山花郁夫

法学を学んだことのない人にも憲法の論点、考え方について理解してもらう一助となればとこの…

山花郁夫

法学を学んだことのない人にも憲法の論点、考え方について理解してもらう一助となればとこの試みをはじめることにしました。

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あなたがあなたらしく生きられるために― #山花郁夫 #立憲民主党 #東京22区

その思いを胸に、政治家として四半世紀、人権に関わる問題に取り組んできました。 あなたがあなたらしく生きられるために―法は富める人にも貧しい人にも、力の強い人にも弱い人にも、平等に力になり得ます。人権にかかわる法整備をすすめることは社会の公正さを前進させることにつながります。 私の祖父は、戦前に治安維持法に違反したということで何度も投獄されました。「戦争反対」と声を上げ、官憲に捕らえられたのです。祖父は「人権は地球よりも重い」という言葉を残していますが、人として当然のことを

    • 【第83回】教育を受ける権利② #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

      1. あらためて憲法26条を読んでみると……では、憲法26条はどのような規定でしょうか。まず、第1項で、教育を受ける権利を規定しています。対象はすべての国民ですが、その中心は子どもの学習権の保障にあります。 しかしもし、子どもが学習権を行使できていない状態にある場合、「教育を受ける権利を保障しろ」と自ら憲法訴訟を起こすことは困難でしょう。そこで、国民に「その保護する子女に普通教育を受けさせる義務」を負わせることで、子どもの学習権を担保する、という構造になっています。つまり

      • 【第82回】教育を受ける権利① #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

        1. 不可解な社会科の教科書憲法26条1項は、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と定め、2項で、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする」と定めています。 教育を受ける権利というのは、国家に対して合理的な教育制度・施設を通じて適切な教育の場を提供することを要求する権利ですから、国家に対して作為を請求する社会権としての性質を持ちます。

        • 【第81回】生存権 #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          1. 作為請求権生存権が主張されてきた背景(夜警国家観から社会国家観への転換)やワイマール憲法の教訓などについては「公共の福祉」に関連してすでに触れてきました。改めてですが、自由権は、国家に対して不作為を要求する権利、国家からの干渉を拒否する権利であるのに対して、生存権をはじめとする社会権は、国家に対して作為を請求する権利という特徴があります。 このことが、裁判による救済をむずかしくしていることもすでに触れました。 2. 食管法事件(最大判昭23.9.29)戦後の食糧難

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        あなたがあなたらしく生きられるために― #山花郁夫 #立憲民主党 #東京22区

        • 【第83回】教育を受ける権利② #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

        • 【第82回】教育を受ける権利① #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

        • 【第81回】生存権 #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          【第80回】財産権② #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          1. 損失補償3項は、私有財産を「公共のために用ひる」ことができ、その場合には「正当な補償」をなすべきだとしています。 (不法行為に基づく)損害賠償という概念は一般になじみのあるものと思われます。違法性のある原因で損害を与えた場合に用いられ、国などの公の機関の場合には、国家賠償法という法律があります。 これに対して、違法性のない場合には損失補償という概念が用いられます。 どのような場合に損失補償をすべきかについては、「特別の犠牲」に基づく損失の場合だ、と考えられていま

          【第80回】財産権② #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          【第79回】財産権① #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          1. 財産権の規定のしかたについてかつて所有権を筆頭に、神聖不可侵とうたわれた財産権ですが、社会経済の変化とともに、政策的な制約を受けるものと考えられるようになったことはすでに見てきました。日本国憲法も、29条1項で「財産権は、これを侵してはならない」としながらも、2項、3項では「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める」、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」としています。 この規定の仕方から、憲法解釈にあたっては一

          【第79回】財産権① #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          【第78回】職業選択の自由 #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          1. 政策的制約職業選択の自由には、分析すると、職業を「選択」する自由(職業の開始・継続・廃止の自由)と、職業を「遂行」する自由(選択した職業活動の内容・態様における自由)を含むとされています。なぜこんな分析をするのかというと、「選択」する自由に対する規制は、そもそもその職業に就くことができるかという事前規制であるのに対して、「遂行」する自由に対する規制は選択することができた職業に対してそれを遂行することについてのいわば事後規制ということになります。したがって、「選択」する

          【第78回】職業選択の自由 #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          【第77回】経済的自由権・総論 #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          1. 総論これまで、思想・良心の自由(19条)・表現の自由(21条)・信教の自由(20条)・学問の自由(23条)という、人の精神活動に関する自由、精神的自由について紹介してきました。 これらに対して、憲法22条と29条は経済的自由を規定したものだとされています。 精神的自由の中でも、表現の自由を規制することは原則としてできないと考えるべきであり、規制することができるとしても、かなり厳格な基準をクリアしなければならないことについてもみてきたところです。 きわめて単純化す

