灼熱のアスファルトもへっちゃら! 8月、街中で出会える雑草の花5選
1. こんなに暑くても平気です
〈 コニシキソウ 〉
コニシキソウはひとたび目につくようになると、道ばたのあちこちで見かける雑草です。緑の肉厚な葉に赤紫の模様が入っていて、地面を這うように生えています。
晴れた夏の日中は、気温は地表に近いほうが高温です。そんな暑い日にも平然と花を咲かせ続ける、コニシキソウのタフさに驚きます。
よく見ると、おもしろい形をした美しい植物です。ちょうど花盛りのように見えます。
コニシキソウは花が延々と咲く、花期が非常に長い植物です。
花びらのようなものは、腺体(せんたい)と呼ばれる蜜を出す部分で、花全体を包む葉が変化したものです。全体にぽっちゃりとしていて、毛も生えていて、植物というより、どこか動物っぽいですね。
2. 今日もひっそりと、ミカンのような果実をつける
〈 コミカンソウ 〉
コミカンソウの花は小さな花です。花と果実は小さく、下を向いて咲きます。上から見ると、花も実も葉に隠れています。
近所の散歩コースに盛り土のようになっている場所があって、ここにもコミカンソウが生えています。
この場所だと、コミカンソウの葉の下側を簡単に見上げることができて、楽にコミカンソウの観察ができます。
生えたばかりの時から観察しているうちに、気が付いたことがあります。
ほかの多くの雑草とは違い、植物がまだ若くて小さいうちから花を咲かせているのです。
葉と花を一緒に伸ばすことで、生産の効率化を図っているようです。
3. 咲いたらきれいなのに、なかなか咲かない
〈 スベリヒユ 〉
スベリヒユの葉は濃緑色で厚く、いかにも暑い夏に適した植物のように見えます。
黄色い花の直径は6~8mm。午前中の短時間しか咲かない植物ですが、園芸植物のマツバボタンの近縁種ですから、花はとてもきれいです。
果実の開き方がまた面白いので、ここも見てみたいところ。
蓋のようになっている果実の上半分がポロリと外れるのです。中からけし粒より小さな種子が出てきます。
4. 涼しい朝に観察しよう
〈 ツユクサ 〉
ツユクサは早朝咲いて、午後には花は萎んでしまいます。
青い花弁が目立ちますが、おもしろいのは花の中の雄しべです。ツユクサの雄しべは3種類あります。
花から一番遠いのが花粉たっぷり雄しべです。中間地点にある雄しべがは「Y字」型。花の内側にある雄しべは花粉をほとんど作らない「π字」型。
この「π字」型は「x字」型になることもあり、実は色々な形があります。どんな形があるのか、観察してみると新しい発見があるでしょう。
5. 甘い香りは夜放たれる
〈 タカサゴユリ 〉
夜、近所を散歩していると、甘い香りに包まれました。ふと見ると、植え込みの間にタカサゴユリが咲いていました。
「タカサゴユリってこんないい香りだったかなあ?」と思って、翌日の日中、タカサゴユリの花の香りをかいでみました。
「あれ!」
ほとんど花の香りがしません。タカサゴユリは、夜に特に香りを出すようです。
ユリの香りは、昆虫を引き寄せて、蜜を与える代わりに、花粉を別の花に運ばせて受粉するためにあります。
昼間は目がいい昆虫のチョウなどが花にやってくるのですが、夜はガの時間です。ガは嗅覚が発達しているので、タカサゴユリの花の香りに引き付けられます。
花の香りを作るにもコストがかかります。タカサゴユリは、ガのいない昼間には効果が少なくもったいないから、あまり香りを出さないのではないでしょうか。
(文・写真=髙橋 修)
猛暑の厳しい夏ですが、朝夕のすこし涼しい時間にも、道端で咲いている花に出会えますよ。
『散歩道の図鑑 あした出会える雑草の花100』では、春夏秋冬の100種の身近な雑草の花を掲載。誰かに話したくなるようなお話がたくさん詰まっています。
雑草の花の名前がわかると、近所のお散歩がもっと楽しくなるはず。
■著者
髙橋 修(たかはし・おさむ)
兵庫県西宮市生まれ。甲南大学文学部卒。
山専門の旅行会社アルパインツアーサービス(株)退社後、海専門旅行会社に勤務。その後植物写真家として独立、植物写真家の木原浩氏に師事。
今も植物の撮影と探検のために、日本各地、世界各地に飛び回る。
植物写真講座「ボタハイ」主催。Yamakei Onlineのヤマヤのたしなみ連載中。植物関連著書多数。