おばあちゃんからの手紙
◇◇ショートショートストーリー
都会に住むユリ子さんはご主人と二人暮らし、毎月楽しみにしていることがあります。月末になるといつも宅配の段ボール箱が届くのです。
その中にはみずみずしい野菜がたっぷり入っていて、時にはその地方ならでは食材も入っています。
ユリ子さんが一番楽しみにしているのは、宅配に添えられている農家の人からのお手紙です。
毎回優しい文面で思いやりと、暖かさに溢れています。
ある日のお手紙です。
「桜が満開になりました。春風に揺られ舞い落ちる花びらが道や川を鮮やかな桜色に彩っています。ユリ子さんはお元気にお過ごしですか?都会での生活は、ぎすぎすして、生きずらいかも知れませんが、お野菜をたっぷりとって、ビタミン補給してください」
そんな文面に、ユリ子さんはとても癒されていました。
ユリ子さんは、両親を早くに亡くして、中学生の時からお婆ちゃんに、育てられていました。そのお婆ちゃんが、二年前に、亡くなったのです。
結婚してすぐに亡くなったので、宅配便のお手紙が、まるでお婆ちゃんから届いたもののようにうれしかったのてす。
月末に、ピンポンと、玄関のチャイムが鳴りました。そろそろ野菜の宅配が届く頃だと、いそいそと取りにき、早速、段ボールを開けると、一番楽しみな手紙が、入っていませんでした。
「あれっ、お手紙が入ってない、どうしたんだろう、お婆ちゃん、病気なのかなー、手紙忘れたのかなー」と心配になって、その日1日、ずっと憂鬱でした。
帰ってきたご主人の壮介さんに、「いつも注文しているお野菜の宅配なんだけど、野菜は届いたんだけど、手紙か入ってなかったんだよ、お婆ちゃん元気なのかな~」
「そんなに心配なら、送り主に電話入れてみたら」と、言われましたが、ユリ子さんには、電話を入れる勇気がありませんでした。
その翌日、玄関のチャイムが鳴りました。ユリ子さんは宅配を受けとり、段ボールを開けると、みずみずしい夏みかんがたっぶり入っていました。そしてそこには手紙が添えられていました。
「ユリ子さん、今回は特別に、夏みかんもお送ります、わが家の庭の木になったものです。爽やかな香りと味を楽しんで下さい、初夏の香りを送ります、遠く離れた田舎のおばあちゃんより」と、書かれてありました。
ユリ子さんは、嬉しさと共に、安心してにっこり笑って、段ボールの中の夏みかんのかおりを思いっきり吸い込みました。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《メールの時代に手紙、愛を感じらい》
大好きなお昼寝から目覚めたばあばとの会話です。
「あんた、宅配にお手紙が入っとる言うんは、うちの高知からの宅配がヒント何かね、あれはええよねー、文面が本当に優しいけんねー
「そうです、でも素敵なお手紙よねー」
「ほうよ、送られてきたもんの有難たさが違わい、ちょっとした気遣いが心にしみるんよね、寂しい人はなおさらよ、メールの時代にお手紙を添える、ええねー、愛を感じらい」
本当にそう思います。文字にそして文章の端々に人の気配を感じる手紙、私も時折出そうと思います。
【ばあばの俳句】
お勤めの香煙ゆらぐ浅き夏
母は、毎朝仏壇に手を合わせ、お経を唱えて一日が始まります。亡き父への思いがそうさせているようです。特に、月命日にはしっかりとお勤めをします。
お線香の煙の揺らぎが、私たちの心を落ち着かせてくれます。先祖や父に見守られているようなありがたい気分になるのです。私も引き継いでいかなければと思っています。
▽「ばあばの俳句」「毎日がバトル:山田家の女たち」と20時前後には「フリートークでこんばんは」も音声配信しています。お聞きいただければとても嬉しいです。
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