最愛のあなた。近くて、遠い。
最愛のあなた。
私の命を生み出したあなた。
私を育て、生かしたあなた。
私はまだあなたのように、命を生み、育てることはしていない。
私がいつまでも育てられるところにいるのが、いけないのですね。
それが、あなたの自由を奪っていることにもなっているのだと思います。
確かに私はあなたの宝ものかもしれない。
その宝ものには足があります。
意志もあります。
夢もあります。
恋人もいます。
墓にも入れられないし、あの世にも持って行けません。
手中に置いておけない宝ものだからこそ。
どこか知らない人と新しい世界に行ってしまう宝ものだからこそ。
あなたが生み、育てた宝ものだからこそ。
自分の一部だという感覚はどうしようもないものなのですね。
あなたの宝ものは、あなたの元を離れます。
そうして私にも、宝ものをください。
私にも、あなたと同じ、子どもを産み育てる経験をください。
私もなってみたいのです。
あなたのように、お母さんに。
あなたはどうか、あなたが選んだ素敵な夫と穏やかに過ごして。
同じように私も、素敵な夫が欲しいのです。
あの人は、あなたたちがいなくなってしまった後、
あなたの宝ものを愛し、守ってくれる人になります。
どうか、あの人のことを受け入れてください。
最愛のあなた。
近くて、
ものすごく遠い。
大丈夫。
大したことじゃない。
あなたの宝ものが、幸せになりに行くだけです。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?