そういえば、久しぶりに悪夢を見た。

デエビゴ10mg。

弱い薬だ、でも、じんわり効いてくる。

寝る事以外の全部を放棄しないと薬の効き目は感じられない、
でも、その方が自然だろ?気に入ってる。

だけどこの薬、副作用が有る。

悪夢を見るのだ

PTSDやトラウマがある人には処方されないらしい?
心をえぐる悪夢が現れるから?
まぁ、そもそも睡眠の効きが弱くてダメなのかも。

でも私はデエビゴの自然さが気に入ってるし、悪夢ごときには屈しない。

悪夢は所詮、架空の世界、どれだけ心をえぐろうとも現実では無い。

デエビゴを飲み、じんわりした睡眠に誘われて眠りに落ちた。


私は目が覚める、でも、本当はまだ夢の中、私はソレに気付いてない。

薄暗い寝室のドアがそっと開かれ黒い人影が侵入してくる。

妻では無い体格の人影が近寄ってくる。

即座に反撃出来るように身構えたいのに、もちろん身体は動かない、そういうものだ。

ソレでも血管チギレるぐらいチカラを込めて左手だけ持ち上げた。

妻はどうなった?コイツはなんだ?
何故さっきから身体が動かない!?

まさに恐怖だ。

黒い人影も恐ろしい、ソレに対抗出来ない自分の無力さも恐ろしい。
何が起こっているのか理解できない事そのものが本当に恐ろしい。

黒い人影は抗う事の出来ない私にゆっくりと近づいてくる。

目を見開いてもよく見えない。

叫びたくても喉がカラカラで息も出ない、なのに汗がビッシリ。

何も出来ない自分があまりに惨めで涙が出る。

心臓の音だけけたたましく鳴り響く、それ以上に脳に流れる血の音が騒がしい。

ドクドクドクドク

音もない暗い部屋、
黒い人影が、
私の挙げた左手を掴んだ。

ビクっと跳ねた私のカラダ。

極度の緊張感からくる目眩に吐き気、
そして遅れて流れ込んでくる安心感。

黒い人影は両手で優しく私の左手を握ってくれたのだ。

それは暖かくて安らぎに満ちている、愛で溢れている、心が満たされ解けていく。

私は気付いた。

黒い人影は私の為にやって来たんだ。
私を救ってくれる存在だったんだ、今気付いた、ずっとずっと待ってたんだよ。
私がずっと求めていたもの、ようやく来てくれたんだ!

感動で涙が止まらない、感謝の気持ちが溢れてる、ずっとあなたに会いたかった、会ってこうして欲しかったんだよ。

今なら分かるコレがきっと···



ソコで目が覚めた。

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