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猫になった宇宙人(14)


猫になった宇宙人(14)

少女が母親と食事をするのは、久しぶりだった。
私も初めてである。
いつも、少女は朝も夜も一人で食事をしている。
話す相手のいない食事は、辛いものだと少女は思っている。

この食事については、私には分からない。
地球に来てから初めて食事を経験したが、
猫は普通1匹で食べると思う。
まだ他の猫とお付き合いした事が無いので、
正直なところは、わからない。

朝食はお店の残り物だった。
普段、少女はパンを食べている。
今日は、ご飯の為おかずがある。
店の残り物とは言え、豪華であった。
卵焼き、魚の焼いたの、煮物、味噌汁、etc。

私には魚をあてがえてくれた。
それと定番の、ねこまんま。

母親が良い人に思えた。
地球人の様に、私も物に釣られる様になったのか、と思うと心が寒くなった。



少女の態度は嫌がって見せてはいるが、嬉しいと心で叫んでいる。

母親も少女との食事ができて嬉しく、楽しく感じている。

「雅子、お母さん、これから早く起きるから、朝ご飯一緒に食べようか。夜も、お母さんのお店においで。一緒に食べよう。」

少女は嬉しいさのあまり、心で泣いている。
(お母さんありがとう。その言葉を待っていたの)

「うん。お母さんのお店に行くね」
少女は小さい声で言った。

私は、魚を食べながら、二人の会話と心の声を聞いていた。

ところで、この魚は何て言うの?と母親に聞いてみたが
「にゃーご」としか言えず、結局分からないと思っていた時に

「鯖よ。焼いたの。美味しいでしょ」
と、私の顔を見て言った。
なんで、私の猫語が分かったのだろう?
もしかすると、私の心が読めるのか?

「学校で、他の人に嫌な事されているの?それとも先生にされているの?どうなの。それとも、もっと他のこと?」
と母親は少女に聞いてきた。

少女はうつ向き、黙っている。

いつも母親なら、イラだって少女を問いただすのだが、今日は違った。
優しく少女を包み込む様に、微笑みを浮かべながら少女の
言葉を待っている。
一緒に食事をしたからだろうか?
母親の心がいつもと、まるで違うのだ!

少女は、(本当の事を話したい。でもお母さんに心配を掛ける。
話すことで、学校の教師とも問題が起こるかも知れない。
どうしようか?)
と悩んでいる。

私には少女の心は読めるが、母親に言葉で伝え無いと母親は分からない。その事を伝えようと
少女に向かって、「にゃー、ニャーゴウ、ニャー」
と微妙にアクセントを変えて伝えた。

少女は私の顔を見て、頷いた。
そして、意を決したかの様に、

「お母さん、私、学校で虐められてるの!」と強い言葉で言った

不思議だ!少女も私の心が読めるのだろうか?
それとも、猫語がわかるのか⁉️


母親は、
(やはりそうだったのか!雅子、可哀想。何故、私は今まで
雅子の気持ちも考える事が出来なかったのだろうか?
店の事や、自分の事を考える余り、子供の事は置き去りだった。
特に雅子は体も弱い。孝太郎の子供でも無い。
本当に不憫な子供であるのに、雅子の事は気にも留めなかった。
御免なさいね。雅子、悪いお母さんで。)
と思っているが、
母親は何も言わずに、考え込んでいる。

少女は、(やっぱりお母さんに言ってはいけなかった)
と、落ち込んでいる。

その心の会話を聞くと、地球人って本当に愚かな生物だと思う。
心に思う事が聞く事が出来ないのであれば、

「はっきりと言葉に出して伝えなさい。」
と強く思って発した言葉が

「にゃーんにゃん、ニャゴ。」だった。

少女は私を見て、軽く頷いた。

「トイレはあっちよ」と外に向かって指を指していた。

やはり猫語と私の心は読めないみたいだ。

少女と母親の会話はまだまだ続く。


この小説のテーマにコミニケーションを取る事の大事さがあります。
親子だから何も話さなくても解るはずだ! と思うのは大きな勘違い。
夫婦もそうです。言葉を出さないと解らない。
言葉は人間に与えられた特権と言って良い。
それを使わないのは、愚かな事です。

私の知っている焼き鳥の店主。一人で焼き鳥屋を営業しているのですが、
愛想なしで、私が初めて訪れた時に「いらっしゃいませ」の言葉も
無く。「注文品をこの紙に書いてください」
と、言われました。年齢は三十代だと思います。
なんとも、ぶっきらぼうで、これでよく商売できるな!
と、思っていたのですが、焼き鳥は旨い。

でも、二度目からは話す事が出来ました。
話し出すとそんなに愛想なしでは無く、良く喋ってくれます。
店主は、独身で彼女無しでした。

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