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金子玲介「死んだ山田と教室」、来年の本屋大賞に選ばれるといいね。

ほぼ6年ぶりに、徳間書店以外の本を読めるようになった(徳間書店在籍中は、月10冊くらい徳間書店の本を読む必要が仕事上あった)。金子玲介「死んだ山田と教室」(講談社)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0D31KP4V2/
 夏休みが終わる直前、山田が死んだ。飲酒運転の車に轢かれたらしい。山田は勉強が出来て、面白くて、誰にでも優しい、穂木高校二年E組の人気者だった。二学期初日の教室。悲しみに沈むクラスを元気づけようと、担任の花浦が席替えを提案したタイミングで、教室のスピーカーから山田の声が聞こえてきた。教室は騒然となった。山田の魂はどうやらスピーカーに憑依してしまったらしい。〈俺、二年E組が大好きなんで〉。声だけになった山田と、二Eの仲間たちの不思議な日々がはじまった(ここまで公式解説)。
 この本は本の雑誌社の方が「読んで泣いた」とSNS投稿に書いてあったので、読み始めた。この世に未練を残して成仏できない青春幽霊譚である。死んだ山田と残された2Eクラスメイトのスピリチュアルな交流。男子校だからの他愛ないやりとり(でも穂木高校は県下有数の進学校)。その友情に冒頭で泣いた。しかしそれにしても途中で『いつまで続くんだ、この話し』という印象になってきた。クラスメイトから好かれていたはずの山田が、物語の進行と共に都合の悪い話しがいっぱい出てくる。そのことで山田から距離を置いた人も出てくる。また山田の死後の時間の経過と共に、だんだんみんな疎遠になってくる。まあ世の中そんなものだ。葬式の時は故人を悼んでも、命日の日には、さらにその翌年には綺麗さっぱり忘れている。そんな中で一人だけ山田を慕い続ける和久津。再会するために穂木高校の教員になって戻ってくる。しかしもう2Eのクラスメイトは、いくら呼んでも集まらない。何事もどこかでケジメをつけなければならない。(死んではいるのだが)死ぬに死ねない山田の煩悶と、彼との友情に固執する和久津の壮絶な大団円。生きることも大変だが、死ぬことももっと大変だ。青春小説でありながら、生者と死者の関係のあり方をリアルかつシビアに描いている。来年の本屋大賞に選ばれるといいね。

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