【読書メモ】 「職場のメンタルヘルス」を強化する 4章 ストレスを前向きに捉える人材の育て方

第1章 改善されない「経営課題」としてのメンタルヘルス
第2章 メンタルヘルスに対する職場での正しい理解
第3章 コストから投資に変えるメンタルヘルス対策の考え方

書籍を読んで理解をまとめていきます。書籍の内容を引用しているわけではないので、一部齟齬があるかもしれませんが、それを踏まえて読んでいただけると助かります。

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要約

本章ではメンタルヘルス・マネジメントの一環としての人材育成について解説する。ストレスに強い人と弱い人の違いは、物事の捉え方の違い。捉え方に酔ってダメージが違うので、捉え方に関する考え方であるABC理論とSOCという考え方とポイントを紹介する。そして、睡眠時間などの生活態度や、部下とのコミュニケーションについても説明する。

4−1 ストレスに強い人と弱い人は何が違うか

ストレスは主観的な存在であるので、ストレスに強い人と弱い人の違いを理解するために、ABC理論を知るのが良い。この理論は、ある出来事A(Activationg Event)が発生したときにその結果として起きるストレス反応C(Consequence)が生じるかは、その人の捉え方B(Belief)次第としている。出来事Aとストレス反応Cが1対1で発生するわけではない。怒られた(A)が気持ちが沈んだ(C)を引き起こしたと思いがちだが、分きして頑張った(C)を引き起こす場合もある。このストレス反応Cの結果が、捉え方B次第である。だから、同じ怒られた(A)があっても、恥ずべき事(B)と捉えているのか、期待されている(B)と捉えているのかにとって結果Cが異なるのである。

第1章の事例でいえば、メンタルヘルス不調から復帰したA君への対応として、ストレスのある仕事から遠ざける(A)や残業を無くす(A)を変えることもできるし、仕事は成功させるべきという捉え方(B)非合理的な考え方から合理的な考え方に修正することもできるわけである。例えば、「できることばかり無難にこなすよりも、この仕事に挑戦すると成長につながるよ」「失敗しても、会社が潰れことも、君がクビになることもないんだよ」など声掛けが良いだろう。こうすると、重要な仕事を任されたという出来事(A)は変わらずとも、捉え方Bが変わり、ストレス反応(C)が変わるのでその仕事に注力できるようになる。もちろん、非合理的な考え方を毎回上司が修正するのではなく、自律的に自分で合理的な考え方に変えてもらうことが重要である。

このような非合理的な思考は、10種類の認知のゆがみとして類型化されているので紹介する。
・全か無か思考:物事を白か黒かと両極端に捉える
・過度の一般化:1つ失敗すると、全部失敗すると思う
・心のフィルター:出来事をすべて悪い方に解釈する
・拡大解釈と過小評価:嫌な事を大げさに捉え良い部分を見ない
・感情的決めつけ:自分の気分によって物事を判断してしまう
・マイナス化思考:中立的なこともマイナスに解釈する
・結論の飛躍:現実とはことなる悲観的な結論を考えてしまう
・すべき思考:理由なしに「〜すべき」と考える
・レッテル貼り:部分的な情報から全体をネガティブに捉える
・個人化:嫌なことをすべて自分の責任とする

4−2 睡眠時間と抑うつ度の関係

睡眠時間と抑うつの関係は様々な研究でも明らかになっていて、睡眠時間が6時間を切ると抑うつ度が上昇する。5時間を切っていると半数が抑うつ状態にある。睡眠時間を削って働くことは、メンタルヘルス不調のリスクを高める。さらに、糖尿病、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、がんのリスクも高める。日本人は睡眠時間を削って仕事を仕上げることが美徳として評価される文化があるが、睡眠時間を適切に確保しなければパフォーマンスは上がらない。8時に起床した人が3時まで起きていたときの集中力は酒気帯運転レベルで、24時間後の8時にはビール大瓶1本の飲酒後と同等になる。睡眠時間を削って労働することは、さらに睡眠時間を削る悪循環になる。

職場のマネジメントによる対応としては、例えばノー残業デーを作り強制的にどこか1日早く帰宅させるのが効果的である。その日にきちんと睡眠時間を確保できればパフォーマンス高く仕事に挑める。「ノー残業デーなどあっても、その日の仕事を次の日にやらないといけないから余計に辛い」と考えるかもしれないが、1日でも睡眠時間が確保できればコンディションが整い仕事は効率化される。さらにノー残業デーでには、もう一つのメリットがある。他の人も同時に帰宅しているため、職場からメールが送られてくることもなく、心の底からリフレッシュできる。

