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猫になった宇宙人(15)


猫になった宇宙人(15)

母親は少女にどの様に接するべきかを思案していた。

少女は母親の黙り込む姿を見て、複雑な思いであった。

母親が自分の事に関わるのが嫌で黙り込んだのか?
それとも、母親が自分の事で悩み考えているのか?
そのように、思いながら少女は母親の言葉を待っていた。

「ゴメンね雅子。お母さん全然知らなくて。」
と言って少し涙ぐみ、目を伏せた。

(お母さん、分かってくれたんだ!、やっと分かってくれたんだ!)

「虐められるって言ったけど、どの様に虐められてるの?」

(正直に話すべきであろうか?でも全部言うとお母さん心配するどうしよう、分からないよ)

少女は地球人には沈黙している様にしか見えないが、
しかし心の中では、絶叫している。

「雅子、黙っていたら分からないよ」

私はその会話を聞きながら、焼いた鯖を食べていた。
美味しいと思いながら、二人の会話と心の声を聞いていた。

「お母さん、、、、。学校に行くとね、、意地悪な子がいてその子が、私を虐めるの。そうしたら、他の女の子も私を虐めるの。
誰も助けてくれないの。」

やっと、少女は本当の事を、母親に言った。

「どんな風に虐められるの?叩かれたりするの?」

「色んなことされるの。髪の毛を引っ張られたり、教科書を隠されたり、水を掛けられたり、他にもいっぱいあるの。」

少女は、涙ぐんでいた。
今までの事を思い出すかの様に母親に話した。

母親は何も言わずに少女の話を聞いた。
今まで何も知らず、少女を責めてばかりいた、愚かな自分を
反省した。
今まで、母として子供に接していたのだろうか?
母親として子供に接しなかった。何故接しなかったのか?
律子は、自分の今までの生き方を振り返って考えている。

孝太郎に望まれ結婚して、最初の頃は楽しく生活していた。
子供も生まれ、それなりに幸せな家族を形成していた。
しかし、孝太郎は仕事に追われて、律子との会話が無くなり、段々と家族から離れて行った。
そして、愛人を作った。
子供たちもそうだった。
夫婦が仲が悪くなり、その影響で家族の中の会話が無くなった。
そして、朋美は家に帰らなくなった。

地球人にとって、意志の疎通は先ずは会話である。
勿論、会話する事によって誤解も生じる事もあるが、
会話が無かったら、お互いの気持ちも分からない。
「黙っていても分かるはずだ」と言うのは、
地球人には無理である。

余程の人間関係が出来たもの同士なら出来るかもしれないが、
稀なケースである。
親子夫婦間であっても、会話せずに意志の疎通は出来ない。

会話、これは地球では人間しか出来ない。
また人間の特権と言っていいだろう。
これを疎かにして、自分の事を他人が理解してくれていると考えるのは、愚かな事である。


何故なら、地球人は人の心を正確に読む事が出来ないからだ。
地球人が、人の心を読むと言っても、推量の域を出ない。
それにも関わらず、人の心が読めるのというのは慢心と言って良いだろう。

では何故、家族間で会話が無くなったしまったのか、
律子は考えていた。


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