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データで教員の長時間勤務を改善!過去8年間の傾向と働き方改革!

教員採用試験の倍率が低さがニュースになり、働き方改革の必要性が毎年議論されるようになっています。そんな中、以前公開したこちらの記事では、こんなことを書きました。

ただ、僕は勤怠記録をきちんとつけ、過去のデータや月ごとの傾向、その際の校務分掌や担当学年を分析することで働き方をもっと改善していけると思っています。

勤怠記録は組織・個人問わず、働き方改革を進める上で重要なデータの一つです。

タイムカードはもう不要!Googleフォームとスプレッドシートで実現するスマートな勤怠管理!

この考えは現在も変わらず、
・勤怠記録
・担当していた業務(担当学年・校務分掌など)
・経験年数
・教科
・性別
・家族構成の変化

などを詳細に分析することが、働き方改革には欠かせないと思っています。

今回は自分の過去の勤怠記録データを使いながら、教員の働き方を分析してみたいと思います。

勤怠記録をつけるモチベーションが無い方や、客観的なデータに基づいて働き方改革を進めたいと思っている方の参考になれば幸いです。

なお、上のデータ一覧やこの後出てくるグラフを簡単に作成できるスプレッドシートのテンプレートも配付する予定ですので、記事の最後までご覧ください。


(1)年度ごとの比較

まずは、年度ごとに比較していきます。今回対象にしているのは2017年度~2023年度の7年間+2024年度の合計8年間です。
※2023年度は、1年間育児休業を取得しています。

育休中についての記事は、下のマガジンにまとめています。

年度別時間外勤務の平均 2017~2023年度
平日1日あたりの時間外勤務 2017~2023年度
年度ごとの担当業務と家族構成の変化(2017年度~2024年度)
年度別・月別の時間外勤務

時間外勤務の平均値は、結婚を機に中学校に異動した2018年度が最も多くなっています。

2018年度の1学期は特に時間外勤務が多くなっていますが、中学校に異動したため、
・社会の授業準備をすべて0から行っていた
・平日の部活動時間が長く、休日も大会があった
・結婚していたが子どもはいなかったので、自由に働けた
・学年会が長時間だった

などが原因として考えられます。

結果的に2018年度が最も時間外勤務の多い1年になっています。

2019年度、2020年度と時間外勤務は減少傾向ですが、これは
・中学校の仕事に慣れてきた
・社会の授業がストックができるようになった
・部活動の活動時間が短縮されたこと

などの要因があります。

2018年度は中3の社会、2019年度も中3の社会の授業を担当していたため、0から授業準備をする必要がなく、時間短縮につながりました。

2020年度は中2の社会担当となりましたが、コロナ休校で在宅勤務が認められていたため、猛烈な勢いで授業準備を行い、1年分の授業準備を終わらせることができたため、年度全体として時間外勤務が減少しています。

また、2020年度はコロナによって休日の部活動や大会が中止されたことも、時間外勤務の減少に貢献しています。

さらに2020年度は学年主任も交代しており、導入されたGIGA端末を使ったコミュニケーションの効率化、学年会の短縮などの変化がありました。

第1子もこのタイミングで誕生しており、今までのようにいつまでも学校にいることも難しくなってきた時期でもあります。

このように2018年度をピークに、2019年度・2020年度と時間外勤務は減少していました。

2021年度になると、コロナの制限が少しずつ解除され、部活動時間の延長や大会の再開など、長時間労働の原因となってきたものが少しずつ復活してきたことで、再び時間外勤務が増加しています。

また、教科書も変更になったため、一部の単元で授業準備を再びやり直す必要が生じました。しかし、最も忙しかった2018年度と比較するとかなり短くなっていることが分かります。

2022年度は、コロナの制限がかなり緩和され、これまでオンラインで行ってきた文化祭を体育館で行う方式に戻すことになったため、その準備で夏休みに多くの時間を使いました。

特に8月は毎年時間外勤務がかなり少なかったのですが、2022年度は8月に50時間と、これまでで最も多い時間外勤務となっています。2学期以降は45時間を超える月はなく、2021年度よりも平均は下がっています。

2023年度は育児休業を取得、2024年度は現場に復帰してフルタイムで働いていますが、第二子が誕生していることもあり、これまで以上に効率的に働くようになっています。

