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耕して天に至る◇宇和島市遊子水荷浦の段々畑

離れた距離からその場所に近づくとまるで石垣の要塞のように見える不思議な景色があります。コロセウムのようでもありピラミッドのようにも見える風景です。

愛媛県宇和島市の三浦半島に、宇和海に面した小さな集落があります。宇和島市遊子水荷浦ゆすみずがうらです。私が未来に残して欲しい風景は、「耕して天に至る」と言われているこの段々畑です。

宇和島市遊子水荷浦ゆすみずがうらの段々畑


急な斜面に等高線に沿って小さな石で積み上げた巨大なひな壇のようにも見える段々畑は、標高が約60メートル、勾配が約40度、その急峻な斜面に何と50段もの畑が並んでいるのです。

一段一段の石積みの高さはおよそ1メートル、その石積みが重なる風景を青い海をバックに眺めると、海に突き出した段々畑の幾何学的な美しさが見る人の心に刻まれるのです。

昭和60年、取材でその景色を始めてみた時、私は「何て美しい」そう思ったのです。その風景誕生には先人たちの数々の苦労がありました。

リアス式海岸に突き出た岬の斜面は、冬は西からの季節風が強い上に、年間を通じて雨が少ない地域で、作物を栽培するために地元の人たちは苦労を重ね、山を切り開き、段々畑を作って狭く細長い畑できつい労働と共に農業を営んできました

その段々畑で以前は麦やサツマイモを栽培し、今は馬鈴薯を育てています。
畑の一番高い所は、人がやっと耕せるくらいの小さな空間で、まさに猫の額程の広さです。

急峻な段々畑での作業は並大抵ではなく、狭い坂道を天秤棒を担いで水を運んだり、収穫した作物を運んだりとかつては本当に大変だったそうです。

今は少しずつ道がついて以前よりはほんの少し楽になっているようですが、高齢化が進む中で段々畑を守っていくのは大変です。私が取材した頃はその存続が危ぶまれていました

現在は国の重要文化的景観の選定を受けて、NPO法人「段畑を守ろう会」が設立されていて、景観保存に努めているようです。

空気が澄んだお天気がいい日の、日没前に夕日に照らされた段々畑がオレンジ色に染まる風景は、昼間の姿とは違った郷愁を誘う美しさがあります。



愛媛県には未来に残したいと思う風景が数々ありますが、宇和市遊子水荷浦ゆすみずがうらの段々畑は、築いた先人の苦労とともに時代を語る風景として、未来に残しておかなければと思う、貴重な美しい風景であり愛媛の財産だと思います。

ライトアップした段々畑



【毎日がバトル:山田家の女たち】

《愛媛のいい所を県外の人たちに見て欲しいね》


「私は行ったことが無いんよ、でもテレビの映像では何回も見とる、本当に風景が美しいんよね、海と段々畑、私はあの映像を見るとほっとするんよ」

「半農半漁の地域らしい、貴重で素敵な風景なんよね」

「愛媛のいい所を残してもらって県外の人にも見て欲しいわい

先人の苦労も語ってもろてね

「あの段々畑の狭い急な所を上り下りして、それは昔の人は大変じゃったろ」

初めて見た時の感動は今も忘れられません。宇和島市遊子水荷浦の段々畑、その成り立ちも含めて、後世に残して欲しい風景だと思います。


段畑の冬夕焼や今むかし


母は未来に残したい宇和島市遊子水荷浦ゆすみずがうらの段々畑を句に詠みました。今も昔も変わらない、先人が作り上げた段々畑が夕日に映えるひときわ美しい風景をいつまでも見られることを祈ってコラボ作品を創作しました
私も、ずっと残して欲しいと切に願います。


最後までお読みいただいてありがとうございました。たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。この記事が気に入っていただけたらスキを押していただけると励みになります。

また明日お会いしましょう。💗


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