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複数事業で弱点を補完。顧客接触頻度で新しいチャンスを獲得する。

新型コロナの影響で、各種の事業体が少なからずの影響を受けている。以下に記事をシェアした貸衣装屋さんも、月の売上が最大で9割減という大打撃という話。このタイミングだからこそ、業態転換をするタイミングなのだと思う。

飲食店だけでなく貸衣装屋さんも、たぶん世の中のどんな業種もみんなが稼ぎ時になる春。卒業式がある3月が3割減。入学式がある4月で7割減。経営者はみんな知ってるけど、各種の会合が集中する5月に9割減…

聞いているだけで気が滅入ってくるくらいの大幅な収入の減少…こういう時に新しいことに着手できない経営者は、ただ混乱するだけで、無為に時間を過ごすことになる。

貸衣装屋さんのフレンド経営者の森さんは、新規事業としてキッチンカー「とことこ」で「バナナジュース」販売に打って出ることに決めたのです。

検討から意志決定までのスピード

4月後半に情報収集して5月のGW明けにはキッチンカーの購入を決め、5月末に納車されるまでにメニューや仕入れ先を確定させ、営業許可取得のための準備をしておき、6月1日には営業許可の取得というスピード。

僕のところに「キッチンカーの事業に興味あるんだけど…」って相談が来たのが、4月後半のGW前。キッチンカーを事業化するにあたってのいくつかの注意すべき点とか、マネタイズに必要な点を1時間半くらい共有したのですが、まさかこんなスピードで始めるとは…

GW中の平日には食品会社勤務のお嬢さんと一緒に船橋市場を訪れ、仕入れ先を紹介したらバナナを定期的に仕入れる契約をしてくれ、メニュー開発して…と獅子奮迅の活躍。

この間取材で伺ったけど、本当に美味しい「絶品完熟バナナジュース」(350円)でした。価格も安いので、きっと流行ると思います。

ただ、この森さんの事業は、バナナジュースが美味しいことがポイントなのではなく、そこは必要最低限 要件で、事業体質としてのお客さんとの接触頻度のところが面白いので引用させて頂きます。

顧客との接触頻度

貸衣装ってどのくらいの頻度でお客さんと接触があると思いますか?

成人式のみのお取引だと、一生に一回。その子が、結婚式にも使ってくれれば、2回目。子どもができて、七五三でも使ってくれて、5回。お母さんとお父さんがその時に両方とも借りてくれれば、7回。

そして、冠婚葬祭とか会合とかにも使ってくれて…って具合にそれなりに単価の上がる売上をリピーターが支えてくれる業態なのです。

たぶん、何年という長い時間をかけてお客さんとの人間関係を築いてきて、リピーターのお客さんが「着物は買うよりも、プロが保存しているものを借りて使う方が経済的で合理的」って概念をしっかり共有できるようになっているから成り立っているわけです。

逆にいうと、新規客を容易には増やしにくい業態でもあるわけです。

単価の高い商品というのはいずれもこの傾向がありますが、商品を購入したらほぼ営業担当者や販売担当者に会う事のないものです。不動産、住宅、車、家電、パソコン…もしかしたら、携帯電話や生命保険も当てはまるかも。

住宅や不動産は一般の人だと一生に1回から数回、人によっては1回も会うことなく人生を過ごす可能性もあります。家電だって、買ってしまえばそんなんなに壊れることがないので購入後に販売員と会う事はありません。

こうした仕事と比較して、飲食店というのは購入単価が安いのでリピーターの利用頻度が非常に高く、多い人であれば毎日のように接触する事もあるんです。

「貸衣裳だから高齢者とか熟年女性。それ以外は、成人式の時に使うくらいかな?」と考えを固定させてしまったらもったいない。

今回の森さんたちがそこを意図していたのかどうかは定かではないですが、僕は取材しているうちに、「素晴らしいコラボだな」と感じました。

接触頻度の高い事業と貸衣装のコラボが持つ可能性

中学校とか高校生くらいからバナナジュースを飲んでいる子たちが、高校2年生とか3年生くらいになったタイミングで、都内とか知らないところから「二十歳の晴れ着」というDMや営業電話の猛攻に遭うようになります。

そうした業者は、「今予約したら〇%割引」とか、「晴れ着は需要が集中するので早めに予約しないとスーツでの出席になってしまいます」とか、「後になれば選べなくなります」「一生に一度の晴れ舞台だから自分の晴れ着で。着物は一生使えます」とか不安を掻き立て、前入金を迫ってきます。

ローンを組んでまで着物を購入する必要があるかどうかはさておき、これまでの人生で会った事もない人に大きなお金を預けてしまうというのは実は非合理的で危険な仕組みです。

その点、今回のキッチンカーを併用させることで…
「毎日のように通学途中に立ち寄っていたドリンクスタンドの店員さんが、実は本業は晴れ着のレンタルで気軽に相談できた」というのはスマートですよね。

チラシやDMを撒いて新規客を集めるよりもよっぽど街に根付いているし、森さんたちの人間性を紹介するのに適している業態だと思います。

そして、この会社の素晴らしいところは社長のこの新しい発想に対して社員が一丸となって協力しているところなんです。普通、大きなお金を動かす仕事をする人は日銭の収入を軽んじるものなんです。

着物のレンタルがいくらなのかわかりませんが、今回は数万円だと仮定します。これに対して、ジューススタンドは客単価数百円の商品。粗利益は、数十円かも知れません。これで生計を立てるイメージが湧きにくいものなのです。

もしかしたら、平時には新規事業を考える間もなかったかも知れないです。

また、社員さんたちも社長の話をまともに聞かなかったかも知れません。

今回、コロナウイルス感染症という未曽有の危機が訪れたことで、生き残りの為にアイディアが湧き、このイノベーションを起こしたことで次のアフターコロナもしくはウィズコロナに向けての強い武器を持つことができたんだと思います。

コロナで文句を言う人がいるかも知れません。今やっている事業が失速したかもしれません。でも、今回の森さんのように新しい事業に乗り出す事で既存の事業とのコラボを実現させる例もあるのです。経営者たるもの、こうありたいと思います。

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