          【第77回】経済的自由権・総論 #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          【第76回】大学の自治 #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          1. 京大事件(滝川事件)「大学の自治」という概念を理解するために、機関説事件とならぶ、学問の自由に関する京大事件(滝川事件)について振り返ることとしましょう。 1933年、文部大臣が京都大学総長に対し、法学部の滝川幸辰教授をやめさせるように、申し入れをしたことに端を発します。 京都大学法学部教授会は、学問的研究の結果として発表された、刑法学上の所説の一部が政府の方針と一致しないという理由で、教授が退職させられるようでは、「学問の真の発達は阻害せられ、大学はその存在の理

          【第76回】大学の自治 #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          【第75回】学問の自由 #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          1. 保障の趣旨学問研究の成果が発表されると、時間、空間が絶対的なものではなく、相対的なものであるというように、時として人々の常識的感覚と異なることがあるだけでなく、時の為政者にとって都合が悪くなることがあります。反政府の言論のように、政府に都合の悪い学問研究については抑圧された、というのが歴史の教訓です。 中世のキリスト教会が天動説を唱えたガリレオに対し、教会の権威を害するものとして天動説を取り消させたことが、「それでも地球はまわる」という言葉とともに有名です。 進化

          【第75回】学問の自由 #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          【第74回】エホバの証人剣道拒否事件(最判平8.3.8) #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          1. 政教分離と信教の自由政教分離原則は、個人の信教の自由を徹底しようとするための制度だと説明してきました。しかし一見すると、両者が対立するようにも思われるような事件がありました。エホバの証人剣道拒否事件です。 2. 下級審では判断が分かれた神戸市立工業高等専門学校のある学生は、エホバの証人の信者で、聖書に従うならば格技である剣道実技に参加できないという信念を持ち、必修科目である保健体育の剣道の授業ではレポート提出等の代替措置を認めてほしい旨申し入れたのですが、校長は代替

          【第74回】エホバの証人剣道拒否事件(最判平8.3.8) #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          婚姻「平等」法案のメッセージ    ーすべての人に婚姻の自由をー

          1. 憲法24条は何を規定しているのか木村草太教授から、「憲法の人権規定は貼紙のようなものである」ということをうかがったことがあります。 つまり、「貼紙禁止」という貼紙があれば、「これはだれかが勝手にこの壁に貼紙をしたのだな」ということがわかるし、「立小便禁止」という貼紙があれば、「ここで以前しでかした人がいるのだな」ということがわかるのと同じように、「検閲はこれをしてはならない」(憲法21条2項)という規定があれば、かつて検閲によって表現の自由が抑圧されたのだな、という

          婚姻「平等」法案のメッセージ    ーすべての人に婚姻の自由をー

          【第73回】政教分離 #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          1. どのような行為が禁じられるのか憲法20条1項後段は、宗教団体に対する「特権」の付与、「政治的権力」行使を禁止しています。 時として、「宗教法人が非課税である」ということを問題視する人がいますが、これは、「宗教法人だから」ということで非課税になっているのではなく、宗教法人が「公益法人等」に位置づけられ、法人税が原則として非課税とされているということです。 また、政治的権力の行使の禁止については、宗教団体が政治的活動を行うことが禁止されるのではなく、ドイツのように、課

          【第73回】政教分離 #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          いわゆる「裏金」問題をめぐって

          メディアなどでは、さまざまな改革や法改正が必要ではないかとの論調もありますが、そもそも法改正の問題なのかな、という疑問があります。 今回のキックバックの問題は、政治資金規正法に基づいて記載すべきものを記載しなかったという違法行為です。「抜け道」つまり脱法行為があったということであれば、抜け道を防ぐための法改正などの「改革」が必要でしょうが、すでに法律は存在しています。「人を殺してはならない」「他人の物を盗んではならない」という法律がすでに存在しているにもかかわらず、殺人や窃

          いわゆる「裏金」問題をめぐって

          【第72回】信教の自由 #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          1. 信教の自由の保障と限界信教の自由は、内心にとどまる限り、他者の人権などを侵害することはあり得ませんから、信仰の自由としてその保障は絶対的なものと考えられます。 これに対して、布教活動をはじめとして、外部的行為については、他者の人権との調整が必要になります。思想・良心の自由と表現の自由の関係と同様です。 2. 加持祈祷事件事件は、病人の求めに応じその平癒のため加持祈禱することを業としていた僧侶が、息子(A)が異常な言動をするようになったので平癒のため加持祈禱をしてほし

          【第72回】信教の自由 #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          【第71回】信教の自由と政教分離 #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話

          1. 明治憲法下の信教の自由明治政府は江戸時代以来のキリスト教の禁止を解きました。明治憲法で、 と規定されました。 しかし、次第に特別の待遇を受けることになる宗教が現れます。神社神道です。 明治政府は、神話にもとづく天照大神の言葉、「神勅」を政治体制の基礎に置きました。そして、天皇は天照大神の子孫にして神であるというのです。★ 神社は一般の宗教から区別して、公的な性格が与えられました。具体的には、神社は公の法人とされ、神官・神職は官吏とされました。政府内でも、一般の宗

          【第71回】信教の自由と政教分離 #山花郁夫のいまさら聞けない憲法の話