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ソースの香りは小さな嘘

私は小学生の頃に、一人で行ったらダメと親から言われながらどうしても食べたくなるものがありました。それが「お好み焼き」です。
きっと母に叱られるだろうなと思いながら、お小遣いを貰った日に、こっそり食べに行っていました。

当時は50円だったと思います。

商店街の端っこにあるお店で、のれんを潜ると、少し奥にカウンターがあって、大きな鉄板で女主人が汗をぬぐいながら、何枚も一緒に焼いていました。

壁に書かれているメニューを一つ一つ眺めてから、決まって「うどん入りの素焼きを一つ」と注文していました。

高めの椅子によいしょと腰かけて、お好み焼きが焼き上がるのをずっと見守っていました。鉄板の上での作業が面白かったのです。

女主は焼き上がった円形のお好み焼を半分に折って、お客さんに出していました。

クレープのような薄い生地から、中のうどんがはみ出しているのが、また食欲をそそるのです。

待っている間中、こんがりと鉄板の上で焦げるソースの匂いが漂います
それがまたたまらないのです。

家に帰ってから母がその匂いに気がつかないか心配でした。

「晩ごはん、もうすぐできるけんね、待っといて」
私の寄り道に気付いていない母の言葉を、私は後ろめたい気持ちで聞いていました。

私にとってソースの香りは、小さな嘘の匂いです


【毎日がバトル:山田家の女たち】

《一人で行きよったとは知らんかった》

★93歳のばあばと娘の会話です。

「私も好きでお好み焼きよう食べよった、ソースの香りがええんよねー、家族で時々行きよったけど、あんた一人で行きよったとは知らんかった」

「おかあさん、私は今も好きなんよ」

「野菜やお肉がいっぱいで、ソースをたっぷりかけるんがええんよね」

ソースの香りを思い出してまた食べたくなってしまいました。


最後までお読みいただいてありがとうございました。
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また明日お会いしましょう。💗


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