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【映画感想】システム屋が「Winny」を観て思ったこの国の未来

先日映画館で「Winny」という映画を観てきた。
結論から言うと「めちゃくちゃよかった!」のである。

そもそもWinnyとは何か?
ざっくり言うと2000年代に日本で流行したファイル交換ソフトのことだ。
私と同世代の、特にITパーソンは馴染みが深いのではないだろうか。

圧倒的な利便性によって普及し、同時に著作権違反の観点や、機密情報流出事件の観点で大きな社会現象にもなった。

やがてWinnyの作者である天才プログラマーの金子氏は逮捕され、最高裁で無罪を勝ち取るもその半年後に急逝されるという結末に。

そのWinnyの作者、金子氏を主人公にした映画が先日公開されたという記事を見かけ、これはシステム屋の端くれとして観ないといけないという謎の使命感に駆られ、映画館に足を運んだのだった。

以下がその日経クロステックの記事。

以前こんな記事で映画の中での情報システム描写に物申していた私としては、否が応でも期待が高まっていた。

作中では金子氏が著作権法違反幇助で起訴されてからの第一審の部分がメインで描かれているのだが、大きなテーマとしては「プログラマが自由に開発できる社会を守ること」だと感じた。

実際問題として、Winnyによって著作権違反はかなり助長された。
かつてのWinnyのユーザで、著作権違反を一切行わなかった人というのはほぼゼロなのではないかと思う。
そして、金子氏もそれを全く予見していなかったという訳ではないだろう。

ただ、作中でも何度も言及されているように、殺人事件が起こったとして、凶器のナイフや銃の発明者が逮捕されないのと同様に、金子氏の逮捕は無理筋なのである。
実際に二審では以下のような判断が下され、最終的に最高裁は検察の上告を棄却した。

二審の大阪高裁は2009年10月、ソフトの提供者が著作権侵害の幇助と認められるためには、ソフトの利用状況を認識しているだけでは条件として足りず、ソフトの主要な用途として違法行為を勧める形でソフトを提供していることが必要だという条件を示し、金子氏はこれにあたらないとして無罪としていた

https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/500531.html

グレーな技術でも、それが出てきたら作った人間を吊るし上げて潰すのではなく、なんとか共存する方法を考える。
それができる国の方が結果的に競争力を高めることができる。
GoogleもYoutubeも出てきたころはグレーなサービスだった。
Winnyがそうならなかったのは本当に惜しすぎる。

私は金子氏みたいな天才ではないし、政治的な力があるわけでもない。
だが、今後同じようなことが起きたときには、一人のプログラマとして良心と本質的なの意味での「愛国心」(この国の若者達の創造力を潰さないことが結果的に国益になる)に沿った行動をしたいと思う。

最後にキャストについて。
主演の東出昌大氏の演技が憑依レベルで素晴らしかった。プライベートで色々あったが、俳優としての才能は間違いない。
裁判シーンでは、裁判ウォッチャーとして有名な阿曽山大噴火氏が登場しているので、こちらも地味に注目だ。

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