4−3 ストレスを上手に対処できる人の共通点

ストレスがあっても健康を保つことができる人たちの要因が、前向きで合理的な捉え方であるSOCである。SOCは、次の3つの要素から構成される。
S(有意味感):辛いことに対してもなにかの意味を見出す感覚。例えば、料理店の修行で皿洗いをするときに、タレの味を知ることができると考えられる。
O(把握可能感):困難な状況を、パニックにならず冷静に事態を分析して対応できる段取り力。休日出勤するような忙しさにいつまでも続くと考えずに、繁忙期はいつまでだからそれまでは睡眠時間を確保して乗り越えようとする。
C(処理可能感):辛いことに対して、「なんとかなるさ」と思える。仕事で失敗しても命まで取られることはない、と考えられる。
メンタルヘルスの研究の中には、労働時間や仕事の難易度、人間関係よりもSOCは、の高さが精神的健康に影響していることを示すものもある。SOCが高ければ、忙しくて労働時間が長くても「こんな仕事を任せてもらえるなんて幸せだ」と前向きに考えられる。

SOCを高めるには、日々の生活の中でSOCの感覚を意識して実践していくことが重要になる。つまらない仕事を押し付けられたら、意味を必死に探す。忙しいすぎても、見通しを立て終わりを考える。成果が出なくても、人生が終わるわけではないと気持ちを切り替えるなど。SOCの高い上司の下で働く部下のSOCは高いことが明らかになっている。部下のSOCを高めるには自分のSOCを高めるのが重要だ。若い世代は、SOCをが低い傾向になるので、若い世代にはよりSOCを意識しながら接する必要がある。

4−4 論理と情緒のバランスを重視した育成

経営者や管理職は、部下を叱らなくてはならないことがある。褒めてばかりはいられないことがある。褒める場面では、そんなに気を使わなくても、ネガティブな結果(C)になりづらいが、叱る場面ではそうではない。ミスで本人が落ち込んでいるときに叱らなくては習いことがある。しかし、叱り方を間違えるとプライドをへし折り、モチベーションを低下させ、常に非合理な信念(B)を持つようになってしまう。だから、叱るときに避ける5つのルールを紹介する。

1. 全否定
全然ダメという叱り方は、直す場所も分からないから成長につながらず、非合理な信念(B)を持ちやすい。全否定する場合はチェックするときに真面目に目を通してないときに発生しやすい。修正すべき要点を論理的に説明するのが良い。ミスを叱って人を叱らないようにする。

2.他人との比較
「〇〇さんの方ができが良い」という叱り方は、本来の目的から目をそらし〇〇さんよりできの良いものをとなりやすい。そして、人には長所短所があるから、そこを叱られるのは非合理である。比較するなら、本人の過去や未来と比較する。

3.Why+過去の否定形
「どうして確認しなかったんだ」という叱り方には、答えようがない。叱る側は気分がいいかもしれないが、忘れていたか、角煮が必要と思わなかったかなので、聞く意味がない。答えを引き出せても、次につながらないものは非合理的な質問である。そういう場合は、How+未来の肯定形で聞く。「次に同じようなことになったら、どうする?」というのが良い。

4.叱るだけで終わる
叱られた側は叱られたというネガティブな結果を心に残しやすい。面倒でも、叱る全保に評価や期待する言葉で挟むサンドイッチ・テクニックがよい。「最近よくなっている」「準備不足だった」「期待しているから次は頼むよ」のようにする。

5.大失敗したときにだけ叱る
大失敗したときには、本人が重く受け止めて反省している。そして、最近の若者は叱られなれてないので、いきなりドカンと叱られるとダメージが大きすぎて職場不適応になる。

ストレスを前向きに捉える事のできる人材にとって、論理と情緒のバランスが重要である。しかし、論理だけでは乗り切れない場合もある。自分の努力だけではどうにもできないとき「まぁそんなこともあるよね」と、情緒性で前を向けるようにする。論理で説明できない事態には、非合理な信念につながりやすいので、情緒性でサポートする。頑張っても失敗すると、事実を受け入れ、努力してきたプロセスを評価するような、論理と情緒のバランスを取ることが重要である。

仕事での最大の目標は、やり遂げて結果を出すことなので、その中で自分に不足しているものを自覚し補うための資源を分析できる力が必要だ。「仕事は一人で」と考えるのは非合理な思考の典型のため、サポートを活用する力を前向きに評価することが重要である。企業での報連相もサポート活用のステップである。上司、同調、部下といった資源を活用できることも会社で働くメリットなので、活用していきたい。

感想

なにかストレスがかかる事象があったときに、ABC理論にそって自分の思考を整理するだけでも非常に高い効果が期待できるように思った。(おそらく認知行動療法にあるんではなかろうか・・・)ストレスを感じたときは、気晴らしのコーピングをするようにしていたが、今後はABC理論を使って、自分の捉え方Bを見直す習慣をつけたい。
さらに、SOCを使ってポジティブな捉え方に変更できないかの訓練もしてみたいと思った。研究によっては、労働時間などの制御よりもSOCが効果のあったとされるところから非常に大きな興味を持っている。SOCに関する書籍を調べてみたところあまり多くはなさそうなので、比較的易しそうであった『ストレス対処力SOCの専門家が教える "折れない心"をつくる3つの方法』を調査してみたい。

非常によい本なので、読んでみたいと思った方はぜひ買ってみてください。私の要約よりも短く簡潔にまとめられた各章のまとめも本に記載されていますので、読みやすいです。


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