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【第58回】改めて表現の自由とは何を保障しているのか⑩ 知る権利(わき道にそれて犯罪報道について⑤忘れられる権利について) #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話
EU一般データ保護規則(2016.4.27) EUでは、一般データ保護規則というのがすでに2016年から存在していて、第17条に「削除権(忘れられる権利)」が規定されています。 その内容は、個人データが不要になった場合、データ主体が公表の同意を撤回した場合、個人データが不法に処理された場合などに、個人データの削除等を請求する権利をデータ主体に認めるというものです。 ある歯医者さんの裁判犯罪の前科について、忘れられる権利が問題となった事案ではありませんが、興味深い裁判例が名
【第56回】改めて表現の自由とは何を保障しているのか⑨ 知る権利(わき道にそれて犯罪報道について④犯罪の前科について) #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話
これも数字のマジック?日本の有罪率が高い、ということは結構多くの人が知っています。しかしこれは、刑事事件として起訴されたケースについて、有罪になる率がきわめて高いことを意味しているにすぎません。逮捕されてから検察に送られ、検察で起訴すべきと判断する、というプロセスがありますから、実は、逮捕されたからといって、有罪判決までに至る率という観点で見た場合、おそらく一般の人々の印象よりはぐっと下がるはずです。 これまでも、新聞の縮刷版など、一度報じられたものは半永久的に保存されてい
【第55回】改めて表現の自由とは何を保障しているのか⑧ 知る権利(わき道にそれて犯罪報道について③被害者の氏名の公表について) #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話
行政法における公表について行政法の世界では、「公表」という制度が制裁的意味合いで重要な場合があります。 たとえば、障がい者の法定雇用率を遵守しない場合に企業名を公表するような場合(障害者の雇用の促進等に関する法律第47条)などです。 これは比較的近年、有効性が強調されている制度です。資本の論理からすれば、法律を順守するよりも罰金を支払った方が経済的合理性に適うということがあり得ます。罰則で法の実効性を担保しようとするのではなく、むしろ企業に対する制裁としては企業名の公表に
【第54回】改めて表現の自由とは何を保障しているのか⑦ 知る権利(わき道にそれて犯罪報道について②氏名の公表) #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話
行政による公表と、その情報の報道機関の釣り扱いについてそもそも、なぜ被害者について報道機関が知っているのでしょうか。もちろん、報じてほしい、という関係者の同意があれば問題はありません。しかし、時として被害者のご自宅で親御さんがインタビューに応じていたり、近所の人の話が出てきますが、なぜ記者とカメラマンはその場所にたどり着いたのでしょうか。 そりゃ、警察が公表してるからでしょと突っ込まれたあなた。正解です。メディアとしては、知ってしまった事実についてはできるだけ報じようとする