見出し画像

ハメット『ガラスの鍵』を読んで

『ガラスの鍵』ダシール・ハメット 2010.8.10 発行 光文社古典新訳文庫

内容
 賭博師ボーモントは友人の実業家であり市政の黒幕・マドヴィッグに、次の選挙で地元の上院議員を後押しすると打ち明けられる。その矢先、上院議員の息子が殺され、マドヴィッグの犯行を匂わせる手紙が関係者に届けられる。友人を窮地から救うためボーモントは事件の解明に乗り出す。

裏表紙より

 ハメットの『ガラスの鍵』は、ハードボイルド(文学で、感情を交えず、客観的な態度・文体で対象を描写しようとする手法。また、そのような小説や映画)小説の古典として知られています。また、話としてはシンプルな話です。


 賭博師である主人公ネッド・ボーモントが、親友のマドヴィックに頼まれて、殺人事件の真相を追求する物語。ヘンリーは再選のためマドヴィグが必要でした。それでマドヴィグに突っかかった息子を殴り殺してしまいます。ヘンリーは逮捕され、町を去るボーモントにジャネットはついていきます。
 最後の場面で、マドヴィグが「幸せに」と言って出ていったドアをボーモンはずっと見続けていました。

 この小説は、ハードボイルド小説の代表作の一つとして、多くの作品に影響を与えたとされています。

 ハードボイルドの魅力は、行動によって一面の真理を抽出し表現している点にあります。この小説を読むことで、ハードボイルド小説の魅力を存分に味わうことができます。

 ハメットの文体の特徴は、内面の描写がないという点ですが、この『ガラスの鍵』ではそれが顕著に表現されています。

 主人公を、ネッド・ボーモントとフルネームで表記しており、一人称による視点も徹底的に排除しています。主人公の内面が開示されることはありません。他の登場人物も全て同様です。

 そのような文体のため、登場人物の内面は、表情、しぐさ、身振りといった行動を手掛かりとして読み取るしかなく、何を感じているのかを推測することが求められます。

 そういう意味では、この作品は非常に映像的だと言えます。そのため、主人公に共感するためには、読者はそれ相応の心がけをして読まなければなりません。


 ここまでお読みいただきありがとうございました。また次の記事でお会いできたらと思います。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?