずまたバレンタインにチョコレートを誰かのために贈るという事が復活してくると思います。
では、その変化をブランドとしてどのように捉えていくかというと、それは「先鋭化」であると思います。
「先鋭化」とは、ブランドの特徴をわかりやすく尖らせていく事です。
「先鋭化」の狙いは、お客さんが「これが好きな理由」を端的に言えるという事です。
要はこのブランドが好きな理由はこれ!と言えることが大事になります。
例えばMinimalでいうと「カカオ豆の個性的な風味を引き出す事に括った引き算のチョコレートブランド」という事だと思います。
あまたあるチョコレートブランドの中でMinimalを選ぶ理由は「どこよりもカカオ豆の香りが高く、深い味わいを表現する事ができているチョコレート」というメッセージを端的にお客さんと共有できるかが肝です。
情報があふれて、カテゴリー内にブランドが乱立する中でいかにお客さんに自分たちの魅力を端的に伝えるかに腐心する必要があります。
■「先鋭化」を伝える最も有効な手段は「プロダクト」
それはマーケティング的な側面も大事ですが、一番はプロダクトを手に取って伝わるという状態を実現する事だと思います。
Minimalはそこに括り、「モノ言わぬモノにモノ言わせるモノづくり」を大切にしています。
本当にお客さんが贈りたい!と思える商品をつくりたいと思っています。
自分買いの対象になり、それを更には贈りたいと思って頂き、プロダクトを手に取れば贈った人の価値観やこだわりが贈られた人に自然に伝わる。そうなれば自分買いにも贈りモノに使ってもらえるプロダクトとなります。
昨今の自分買いの増加を私なりに捉えると上記が重要であると思いました。だからこそ、私たちは狂気的にこだわったモノづくりにこだわります。毎年のそのこだわりを最も体現しているのがバレンタイン時期に出す商品群です。
今年はシグニチャーである「Minimal Works : Flavor 2019」がこの体現商品です。この機会に手に取ってみて頂ければ嬉しいです。
※Minimalのバレンタイン商品
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今年は自分たちのモノづくりのこだわりを映像にしました。ぜひこちらご覧ください。