episode.2前編 親友の元彼が彼氏になった時の話
高校2年生の冬、親友の元カレが私の彼氏になった。
同じクラスで親友のミナミは、高校に入るまで恋愛経験が無く、私の色恋話をキラキラした目をしながらよく聞いてくれていた。
「それで? そしたらどうなったの?」
といつも楽しそうに聞いてくれるので、私も興が乗ってペラペラと恋愛経験を話していた。
彼女は目鼻立ちがはっきりしていてとても可愛らしく、ギャグセンスも抜群だったので、毎日一緒にいるのが楽しくてしかたなかった。
私はミナミが大好きだった。
しかし、なぜかモテない。理由は恐らく、生粋のおちゃらけキャラだったからだろう。彼女は率先してクラスの笑いを取りに行くタイプだった。
彼女の理想の相手はインテリ系のイケメン細マッチョだそうで、同じ高校で探すのは難しそうだねなんて笑って話したこともあった。
高校1年生の夏。突然ミナミから「彼氏ができた」と報告があった。そして、さっそく放課後に紹介させてほしいと言われた。
もちろん即OKをしたのだが、その時期は高校に入学してから初めての文化祭準備の期間で、お互いゆっくり話す時間もなく、初彼氏の詳細は聞けずにいた。
なんの前触れもなく彼氏できました報告を受けたせいで、だいぶ衝撃が大きかったが「一体どんな野郎が可愛いミナミの心を射止めたのだ!」と意気込んで放課後を迎えたところ、なんてことはない、他校のスラッとしたイケメン細マッチョ君だった。
同じ高校にはいなくても、他校にならいる可能性あるわな。
「ども。マサハルです」
そう言ってマサハル君は爽やかな笑顔で挨拶してくれた。
おいおいおい、ミナミちゃんよ、一体どうやってこんな爽やかイケメンをとっ捕まえたんだ……と横目でミナミを見てみると、ものすごく緊張した様子で顔を赤くしていた。
(やだー照れてる可愛いー)
なんて呑気に考えていたら、
「ミナミも、会うのは初めましてだね」
とマサハル君は言った。
(なんだってー! 今、この瞬間が初めましてなの!? 待ってどゆこと!)
と内心てんやわんやしていた私を尻目に、マサハル君とミナミはお互い照れた様子で微笑み合っていた。何この可愛いカップル。
こやつ、初めて会うのに一人で行く勇気がないから私を使ったな。全然いいのだけど、この空気をあまり邪魔したくない。そう思い、後は若いお二人で〜という調子でそそくさとその場を後にした。
突然二人きりにされて絶望したようなミナミの可愛い顔を私は一生忘れない。
その後、メールで「明日、詳しく聞かせてもらおうか」とだけ送り、ワクワクしながら家路についたのだった。
翌日、事情を聞いた。彼女の話を要約すると「地元の友人の紹介でメールのやり取りを始めた。気があったのでメールは続き、電話も何度かするうちにどんどん惹かれ、相手から告白をされ付き合うことに。会うのは昨日が初めてで、不安だからやえについてきてもらった」ということだった。
大方わかってはいたが、頬を染めもじもじした様子で打ち明けるミナミは本当に心から可愛いと感じた。おちゃらけキャラが見せる乙女な一面というのは、なかなかに破壊力がある。
高校2年生になる頃には、あんなに初々しかったミナミもマサハル君との関係に慣れきっていた。
初体験も済ませたと打ち明けられた時には、なぜか娘を嫁に出したような喪失感を味わったものだ。
同じスーパーでアルバイトを始めたので、放課後に会うこと多く、マサハル君の家にも頻繁に遊びに行っていたらしい。
初めての彼氏と初めてづくしの恋人体験。彼女にはものすごく刺激的なようだった。
ところが、夏になると彼女の口から衝撃の言葉が飛び出した。
「他に好きな人が出来ちゃった」
実はマサハル君と一緒のアルバイト先であるスーパーに、マサハル君を上回る男性が現れたというのだ。彼はかなり年上だが、正社員で収入もあり、車もあった。
余裕のある年上男性に惹かれるというのは、女子高生にとっては逃れられない運命のようなものだ。そんな男性が近い距離にいて優しくしてくれれば、思春期の女子なんて簡単になびいてしまう。
それに、彼はイケメン細マッチョだという。見た目の条件をクリアし、経済的にも品格的にも圧倒的だった。
そして、正社員さんに軍配が上がった。ミナミはマサハル君にお別れを告げた。
数日後、私の携帯電話に見知らぬ番号から着信があった。
この頃の私といえば、高校で委員会の委員長をしたり、バンド活動やアルバイトで忙しく、さらには友人達と遊び、自分の趣味にも没頭。とにかく青春を謳歌していた。
あちこちでコミュニティの輪を広げていたおかげか、知らない番号から電話がかかってくるというのも頻繁にあったので、何の気なしに通話ボタンを押した。
「あ、久しぶり、マサハルだけど……」
なんと、着信の相手は
数日前にミナミにフラれたばかりのマサハル君だった。
つづく
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