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観光記「余寒の京都旅」


余寒の京都旅シリーズをご精読頂き誠にありがとうございました。

ここでは本編で語られなかった部分を補完する内容になっています。大変クセの強い文章となっていますのでご興味あるところだけでも読んでいただければ大変嬉しく思います。それでは旅の締めくくりとなる観光記を御覧下さいませ。




1.京都府立堂本印象美術館


人間くささ

天才芸術家って私生活も偏屈なイメージがあります。我々には決して理解できない考え方といいますか、この世の真理を知っているというか。堂本印象もその一人だと思っていました。美術館に訪れて作品に触れて私の思い込みは間違いだとすぐに気づきました。我々と同じ人間臭さを感じたんです。

青年時代の印象は大阪や京都の妖艶な女を数多く描きました。写実的かつ個性的な印象の女性像はどれも魅力的で素晴らしく、すぐに人気者になった早熟の天才でした。なぜ堂本印象を人間臭いと思ったのか。それは堂本印象がのちに宗教画を描くようになったからです。本能の赴くままに女性の美しさや艶やかさを描いてきた印象さん。年を取って己の人生について深く考えるようになったのでしょう。人生観と向き合うのに一番適したツールは宗教です。神を表現することで自身の歩んできた道のりを確認したかったのかもしれません。女性の美から神へと移りゆく様を見て、私は堂本印象を人間くさい人だと評しました。

現代の日本人は宗教に対して否定的です。世界基準で圧倒的に幸せ度が低いのは、宗教観を否定してきた戦後教育が原因にあります。私は宗教を原子力と同じようなものだと考えています。とても便利なものだけれど使い方を誤ってしまうと取り返しがつかなくなる。用法用量を正しく守っていればこれほど優れた精神安定剤は他にないんですけどね。

今回は京都検定合格者特典の優待サービスを使って無料で利用することができました。衣笠という京都市街のかなり奥まった場所にありますが、機会があればまた訪れてみたいですね。堂本印象の作品に触れて改めて"好き"を確認することができました。通常観覧料は一般510円と公営なのでかなりお安い値段となっております。気になる方はぜひ行ってみて下さい。オススメですよ。


美術館テーマ

堂本印象美術館といっても印象の全作品が常時展示されているわけではありません。テーマによって展示されるものは大きく異なります。私が訪れたときのテーマは『若き日のロマン、大正時代の印象さん』でした。メトロや木華開耶媛を目当てにしていたのでとても残念でしたが仕方ありません。

本編に書きましたが絵葉書を二枚購入し、百均で手に入れた額縁に入れて現在トイレに飾っています。わたくしは本物志向のコレクターではないのでこれで十分。毎日堂本印象作品を見ることができるのでとても幸せです。



2.立命館大学国際平和ミュージアム


はじめに

初めて私の記事をご覧になる方もいらっしゃると思うので、私の思想を軽くご紹介したいと思います。いつも観てくださっている方々は読み飛ばして下さってもまったく問題ありません。

私は中道の穏健派です。今から話すことは『戦争と平和』というテーマについてです。非常にセンシティブで宗教・政治・スポーツと同じくらい気をつけなければならない話題の一つとなっています。特定の信念を持つ人が見れば不快に思うことがあるかもしれません。もちろん感想を抱くことは自由です。私の記事をみてもし憤りを感じたなら私とは関係のないところで主張していただければと思っています。私は自分の言葉で国や人を動かしたいとはまったく思っていません。私自身が見ず知らずの誰かに強制されるのが大嫌いだからです。多様性という言葉が日常に染まりつつある昨今ですが、そういう考え方もあるんだなと話半分で聞いていただければ何よりです。政治とはこうあるべきだ、安全保障はこうしたほうがいい。そのような考えを持っている人はここから先に書いてある文章を決して読まないで下さい。なぜここまで丁寧に注意喚起しているかというとGoogleマップの口コミで過激な意見が見られたからです。博物館そのものの批判に見えましたが、よく読んでみるとガイドさんの偏った説明をしたことへの不満について書かれていました。実際行ってみればわかることなのですが「まぁそう捉える人もいるよなぁ」という展示物があったのは事実です。戦争の歴史は政治利用しやすい題材の一つですからね。

なぜこう長々と講釈を垂れているのかというと誤解を生じたくないからです。シンプルに博物館の感想を書きたいだけなんです。前置きが長くなってごめんなさいね。では話を進めたいと思います。


