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ある天才科学者の幽霊(最終回)

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私は、今気がついた事を直ぐに館長に報告した。

館長は、私を見つめ、微笑みを浮かべながら、

「よく、この事にこの事に気付きましたね。
自分を反省し見つめた時、生前の自分が見えてきます。
でも、死んでから解っても遅すぎます。
此処にいる人、生前では自分の事が判らず、反省もしない人達が、此処にいるのです。

君は、自分を見つめ、考えを改める事ができましたね。
君はもう一段高い場所に行けるでしょう。
もうすぐ迎えが来ますよ。」

と、優しく言ってくれた。

「高い場所って何ですか?違う処に行くのですか?」

「そうです。此処とは違う場所です。そこでまた修行をして、
高い人間性を得る為の修行です。
これは、次に生まれ出る為の修行でもあるのです。」

私はその言葉に驚きを隠せずにいた。
「また、生まれ出る事ができるのですか?」

「そうですよ。生命は永遠ですから。
でも、勘違いしないで下さい。
貴方が貴方のまま生まれるのでは無いのです。
貴方の魂が、宇宙生命体に溶け込み、貴方と同じ思想を持った魂が、次に生まれて来るのです。
故に、此処で修行をして次に生まれて来る時は、高い人間性を持った人間となって生まれるのです

信じ難い事ですが、その様に想ってください。

ただ、残念な事に此処で高い修行を積んだ魂でも、
下界に降りて行くと、
下界の汚れに染められ低い思想に堕ちていく人は大勢いますが。

それに、言い忘れましたが、次に生まれる場所は、
貴方のいた地球だとは限りません。
もっと違う星かも知れません。」

「違う星って何処ですか?」
と、私の驚きは隠せ無い。

「貴方も科学者であったなら、地球以外の生命体の存在は知っていたでしょ。
此処の場所は、地球人が亡くなった時に来る場所です。
此処で修行を積み、そして宇宙生命体の中に溶け込んで行くのです。
簡単に言えば、雨粒が地上に降りて来る時は、一粒一粒ですが、
地面に堕ちた時は、ひとかたまりの水になるでしょ。
そしてそれが、大海に流れこむ。
それと同じです。
今は、貴方の魂だけに見えますが、宇宙生命体に溶け込めば、
それは一つの生命体です。

そして次に生まれる時は、また一粒の生命体として生まれていくのです。

その様に想ってください。

その様に考えるならば、貴方の生命も、他人の生命も
宇宙生命体から出てきた物なのです。

人種差別や民族の違いで争う事など愚かな事です。
みんな、宇宙生命体の中に存在していたのだから。

全ての人は、平等です。
差別がある事などおかしな話しでしょう。」

「なるほど、本当にそうですね。
でも、私は以前も生死を繰り返していたのですね。
何故、今頃気がつくのですか?」

「確かに、生死は何度も繰り返してきました。
人間以外の動物だった時もあります。
動物では無く植物の時も、単細胞の時もあります。
また、生き物以外、例えば石だったり、鉄みたいな鉱物に生まれる時もあります。
宇宙生命体です。宇宙にある物全てになる可能性はあります。

人間に生まれる事の難しさは、本当に測り知れない!
この事に気がついている人は、ほとんどいないでしょう。

人間に生まれてきて当然と想っている人は、考え直すべきです。

人間には、そう簡単には生まれる事は出来ない。
次に生まれて来る時は、人間でない確率の方が遥かに高いと、
自覚するならば、人間に生まれてきた時は、どの様に生きるべきかを解っていないと、また同じ過ちを繰り返します。

しかし、人間に生まれてきてしまうと、此処で悟った事は忘れてしまう。
悲しい事ですが、ほとんどの人違が同じ過ちを繰り返す。

貴方もそうだった筈です。」

「そうですか。私も同じ過ちを繰り返している人間ですね。
だから、また此処に来て修行しているのですね。
次に生まれたら、忘れずにいたいです」

「そうですね。私も忘れずにいたいです。
そして、少しづつでも階段を上がる様に上の生き方をしたいですね。
私も修行中です。お互いに頑張りましょう。」

「ところで、石川はの事は解りましたか?」

「彼は此処の場所よりも遥に下の所です。
彼は殺人を起こしたので、仕方ないですね。」

と、館長にしては冷たい言い方であった。

そう、人の命も、自分の命も、同じ宇宙生命体の中から出てきたのだ。
それを壊す様な事をしたら報いを受けるには当然であろう。
自殺などはもってのほかだ。

稀有な人間に生まれながら、自ら命を絶つのは、罪が重い。

私は此処での修行を積み、また新たな生命で何処かの星に生まれていく。

今度こそ、ただしい生き方をしたい。

正しい生き方とは何か?!

一人一人の考え方の違いもあるでしょう。

その事については、私が語るのは僭越な気がします。

お一人お一人の、思想、哲学に委ねる事に致します。

この小説はここまでと致します。

でも、下界の裕美は、まだ納得はしてはいないでしょう。
未解決の部分も多々あります。
それは、石川の魂に委ねる事にします。
次の小説は、「ある天才外科医の幽霊」でお話を続けて行きたいと想っています。

ご精読有難うございました。

            
          完

追伸
こんな霊界が本当に有るかどうかは、知りませんが、
信じるか信じないかは貴方次第です。

でも、死んだら嫌でも解りますね。

この小説は、ある科学者の憂鬱 と (続)三つ子の魂百までも
の後続の小説です。
最後の「ある天才外科医の幽霊」で全て完結するのですが、これを読んだからと言って、何も得るものはないでしょう。
どうでもいい話しの様に感じます。
でも、少しでも微笑んでくれたら、作者としては、大満足です。

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