ローコード・ノーコードでITエンジニアは駆逐されるのか?
昨今流行りのローコード・ノーコード
IT業界でよく耳にするこのワード。
定義についてはGoogle検索で一番最初に引っかかったこちらを引用させていただく。
この流れでよく聞くのが「現場でシステムが組めるのでITエンジニアは不要」という主張だ。本当にそうなのだろうか?
(ちなみにここでのITエンジニアは、断りのない限り企業向けシステムを構築するSIerやSES企業のITエンジニアを指す。無茶苦茶とんがった才能でプロダクトを開発するWebサービス企業のスーパーなエンジニアのことは忘れて読んでいただきたい。)
そもそもITエンジニアの仕事とは?
「え、JavaとかPHPとかRubyでコーディングすることでしょ?」
まあ間違ってはいない。「#駆け出しエンジニアと繋がりたい」界隈ではそういう認識の人も多いように感じる。
だが、システム開発のサイクルにおいてコーディングが占める割合はせいぜい2~3割である。
その他は要件定義だったり、設計ドキュメント作成だったり、議事録作成・進捗管理のような間接作業だったりする。
そして、難易度が高くて失敗しやすいのもそういう「非コーディング」の部分である。
大きな理由としては「人や組織を相手にする仕事だから」である。
新システム構築であれば、当然新業務プロセスが発生する。その業務を回すのは組織であり人だ。彼らとの調整は時に面倒で、片方を立てればもう片方が立たないといった軋轢も発生する。
システムに作りこむのか、はたまた運用でカバーするのか、そういう「正解のない落しどころ」を「システムのプロとして説得力をもって提案する」スキルが必要となる。
そういったITエンジニアは貴重だし、付加価値が高いと言える。
企業向けITではプログラマの価値は低いのか?
もちろん製造工程ではコーディングをするメンバも必要となるし、保守性も含め質の高いプログラムを書けるプログラマは貴重だ。
企業向けITにおける質の高いプログラムの条件としては、バグが少ないのはもちろん大切だが、きちんと業務で使えることも同じくらい大切だろう。
私の経験則になるが、プログラミング言語に精通してよいソースコードを書く人は業務理解度も高く、結果として役に立つアウトプットを出しているし、プログラミング言語をよくわからずに書いている人は、業務のこともよくわかっていない。
身も蓋もない話だが、ビジネスパーソンとして優秀なプログラマの価値は高いし、そうでないプログラマの価値は低いのである。
ローコード・ノーコードでシステム構築の本質は変わらない
残念なプログラマにコーディングをさせるくらいなら、上流工程をきちんと仕切れる人がローコード・ノーコードで実装までやってしまえばよい。結果として淘汰される人は一定数出てくるだろう。
ただそれは、元々付加価値がなかった層が浮き彫りになるだけで、これまでもそういうことはたくさん起こっていたはずだ。
例えば昔はHTMLを書くだけでも仕事になったが、CMSの登場でそんな仕事の付加価値は一気に下がった。
ローコード・ノーコードツールがいくら便利になり普及したとしても、それを業務に合わせて使いこなすスキルの重要性は何ら変わらない。
ITエンジニアの仕事がなくなるんじゃないかと戦々恐々としている若手ITエンジニアの読者の方、ビビらずにユーザ目線で最適なシステムとは何かを考える訓練をしてほしい。
現場ユーザがローコード・ノーコードで実装できるので、いくらITエンジニアとして付加価値が高かったとしてもITベンダそのもののニーズが減ってしまうのでは、という点についてはどうか?
それについてもあまり心配はしていない。
現場でExcelの集計関数をそこそこ使えるユーザはそれなりにいるだろうが、AccessやVBAまで使いこなす「パワーユーザ」はどれくらいいるだろうか?
ちょっと関数のセル参照がずれただけで分からなくなって問い合わせをしてくる人がほとんどなのではないだろうか?
ローコード・ノーコードツールとはいえ、処理フローやデータベースの仕組みがある程度理解できないと使いこなせない。
UiPath、ASTERIA、PowerApps、kintone、Salesforceなど、みんな便利なツールだが、使いこなせているのは前述した「パワーユーザ」だった人たちだ。
そしてそういう人は一握りだ。
kintoneで単純な画面を作るだけならITの素養がなくてもなんとかなるが、ASTERIAで「繰り返し処理」とか「変数」とか「REST API」とか、さすがにnon-ITな人が一から理解するのはハードルが高すぎるというのが私の実感だ。
まとめ:基本的にはこれまでと変わらない
結論、ローコード・ノーコードツールの勃興により、付加価値が高いITエンジニアが駆逐されることはない。
ここ何年もスキルの高いエンジニア・コンサルタントの需給はひっ迫しているが、それが相変わらず続くだろう。
ITエンジニア個人でできる対策もこれまでと変わりはない。どうやったらITが企業活動の役に立つのかを考えながら、日々研鑽を積むだけだ。
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