インタラクティブ

博物館や美術館は基本一方通行です。

もちろん見学進路の話ではありません。メディアの方向性の話になります。来場者は展示作品の表現を受け止めるだけの存在で、展示物に介入することはできません。入場料を支払ってあるものをみる。作品に落書きしようものなら即お縄です。テレビや新聞も単一方向メディアに該当します。視聴者や読者が直接彼らにクレームを入れたところで態度が変わることはありません。あるものをみる。それがマナーでありルールでした。

立命館大学国際平和ミュージアムは違いました。展示物に対し見学者が意思表明できる博物館だったんです。皆さんにとってはSNSのほうが馴染みがあるかと思います。Xやインスタグラム、TikTokも双方向メディアに該当します。鑑賞者も表現者になれるイマドキの博物館でした。


学んだこと

武器を持たなくても戦争はある。

平和と呼ばれる日本でも戦争は起きています。戦争を「いじめ」に置き換えれば多くの人に伝わるかと存じます。言葉は武器です。いじめで人を殺せます。いじめも立派な戦争です。虐殺と置き換えてもいいのかもしれません。

人と人が関わるとどうしたって争いは起きてしまいます。完全平和を実現するためには人間関係を断ち切って山奥に隠棲し自給自足するしか他にありません。人間は一人では生きていけません。人類は集団を形成し組織を作ることで繁栄してきました。みんながみんな善人ではありません。平和を実現するために乗り越えなければならない問題が山程あります。人類最大の課題といっても過言ではないでしょう。言葉は武器だと書きました。逆に言葉は命を救うこともあります。自分のことしか考えられない人は自分のことで精一杯なだけ。他人を蹴落として成り上がりたい人は自分の首を絞めていることに気づいていないだけ。感情の赴くままに言葉を発するのではなく、一呼吸置いてから言葉を口にする。たったそれだけのことで誰かを傷つける意志は消えていきます。それはあなた自身を救うことにも繋がります。

平和の尊さを訴えること。戦争の悲惨さを伝えること。これらはとてもカンタンなことです。平和を実現するために我々はどうすればいいのか。国際平和ミュージアムは歴史を提示し見学者に問いかけていました。答えは書いていません。それはつまり己自身で答えを導き出す、ということになります。答えは人の数だけ存在します。戦争と平和というテーマは一方通行で考えるべき事柄ではありません。双方向が大事であるということを示唆しているように私には見えました。

以上が私の導き出した解答になります。大学受験までは一つの答えを求められますが、大学では答えが一つではない社会問題を考えていく場所なんでしょうね。皆様もぜひ立命館大学国際平和ミュージアムに訪れて自分なりの一つの答えを導き出してみて下さい。義務教育の平和学習とはまったく違う視点がきっと見つかると思います。


戦時中の京都

立命館大学国際平和ミュージアムに訪れた理由は二つあります。一つ目は堂本印象美術館のすぐ近くというアクセス面。もう一つは京都の博物館だから戦時中の京都の様子も展示されているに違いないという予感からです。私の予感は半分アタリ半分ハズレとなりました。京都第一赤十字病院が米軍に接収されている写真や、進駐軍専用キャバレー"グランド京都"に吉本興業の看板があったりと終戦直後の京都を垣間見ることが出来ました。半分ハズレというのはあくまでテーマは国際平和であったため、期待したほどには京都関連のモノは展示されていませんでした。路面電車ってこんな感じで走ってたんだとか、有名施設をアメリカ軍めっちゃ接収して楽しんでたんかとか、少ないながらも当時の京都の雰囲気を知ることが出来て、もっと見たかったのが正直な思いですが、大変有意義な時間を過ごすことが出来ました。


驚いたこと

戦争の歴史についてわたくし割と詳しいほうなので淡々と展示物を見ていたのですが、最後の参加型展示を観て驚愕しました。写真があれば一目瞭然なのですが撮影禁止だったので言葉で説明致しますね。メルカトル図法の世界地図が一面にデカデカと貼られていて、そこには国家名と軍事に関するデータが書かれていました。「あなたが関心したもの」「知らなかったこと」「心動かされたもの」をそれぞれカラーマグネットを使ってその国に置いていくという参加型展示物で、アメリカや中国、ロシアといった軍事大国や自国日本にマグネットが集中する中、捻くれ者の私は目線を左下へと移動させました。

え?ちょっとまって?

