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不幸の手紙が届いた日

◇◇ショートショート

仁美はいつものように、ポストから取り出した郵便物をチェックしていました。その中に公共料金の通知やダイレクトメールに交じって、紫色の封筒が目につきました。その色は独特な濃い紫でした。

封筒の周りには銀色でぶどうの蔦のようなものが描かれています。レトロでお洒落なデザインだけれどちょっと、不気味な感じがする封筒でした。
封筒からはお香のような香りが放たれています。

「何だろう、この封筒」
と思いながら裏を見ると、フレンドと書いてあります。

「フレンドって、誰、気持ち悪い、怪しいなー、フレンドって誰」
全く心当たりがない手紙に、仁美は開封するのをためらっていました。

「何、この封筒、今日はホワイトデーなのに、誰がこんな気持ち悪い封筒を送って来るのかな」

仁美はバレンタインのお返しなのかなとも思い、チョコレートを贈った人の事を振り返っていました。

「私、バレンタインに誰に贈ったっけ、父さんにありがとうチョコ、先輩に義理チョコでしょう、会社の皆に一箱と、喧嘩仲間の浩史君に友チョコと、仕事先の仁さんに一個だよな・・・

そんなことを思いながら、暫く考え込んでいた仁美は、思い切ってその封を切ることにしました。何となく悩んでいるのがめんどくさくなったのです。


紫色の封筒の中には優しいピンク色の便せんが入っていました。ゆっくり広げてみると美しいペン字でこう書かれています。

「あなたは今日これから、かかってくる電話の相手にハイとだけ答えてください、そして電話を切る前にはイイエと言って切ってくださいそうしなければあなたには不幸が訪れます

「何、これって不幸の手紙ってやつ、何で私に不幸が訪れるのよ、ハイって答えろって、切る前にイイエだって、何よそれ」
仁美は手紙を見るなり気分が悪くなりました。

「不幸の手紙なのかな・・・、ホワイトデーに不幸の手紙、縁起でもない、最悪じゃない」と思っていると仁美の携帯が鳴りました。

登録していない番号からかかっています。
1回、2回、3回、4回
着信音が10回鳴ってから、仁美は意を決して電話に出ました。

「ハイと答えて、最後にイイエか・・、あー、どうしようかな・・・」

「もしもし、奥田仁美さんの携帯ですか」
ハイ
「間違いないですか」
ハイ
「今日はご在宅ですか」
ハイ
「石川仁さんご存じですか」
ハイ
「石川さんからのお届け物があるんですが」
ハイ
「もしご存じなければ持ち帰りますが」
イイエ
そう答えて仁美は電話を切りました。

それからしばらくして、自宅のチャイムが鳴りました。

「ハーイ」
ドア越しに仁美は「どなたでしょう」と訪ねると
「石川仁さんからお届け物です」
「えー」

扉を開けると、大きなカスミソウの花束を抱えたフローリストの店員さんが立っていました

その花束にはピンクのメッセージカードが添えられていました。
「あなたに届いたのは僕からの愛の告白と言う不幸のメッセ―ジです」

仁美は思わず笑ってしまいました。


もともと仁美は面白い事が大好きで、友人たちの誕生日にはいろいろなサプライズを仕掛けて楽しませてきました。でも自分自身にそんことが訪れるとは思っていませんでした。

花を送ったのは、仕事で関わるようになったイベンターの仁さん、どうやら仁美にぞっこんのようです。

【毎日がバトル:山田家の女たち】

《私には関係ないわい》


「私もホワイトデーになんか来るかな・・・、不幸の手紙じゃなくてね、若い頃はお返しが楽しみじゃったけどねー」

「お母さん、私のショートショートはどうですか」

「何か初めは気持ち悪かった、もっとストレートな表現の方がええんじゃないかなー、まあ私は自分のご褒美チョコがメインじゃったけん、関係ないけどね」

母は今日のショートショートはあまり気に入らなかったようです。本当にリアクションがストレートなので、分かりやすいです。

ホワイトデー我は関せず恋の春


母が面白いイラストを描いてくれました。
私が鏡に向かってお化粧をしているところのようです。私は何のために装っているんでしょう、母はどうやら娘にはまだ恋心があるんだと思っているようです。
「私は関係ない」と娘の姿を見ている母、楽しいコラボ作品が誕生しました。


最後までお読みいただいてありがとうございました。たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。この記事が気に入っていただけたらスキを押していただけると励みになります。

また明日お会いしましょう。💗


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