【2023.8.4.】2024年に向けた新しいリハビリテーションの形11「時代を読めないセラピストの末路」
このコラムはシリーズコラムです。
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昨日のコラムにも書いたけど、これからは事業所の運営を担う人の考えている方向性がものすごく大事になる。それこそ事業所がとん挫しかねない事態に陥ることにもなりかねない。
今日のコラムでは
「自分は訪問のリハができればいい。訪問看護からのリハでも、病院からの訪問リハでもどっちでもいいんだよ。制度改定なんて上の方の人が考えることで自分とは無関係。自分は純粋に仕事として訪問できていればそれでいい。」
そんな風に考えている人に読んでほしいコラムです。
たぶん、訪問リハにかかわっている多くのセラピストはこんな風に考えているのではないでしょうか?
制度改定なんてどうでもいいことで、自分は毎月の給料がもらえたらそれでいい。
心身機能とか、活動と参加へのアプローチなんて話は研修会で聞くけど、正直そんなことどうでもいい。訪問リハやっている人の中でそんなこと聞くのは研修会の中だけのことで、自分の事業所ではそんなことまで考えているセラピストはいないよ。
訪問看護ステーションの人員基準が変わるかも?って言われても正直何のことかわからない。そんなことは管理者さんが考えるべきことで、なんかあったら何とかしてくれるんじゃないの?
そんな風に考えているセラピストはまだまだ多い。僕の周りのもたくさんいるし、正直制度改定のことを考えながら働いているセラピストはほんとに少数派です。
ぼくは、非常勤掛け持ち作業療法士として複数の職場で働きながらいろんな管理者さんや経営者さんと話をしてきた。時代の先を考えている人もいれば行き当たりばったりの人もいた。だからと言って僕が勤務している期間に事業所がつぶれたことはなかった。退職してしばらくしてから事業が譲渡され実質閉業となった事業所はあった。
僕は50代の作業療法士としてあと10年間くらい働きづつけるための具体的なビジョンがある。でも、自分のこれからの給与に漠然とした不安を抱えているけれど、どうしていけばよいのかわからないって若いセラピストにはたくさん会ってきた。
そんなセラピストさんに言いたいことは、普通のセラピスト、管理職でも経営者でもないセラピスト、ただのコマ・兵隊みたいな普通のセラピストであっても、これから20年30年と地域リハビリテーションの現場で働きたいなら、時代を読んだり、制度の方向性のことを考える習慣を身に着けるほうが良いということです。
これからの時代は普通のセラピストであっても、時代を読む感覚を身に着けることが、適切な事業所選び、適切なリハビリテーションの提供の仕方、セラピストとしての適切な成長につながっていくと考えています。
日本という国にどれくらいの余力とお金、財政基盤があるのかどうかまでは僕にはわかりませんが、診療報酬や介護報酬を基盤とした事業所で働いている以上、どんどんお給料が右肩上がりになるということは考えにくい。だからこそ、今働いている事業所がホワイトなのかブラックなのかってことに気づくことはものすごく重要ではないでしょうか?
事業所の将来性があればその事業所で働き続けることはできますが、事業所が閉業してしまえば働き続けることはできません。
病院という大きな組織で働いているから大丈夫と考えているのでしょうか?
その病院のリハビリテーション事業における方向性が時代の方向性とマッチしているかどうかの判断はどうされていますか?
診療報酬改定は2年に1度、介護報酬は3年に1度改定されています。6年に1度は同時改定。そのたびに厚労省はいろいろなアナウンスを出してリハビリテーション領域で働くセラピストに対して、方向性を示しています。
あなたが勤務する事業所にこれらの3つの報告書を読んだことのあるセラピストや先輩や上司はどれくらいいますか?
平成16年 高齢者のリハビリテーションのあるべき方向
(PDFが開きます)平成27年 高齢者の地域におけるリハビリテーションの新たなあり方
(厚労省のサイトに移動します)令和5年 地域における高齢者リハビリテーションの推進に関する検討会(厚労省のサイトのPDFが開きます)
ぜひ職場で聞いてみてください「読んだことありますか?」って。
誰も読んでいないとすれば、あなたの勤務する職場のセラピストは少なくとも「これからのリハビリテーション業界の時代の変化を読む努力をしていない」と言えます。
令和5年の検討会の報告書については、ぼくも先日知ったばかりなので、またまだ知られていませんが、平成16年と平成27年の報告書は最近とは言えない時期に出されていますからね・・・
これらの資料を読んだり、厚労省の改定議論の資料を読んている範囲では、2024年の同時改定ではほとんどの事業所は問題ないと思います。大変にはなるだろうけどね。
でもね2030年同時改定後はちょっといろいろな課題を抱える事業所が多くなると予測しています。
とくに訪問リハビリテーションと訪問看護ステーションの領域については大きく状況が変化しそう。
医師とリハの連携
これは訪問リハ、訪看リハともにいろいろ大変な状況になる。とくに訪問リハにおいては、他院の患者さんを訪問する際の情報提供をしていただける医師の要件が2024年同時改定で変わる可能性が大きい。
以下の図に示している医師の要件の猶予期間が令和6年の3月末なんですよね。
そうして、ぼくの予測ですが、2030年の同時改定においては、訪看リハにおいてもリハの指示を出す医師については何らかの要件が設けられると予測しています。そうなってくると訪問リハは自分ところの事業所の患者さんの訪問はできるけど、訪看リハはかなり厳しいものになるでしょう。
とにかく医師との連携が重要性を増す。
訪問看護ステーションの人員基準のこと
これは前回の改定議論でも話題となった、訪問看護ステーションの人員基準としての、看護師6割基準ね。
この騒動を知らないセラピストや管理者さんもまだまだたくさんいるようですね。2024年の同時改定では、訪問看護ステーションの人員基準として看護師が6割というものになることはないと思いますが、2030年の同時改定ではおそらくこの看護師6割基準になってくると予測しています。
訪問リハ・訪看リハのアウトカムのこと
どのような評価を尺度とするのかというのは議論の対象となるだろうけど、何らかの基準は設けられそう。
特に現時点でも要支援の1年超の訪問は減算ですが、2030年の同時改定では、減算ではなく要支援~要介護2までは訪問リハ・訪看リハは1年までというような制限がかかると予測しています。
普通のセラピストだからこそ
普通のセラピストだからこそ、これからどうすべきかってことを知っておく必要があると思います。
ここまでのコラムで書いたことを上司の方や管理者さんが何にもご存じない事業所であればちょっと不安だなと思いますよ。
事業所としての明確な方針やリハビリテーションの進め方についての考えが何にもない事業所は、事業が存続するとしてもリハビリテーションの適正な提供はできないと考えます。将来的な運営は厳しくなる可能性もあります。
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、リハに興味のある看護師さんや介護職さんであれば、「これからのリハビリテーションの時代の変化を読むことのできる感覚」を身に着けてほしいなと思います。
大阪の作業療法士のやまだは臨床経験30年超、現在55歳非常勤掛け持ちで生活期領域の事業複数を掛け持ち勤務しています。0歳から100歳までの担当経験があります。そんな経験を活かしながら、これからのリハビリテーションの在り方について色々と考えています。
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