結果として時間外勤務は大きく減少し、最も忙しい4月でも23時間と大幅に減少しています。このままいけば、12年間でもっとも時間外勤務の少ない年度となりそうです。

その分、家庭に時間をかけることができています。

(2)月ごとの比較

次は、月ごとに比較していきたいと思います。

月ごとの時間外勤務 2017~2023年度
月ごとの平均時間外勤務 2017年度~2023年度

月ごとの推移や平均を比較すると、4月と6月の時間外勤務が非常に多くなっているのが分かります。

4月は年度初めで忙しく、6月も成績処理が始まって忙しいです。5月も忙しいですが、GWがあるため月全体での時間外勤務は少なくなっています。

勤務日を反映すると5月も忙しい月であると言えます。

7月・8月は夏休み、12月は冬休み、3月は春休みに入るため、時間外勤務は少なくなる傾向にあります。

9月から11月は、体育祭や文化祭などの大きな行事もあるため、1学期ほどではないものの残業が発生しがちです。

1月は年始休みがあり、2月は日数が少なく、3月は春休みに入るため、全体的に時間外勤務は少なくなっています。

平日1日あたりの時間外勤務 2017~2023年度
平日1日あたりの平均時間外勤務 2017~2023年度

より正確に比較するに、月ごとの勤務日数を反映して、「月ごとの平均時間外勤務」「平日1日あたりの平均時間外勤務 2017~2023年度」を見比べてみましょう。

「月ごとの平均時間外勤務」と「平日1日あたりの平均時間外勤務 2017~2023年度」の比較

2つを比較すると、非常に興味深い結果となっています。

1学期は、平日1日あたりでもっとも時間外勤務が多いのは4月ということになり、5・6・7月と徐々に減少しています。

2学期は11月が最も忙しく、10月は7月よりも時間外勤務が少なくなっています。

3学期は1・2学期に比べて時間外勤務が少ないですが、2月は平日日数が少ない割に、時間外勤務が多くなっているということが分かります。3月は、8月と同じレベルの時間外勤務となっています。

学期というまとまりで見てみると、1学期が最も時間外勤務が多く、3学期が最も時間外勤務が少ない傾向にあることが分かります。

1学期の負担をどう軽減するかを考えることが、働き方改革には必要だと思います。

(3)傾向と分析

全体的な傾向

全体的な傾向として、2018年度をピークとして、時間外勤務は減少傾向にあります。これには、
・GIGA端末の活用による業務効率化
・部活動時間の減少
・学校への慣れ
・家庭環境の変化による仕事観の変化

などが影響しています。

少しずつですが現場レベルでの働き方改革は進んでいますし、経験年数が増えることで、力の入れどころもわかるようになってきます。

家庭環境の変化で、学校にいられる時間が短くなったことで、これまでよりもさらに効率的に仕事を進める必要が出てきており、育休明けの今年度は過去年度に比べるとかなり時間外勤務が減っています。

夏休み

夏休み(特に8月)は、時間外勤務が大幅に少なくなっていることが分かります。このデータを見ると、変形労働制を導入して夏休みの時間を他の月に分け・フレックスタイムを導入するという考え方はありなのではないかと思います。

特に1学期は非常に忙しいので、夏休みから数日の勤務日を1学期に割り当て、夏休み中に教員が休日を設定し、自由に休める日が増えるなら、悪くない方法だと思います。

変形労働制だけでなく、児童・生徒がいない日は、在宅勤務やリモートワークも認められるようになると、さらに働きやすくなると思いますが、どうでしょうか。

2024年度の傾向

2024年度の時間外勤務は、
・4月:23時間
・5月:21時間

となっており、例年に比べるとかなり時間外勤務を圧縮することができています。

これは、これまで積み上げた授業準備が活用できることや部活動顧問から離れたこと、育児休業を取ったことで早く帰りやすい雰囲気になってきていることなどが要因として考えられます。

職場の雰囲気だけでなく、育児休業によって自分のマインドが変わったことも大きいです。

この後どのように変化していくのか楽しみです。

総括

今回、過去のデータを掘り起こして表にまとめたことで、自分の過去の働き方を客観的に見つめなおすことができました。

データで可視化して分析することで、1学期が忙しく徐々に残業が減っていることや、夏休みの時間外勤務が少ないことなどが正確に把握でき、自分の感覚との違いも認識できました。

自分が「この年度は忙しかった」と思っている年度でも、他の年度と比べてみると特に忙しかったわけでもなかったということもありました。

人間の記憶は、時間とともに薄れていきますし、大変だったところが強調され、その年度全体が忙しかったかのような感覚が残っていくんだなということもわかりました。

このように客観的なデータを基に、自分の働き方を見直すことは、学校現場ではほとんど行われていませんが、働き方改革を進める上では非常に重要だと感じました。

今回は、自分一人の過去データを分析しましたが、これをもっと多くのサンプルを用意して、ビックデータとして分析することができれば、教員の働き方改革を一層進めることもできるのではないでしょうか。

記事を読んでみて、自分の時間外勤務の傾向も見てみたいと思った方は、ぜひチャレンジしてみてください。自分では気づかなかった意外な発見があるかもしれません。

また、こういった分析にはデータが不可欠です。以前Xでとったアンケートでは、勤怠管理はアプリで行っているという学校が多いようですが、データを提出して終わりにせず、手元で保管しておくことも大切だと思います。

そのあたりは、以前の記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。

(4)データ配付

データの配付は、Googleフォームを使う方法で行っています。

上の記事をよく読んでいただき、記事内のGoogleフォームからお問い合わせください。

勤務時間をまとめるための表とグラフを使用することができます。

(5)まとめ

今回は、過去の時間外勤務のデータから傾向を分析してみましたが、いかがだったでしょうか。

過去のデータを振り返ってみることで、新たな発見がありましたし、データを保管して活用・分析することで様々なことが分かるという面白さもありました。

個人でやっても面白いので、学校単位や自治体単位でやったらさらに面白い結果が出るのではないかと思います。学校で提出している勤怠記録もこのように分析され、働き方改革につながっていくことを期待しています。

今回の記事が、みなさんの参考になれば幸いです。

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また、育児休業や学校の先生が生活で考えたこと、旅行の記録についても記事にまとめています。そちらも興味があればぜひご覧ください。

改めて、最後までご覧いただきありがとうございます。
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