インドは核保有国の一つで中国と接しているアジアの大国です。「武器輸入世界第二位」という文字をみて超ビックリしました。インタラクティブがどうとか上のほうに書きましたが実は参加型博物館なのに参加しないでずっと冷笑系傍観者を気取っていました。衝撃の事実に驚いた私は素早く手に取り「学びがあった」という意思表明のマグネットをインドの上に置きました。皆様はご存知でしたか。ITに強いものの雄大で悠久の時が流れてカレーが美味しい平和な国というイメージだったので、近年のインドで戦争を連想したことは一度もありませんでした。ちなみにインドの武器輸入の主な取引先はロシアになります。おそらくイギリスに長らく支配されたことによる反発から来ているのでしょうね。軍事大国第二位の隣国、中国を牽制する目的もあるのでしょう。なんで戦争していないのにそんなに輸入しているんだと疑問に思いましたが、2022年世界銀行のデータを調べてみたところ日本は世界第七位で12.91億米ドルの武器輸入をしていました。他国のことを言える立場ではありませんね。


混雑具合

立命館大学国際平和ミュージアムは北山周辺を観光する人たちが立ち寄らないような奥まった場所に位置しています。閑静な住宅地の傍にありロビーも閑散としていたのでのんびり見れるかなぁと思っていたら館内はまさかの大人数。スーツを着ていた人がいたのでおそらく団体さんだったのでしょう。修学旅行シーズンは特に混雑の覚悟はしておいたほうがいいかもしれません。



3.家路へ

「余寒の京都旅」最終回の続きになります。一つの記事にするまでもないということで観光記に収めることにしました。いわゆるエピローグになります。


市営地下鉄 烏丸御池駅

京都市街のへそに位置する烏丸御池駅。

正面に志津屋が見えますが、コンビニ、ドラッグストア、本屋、喫茶店などの駅ナカ施設が充実しているので、小腹が空いたときやちょっとした日用品を購入することが出来ます。地下鉄って自販機しか置かれていない事が多いのでテナントやATMがあるのは大変ありがたいです。


20世紀の京都
「京の四季」

京都市営地下鉄開業記念20周年を記念した京都市内にある小学生の卒業記念作品です。

京都を一枚で表現するのってなかなか難しいんですよね。四季も描かれていていい感じに収まっていました。


京阪電車 三条駅

烏丸御池駅から三条駅までの距離は1.2km。

普通に歩ける距離なのですが、この日は早朝から歩き回っていて両足はとっくに限界を迎えていました。"京都の観光名所を一日で制覇"なんていうのが一時期話題になりましたが、京都って行きたいところがたくさんあるので結局自分の限界を超えたスケジュールをついつい組んでしまうんですよね。私の場合は午後三時には家に帰りたくなります。京都の夕暮れって最高に美しいんですけどね。


発車標を確認します。

曜日や時間帯によりますが三条駅であれば確実に座ることが出来ます。祇園四条駅は運が良ければ、五条・七条だとまずムリですね。


プレミアムカーは全席指定なので京都旅行の帰りに利用するのは全然アリです。ただし直前だと外国人観光客も利用するため、満席で買えないことが多いですね。

料金は枚方市・樟葉だと400円。昼飯一食分のお値段なのでなかなか難しいところです。


前にも書きましたが、新幹線や近鉄特急にある背面折り畳みテーブルはついていません。プレミアムカー車両限定となっています。つまり特急に乗ってもお弁当が食べられない仕様になっています。

車内のニオイマナーがよく話題に挙がりますが、テーブルをなくすという動きが近い将来生まれてくるかもしれませんね。そのほうがコストカットできますし、PCを使いたい人はビジネス車両を新たに設ければいいだけです。

個人的には駅弁の風習はずっと残ってほしいんですけどね。


タイル張りの水道設備。

ホーム上にあるのが時代を感じます。


京都旅行で私が乗るのはいつも緑と橙ばかり。

青色に乗りたいなぁ。


15時03分発淀屋橋行き特急が来ました。

京都検定合格者特典を使って無料で施設を見学するという旅でしたが、1810円分もお得になったのは想定以上でした。2024年7月14日に夏の京都検定が開催されます。三級も合格者特典を利用できるのでぜひチャレンジしてみて下さい。

最後まで読んでいただいた方に今後の予定を少しお伝えします。実はこれで終わりではありません。再び優待サービスを使う機会が巡ってきます。伏見山登頂旅シリーズのあとに投稿する予定なのでご期待下さい。ご精読誠にありがとうございました。次回、新しいシリーズを投稿するのでそちらもよろしくお願いいたします。



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追記

note公式マガジンに記事が掲載されました。ありがとうございます。


『最近の学び』応募作品の中で、スキの週間一位を獲得しました。皆様ありがとうございます。感謝!!

2024/05/20


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