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mRNAワクチンの衝撃 ———The Vaccine

新型コロナウイルスのパンデミックは多くの人たちに災禍をもたらした。目に見えないウィルスのおかげで、世界が一変し、ニューノーマルなんて言葉がてできた。
しかし、革命的なワクチン登場と人々の慣れ、ゼロリスクへの諦め?で、また『ただのノーマル』に戻ろうとしている今日この頃。
コロナ関連、mRNAワクチンの本を紹介したい。

コロナウイルスのパンデミックに有効な予防方法は伝統的な公衆衛生の手法以外には人類は用意できていなかった。COVID-19に先立って地域的な流行を発生させた『SARSコロナウイルス』や『MARSコロナウイルス』は感染力が弱いことや強毒性のためか流行が終息したこともあり、ワクチン開発までは進まなかった。世界的なパンデミックまでにはならなかった。


ワクチン開発の主役は、トルコ移民の子どもたちだった『ビオンテック』創業者のウール・シャヒンとエズレム・シュレヒ夫妻は、2社目の創薬ベンチャーでガン免疫療法のツールとしてmRNAを用いていた。

研究開発ではよくある話だが、ワクチン用の研究開発を狙っていたわけではなかった。

mRNAは細胞核内のDNAから複製され、細胞質内にあるリボゾームで身体に必要なタンパク質を作るための設計図である。役割を終えたら体内の酵素で即座に分解され、細胞外から入ってくる場合はウイルスの設計図であることが多いので、やはり強力にブロックされる。
その特徴が、ガン細胞のターゲットした攻撃に最適だと思われたからである。
血液中ではすぐに分解されてしまう、この脆い遺伝物質を身体の免疫系に認識させるために、脂質ナノカプセルからRNAを構成する物質のカスタマイズまでありとあらゆる仕組みを整えていたことが、COVID-19に対応させたワクチン開発を間に合わせることに繋がる。
何より彼らが2020年の初頭にはすでにこのウイルスの特徴を見抜き、世界的なパンデミックが来ることを予測して会社の体力を超える資金と人員リソースをウイルス対策に投下していた先見性に驚かされる。

本の中では、規制当局との細かい交渉や、世界にワクチンを届けるためには必要不可欠な世界的制約メーカーであるファイザーとの息詰まる交渉など、ワクチンの科学的な側面だけでなくビジネスや政治的動きまで解説されている。
今後のテーラーメイドガン治療だけでなく、他の感染症や難病もこの高度に民主化されたmRNAが克服してくれる可能性は高い。

ドイツの田舎町にある小さな会社が、、、革命を起こしたのである。

何がいつ、どうやって、光が当たり好転していくか、イノベーションにつながるかは、本当に分からない。さまざまな要素技術やタイミングが見事に重なったことと、彼らの多大なる『地道な努力』のおかげだと思う。
さらには、生産やロジスティクス、ワクチン接種までにかかわる無名の人々も感謝をしなければならないと思う。
こういった功績は、1人か2人の『誰か』で成し遂げられることではない。沢山の人を巻き込み、協力をしてきたからこその成果だと思いたい。


いずれノーベル賞をとるレベルの事だと言われているが、革命的な技術は良い面では、終わらないのでは?と不安も覚える。生物兵器やら正常な作用阻害するワクチンのようなものも作れるということでもあるのだから。


人類がどう『技術』と向き合うか、倫理的な問題は常に付き纏う。

世界はちょっとずつ良くなっていると信じる派だから明るい未来を期待している。


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