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斉須政雄『調理場という戦場―「コート・ドール」斉須政雄の仕事論』を読んで
『調理場という戦場―「コート・ドール」斉須政雄の仕事論』斉須政雄 2006.4.1 発行 幻冬舎文庫
内容
大志を抱き、二十三歳でフランスに渡った著者が、夢に体当たりして掴み取ったものとは?
「早くゴールしないほうがいい」「効率のいい生き方をしていると、すり切れていってしまう」。激流のように過ぎゆく日々をくぐり抜けたからこそ出てくる、熱い言葉の数々。料理人にとどまらず、働く全ての人に勇気を与えたロングセラー、待望の文庫化。
本書は、著者が自身の料理人人生を振り返り、仕事論や料理に対する姿勢、若いシェフたちへの思いなどをまとめたもの。
料理の世界に興味を持つ人に限らず、仕事をしている人にとっても、刺激的で示唆に富んだ一冊。
どんな年齢や職業の人にも勇気を与える言葉、金言が詰まっています。
著者は1950年生まれで、フランスに渡り、フランス料理界で12年間修行。その後、東京・三田にあるフレンチの名店「コート・ドール」の料理長として活躍しました。
「早くゴールしないほうがいい」「効率のいい生き方をしていると、すり切れていってしまう」など、自分の置かれた立場で自分らしく焦らず誠実に取り組むことを大事にしてきたことが書かれています。自分のペースで努力を積み重ねる大切さをこの本から学びました。
印象に残った文章
「言葉というものは、人と人とのかけ橋であり、自分とまわりが一緒に生きていく上での潤滑油でもあり、個人がやすらぐメロディーでもあるのだなぁ」
と思えるようになってきました。人に言われた言葉をくりかえしたり、意味を理解する作業が、自分なりの「やすらぎ」になっていた。
「言葉は体を作るものだ」とも思っています。
大切なのは、簡潔であり、清潔であり、人間性があるということです。
「整理整頓がなされていることは、仕事がきちんとなされるための基本なのだ」ということが、このお店に来てよくわかった。乱雑な厨房からは、乱雑な料理しか生まれない。大声でわめきたてる厨房からは、端正な料理は生まれない。
汚い環境では、最後まで邁進するパワーすら出てこないと思う。そして、絶えず汚い環境で育ってしまえば、後々にクリアな環境になじむこともできない。そして、清潔度は毎日やらないと保たれないものだから貯金しておけない。愛情や信頼と同じですね。
つまり、人生に近道はないということです。
まわり道をした人ほど多くのものを得て、滋養を含んだ人間性にたどりつく。これは、ぼくにとっての結論でもあります。技術者としても人間としても、そう思う。
若い時は早くゴールしたいと感じているでしょう。
それも、じれったいほどに。
ぼくもかつてはそうでした。でも、早くゴールしないほうがいいんです。ゴールについては、いい悪いがあるから。
才能というもののいちばんのサポーターは、時間と生き方だと思う。才能だけではだめだと思うのは、「時間や生き方なしでは、やりたいことの最後までたどりつかない」とぼくが感じているからなのです。
僕が新人に望むのは「環境になじんで透明になること」ですね。このお店に来た時に、余計な色がついていないというか。
要するに、そこにいる人たちと同じものを宿さなければ、透明にはなれないのです。別のものを持っていては、調理場で異物として扱われますから。
そうすると、透明になるには、今の自分が持っているものから減らすものと捨てるものを選択しなければいけません。
ここまでお読みいただきありがとうございました。また次の記事でお会いできたらと思います。
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