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香取慎吾 WHO AM I 。
福岡市美術館。
私が日本でもっとも好きな美術館だ。
福岡の中心地に総面積約40万㎡もの広さを有して存在する大濠公園。
こんなにも大きくて広い土地のほとんどを、池が占める。
池の回りを爽やかにランナーが次々と走り去るが、忙しなさはなく、むしろ自然を感じる穏やかな雰囲気の公園。
池という「静」のもつ魅力がそうさせていると思う。
そんな公園の敷地内に、主のようにどんと存在するのがこの福岡市美術館だ。
茶色のレンガで建てられた美術館は、なんともいえない優雅な落ち着きがあって、入るとすごく豊かな気持ちにすらなる。
洗礼さというよりも、落ち着いた安心感。
ゆっくりと、マイペースにのんびり作品を楽しめ、観た後もゆっくりするか、と思わせるゆとりがある。
先日、友人が東京から福岡に遊びに来てくれた際も、大濠公園を案内した。
その際に初めて知ったのだ。
香取慎吾のWHO AM Iの個展がやっていることを。
へー。福岡市美術館で。
東京でもやっていたことは知っていたが、観に行かなかった。うーん、なんとなく興味が湧かなかった。
その友人が、「香取くんって本当にすごいんだね。こういうパブリックな場所でやるのってハードルがあるから。」と言っていた。一気に気になってくる。人間ってやーね。(笑)
ようやく時間を見つけて観に行った。
もちろん、なんの予習もしていない。
香取慎吾。
特に昔からファンという訳ではないが、印象としては、とにかく明るくハッピーを届けてくれる人。
女装をして「おっはー」と言ったり、孫悟空に扮したり、いいともでは毎回変わったコンセプトの衣装を着て視聴者を驚かせる。
何かに変装して面白おかしく私たちを楽しませてくれる印象だ。
そんな香取慎吾の作品って、一体どんなんだろう?
この先からは、展示の内容を詳しく記載していきます。見たくないよ、という方はお控えくださいね。
入っていきなり、真っ暗な空間に不穏な音楽というか、ノイズのようなものが流れる。
あれ?こんな感じなんだ。
絵を見て、
タイトルを見て、
ドキリと胸が痛む。
作品の中にいる人が、もし香取慎吾だったとしたら、、、?もし違っていたとしても、、、。
誰かの何かの心の叫びを感じずにはいられない。
人から浴びる視線、声、それに傷ついた何か。
ストレートな言葉が目に入るだけで、それはもう痛々しかった。
パンフレットにも載っていたが、真っ黒なキャンバスに描かれたピエロ。笑っているようにみえて号泣している。そして、タイトルが「me」。
ぎゅっとなる。
しかし皮肉にも、絵の色彩、構図、表情はとても美しく、エネルギーに溢れている。
そんな作品の中でも目を引いたのが、段ボールに書かれた絵だった。
すごく伸びやかでなぜかぱっと目がいってしまう。作品が「こっちをみて」と言っているみたいに引き込まれた。
たまにあるウィッグの作品も、非常に気になった。もしかして、これはご本人が使用していたもの?でもなんでこれが必要なんだ?役者として?それとも何かを隠すため?
変な怖いことを考えてしまう。
真っ暗なエリアを過ぎたら、いきなりぱーっと白く明るい世界にワープする。
少し歩くと、ご自身の顔写真にペイントされた巨大な作品が、香取慎吾が、こちらをじっと見ている。私も敢えて遠く離れてから、じっと見た。
明るい空間の作品は、安心感をもってそれらを楽しくながめることができた。
希望に満ちた、何か解き放たれたような、そんな解放感溢れる空間にどこかほっとする。
製作過程を納めた映像には、平日にも関わらず多くの人が群がり眺めていた。
香取さんのファンなのかな?
私みたいなたまたま観たくなった人かな?
会場を出たら、晴天の空や雲が見えて更にほっとしたし、懐深い福岡市美術館の空気が私を受け止めてくれた。
すごいものを観たし、心を揺れ動かされてビシバシと感じました。香取慎吾という方を。
すごくすごく良かったです。
そして、全てを観終わってからも私の楽しみは続きます。
個展の告知PV、文章、インタビューを観る。
これらは、自分が作品を観てから、その後に触れたいのです。
あぁ、そういうことか。
なるほど、だからか。
なんて独り言を言いながら、自分の気持ちと作者のメッセージの接地面を探す。
答え合わせをするような作業。
これがまた楽しい。
先程書いた段ボールの作品について。
依頼されたお仕事で書く絵は制限や制約があって、どうしても出来ることの範囲が決まってしまう。そういったお仕事をする中で、ストレスみたいなものを感じた時に、作業の材料として使っている段ボールに自由に好きに絵を描いていたのだそう。
すごく納得した。
うん、そう、段ボールに書かれた絵、確かにのびのびとしていて自由だった。
ちゃんと伝わっています。
そんな福岡での個展準備の様子が記録された映像が、6日福岡のテレビで観られるとのこと。
まだ楽しみが残っていた。
カンカン照りの太陽に照らされた大濠公園のひまわりたち。彼らに見送られて、私は帰宅する。
また来ます、福岡市美術館。
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